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氷帝

城の門はやはり氷で造られていて、そこには細かい装飾が施されていた。ただ、氷なのでひんやりと冷たい空気が漂っている。



この門、開けられるのか?掴んだらそこから凍って折れてしまいそうだな……



俺がそんな事を考えながら門を見ていた時



「入るぞー」



グラドが門に手のひらを当てた瞬間、氷の門に大きな穴が開いた。人一人が余裕で通れる大きさに開いた門を、グラドは何の躊躇いもなく潜っていった。



「…………え、あれ、いいのか?」

「良くはないですね。グラド様はこういう事をなさるので、氷帝様は激怒されるのです」



サリヴァンは、無表情だった顔を少しだけ歪ませ大きな溜息をついた。



「おい、皆早く入れ。この門自動修復の魔法がかかってるから、すぐに閉じてしまうぞ」



中々来ない俺たちを心配したのか、既に門を潜っていたグラドが顔を出した。



「あ、あぁ……」

「グラド様、あれほど問題は起こさないで下さいと、城を出る前に言いましたのに。貴方という人は」

「な、なんだ!?門は自動的に戻るんだし、いいだろ!?」



低いサリヴァンの声に慌てるグラドは、もう二度とやらないと約束をしてサリヴァンに頭を下げていた。全員が城の内部に入ると、奥から何かがやって来るのが見えた。



「何だ?飛んでる?」



それは此方に飛んで向かって来ているようで、フヨフヨと上下に揺れていた。



「………」



俺たちの前までやって来たそれは、身体の向こうが透けて見えていて、全体的に水のような透明感だった。その飛んでいる者は、俺たちの顔を順に見た後声を出した。



「お客様なの。魔王軍第一席と第二席なの。ルークに伝えなきゃなの」



独り言のように喋った後、今度は先程とは比べ物にならない速度で飛んできた道を引き返していった。



「……さっきのは?」



俺が隣にいたサミエルに耳打ちすると、直ぐに返事が返ってきた。



「先程のは精霊『ウンディーネ』。氷帝様の守護精霊であり、補佐官です」

「精霊の補佐官か。それで、さっき言ってたルークって誰だ?」

「それは氷帝様の愛称です。氷帝様は、ルクシア・エル・ロード様と言うお名前ですので」



サミエルと話していると、突然グラドに向かって何かが飛んできた。それに反応したのは、此処に居る全員だ。俺はその通り過ぎた物体を目で捉える。

それは、氷の刃だった。


グラド目掛け飛んでいく氷の刃に、サリヴァンは投げナイフを準備していたがグラドは右手でサリヴァンに静止の合図を出していた。そして当たれば即死間違いなしの氷の刃に、空いていた左手の手のひらをかざした。すると、一瞬のうちに氷の刃は消滅した。



消滅した、と言うよりは溶けたと言ったほうがいいだろう。グラドは左手で、先程門を壊した時のように氷を一瞬で溶かしたのだ。俺がその事に感心していると、グラドは氷の刃が飛んできた方へと目を向けた。



「とんだご挨拶だな。ルクシア」

「ふん。貴様に挨拶など不要。私の美しい城を壊す蛮族は今すぐ帰れ」



グラドの視線の先には、氷の柱にもたれ掛かっている一人の男の姿があった。薄い青色の長い髪を左側に一本で纏め、ひし形の赤いピアスをつけている男は、ゆっくりと此方にやって来る。服装は紫色のロングコートに白いブラウス、そして赤いヒールを履きこなしていた。



「その下品な炎を早くしまえ」

「その下品な炎に溶ける脆い氷を作ってんのは、何処のドイツだー?」

「……今の台詞、聞き捨てならないな」

「お?何だ、ヤル気か?」



何やら既に一触即発の展開になってきたようだったので、俺は取り敢えずルクシアに声をかけた。



「ルクシア!!……えっと、久しぶり?だな」



声をかけた瞬間、ルクシアは俺に向き直り笑顔で返してきた。



「アヴィー、復活おめでとう。お前が居ない間は脳筋馬鹿蛮族しか居なくて退屈だった」



グラドと睨み合っていたルクシアは、俺の前に足を運ぶと俺の手の甲にキスをした。



「…………え!?えっ!?」

「何だ?挨拶くらいで声を上げるなんてらしくないな」



驚いた俺を他所に、ルクシアはサミエルとミリアを見ていた。



「それにしても、アヴィーの部下は美しいな。コレクションに加えたいくらいだ」

「ルクシア様。申し訳ありませんがそれにはお答え出来かねます」



やんわりと断りをいれるサミエルの言葉に、ミリアが珍しく頷いていた。それは残念だ。とルクシアが言うと、先程の精霊がルクシアを後ろから引っ張っていた。



「ルーク。ティアも綺麗って言った」

「あぁ、お前は綺麗だ。だから補佐官にしているのではないか」

「……褒めるの、ティアだけでいい」

「ふむ、私は血液が欲しかっただけなのだが……」



ルクシアが話している間、サミエルは俺の手の甲をとり入念に拭いていた。



「……おい、もういい」

「いけません」

「………」



真剣な表情のサミエルは普段の温厚そうな笑みとは違い、俺が怖いと思うほどの形相だ。その表情が怖過ぎるので、俺は見なかった事にしようと心に言い聞かせ、ルクシアに話をふる。



「まぁ、今日のところは俺に免じて喧嘩は無しにしよう。な?」

「……仕方が無いな。友の頼みは無下には出来ん」

「俺は別に喧嘩する気はなかったぞ?」



白々しくも言うグラドに、俺は思わずグラドの額をぺちりと叩いた。



「な、何で俺のでこを叩くんだ!?」



額を抑えながら言うグラドに、俺とルクシアは溜息をついた



「もういい、この馬鹿は放って置くとして。アヴィー、何か用があるのだろう?奥の応接室で話そう」

「おい!!俺を無視するな!!」

「分かった。皆行くぞ」



先に歩き出したルクシアの後を、俺とサミエル、ミリアが続いていくと、グラドが後ろから『アヴァニールも俺にもっと優しくしろー!!』と叫んだ声だけが響いていた。

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