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少年

新章突入しました。



「………………」




少年が初めて人を殺したのは15の時だった。

少年の両親は名門貴族だったが、それは決して許されない恋だった。そして、産み落とされた少年は厄介払いされるかのように国に売り飛ばされた。




『ごめんなさい。貴方が嫌いだからではないの……本当に、ごめんなさい』

『………愛している。いつか必ず、迎えに来るからな』




売り飛ばされたのは、少年がまだ10の時だった。

少年は、その時の両親の顔と後ろ姿が目に焼き付いた。それからは、地獄のような日々が始まった。主は次の日には変わるのは当たり前で、人間として扱われることなどなかった。数時間で売られる事もあれば、長い期間留まる事もあった。



日々変わる主人には長時間労働をさせられる時もあれば、主のストレス発散の道具として暴行も受けた。実験の媒体として扱われた事もある。そしてある時には、人形の様に着飾られ汚い人間共の相手をさせられた時もあった。そんな生活に、少年の心は段々と崩壊していった。壊れかけの心に、少年は自問自答を繰り返した。





何故自分は、売られてしまったのかと





少年は悩んで、悩んで、悩んで、悩みつくし、ある日主人に奴隷市場に連れて行かれる途中抜け出して、自身の両親に会いに行った。少年は、きっと両親に会えばこの問いに答えが出ると思ったのだ。だが、それは少年をさらに苦しめる事となった。



必死に両親を探し出し、屋敷の前についた少年は驚愕した。両親には、既に子供が居た。大切に扱われる子供と、それを愛しそうに眺める両親に少年は絶望した。



何故、自分は愛されず、あの子供は愛されているのか。何故、自分だけがこんな事になっているのか。何故、あいつらだけが幸せそうに過ごしているのか。




「………うそつき」




少年はこの時、初めて涙を流した。あの辛い地獄の日々の中ですら泣いたことがなかったというのに、何故か幸せそうな両親を見たら、涙が出たのだ。

少年は気付いてしまった。





自分が、本当は誰にも愛されていなかった事に





少年は両親から目を逸らし元の生活に戻った。常に死と隣り合わせの地獄の生活は、いつしか少年を死神へと変化させていった。






許さない、あいつらも、こいつらも、全部……ぶち壊してやる










そして少年は、15の時人を殺めた。













自分の、両親を。



♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


シーザ帝国の訓練場には、多くの人々が朝早くから身体を動かしに来ていた。その大半は大柄な男ばかりだったがその中に一人、人形を相手に練習する少女が居た。少女はフリルの沢山ついた可愛らしい服を着てナイフを一本手に持っていた。




「………」

「……おーい、そこの可愛いお嬢さん。俺たちと遊ばねぇ?」

「…………」

「おい、シカトー?おいって」




男が少女の手首を掴もうと手を伸ばしたがその手は空を切る。驚いた男たちはキョロキョロと辺りを見回した。




「……馬鹿」

「……ドルマ。そこまで」




少女の後ろから優しい声が聞こえ振り向くと、そこには師であり親である女性、ゼノン・ネフェラルが少女に向けて手招きをしていた。




「……ゼノ」




少女は一言声を発すると、ゼノンの元へとかけていった。




「ゼノ……何で、居るの?」

「仕事が一段落着いたから、ドルマの様子を見ようと思ってね。それよりドルマ、素人相手に練習していいとは言ってないぞ?」




ゼノンはドルマに向かって言うと、ドルマは最初俯いたがもう一度ゼノンを見た。




「……だって」

「ドルマ、聞き分けのない子はまたお仕置きだぞ」




ドルマが言い返そうとした時、ゼノンがドルマの頭を撫でる。




「--ッ!!……ッ」




すると、ドルマは勢いよく首を横に振った。それを見たゼノンは、よしよし良い子だと言いながら何度も撫でるが、撫でられているドルマの顔は真っ青だった。




「あ、居たぞ!!」




ドルマは真っ青な顔を、声のした方へと向ける。そこには先程ドルマに話しかけてきた男たちが此方を見て呆然としていた。その男たちの様子を見て、ドルマはとっさにゼノンの後ろへと隠れ、ゼノンの腕辺りからこっそりと顔だけをのぞかせた。




「ゼ、ゼノン隊長じゃあないですか……も、もしかしてその子は、隊長の部隊所属の子で?」

「あぁ、そうだ。しかしお前たち、私のおかげで命拾いしたな。あともうちょっとで死ぬ所だったぞ?」

「は、はは……御冗談を……」




そう言った男たちを見てゼノンはニヤリと笑い、自身の首筋をトントンと叩いて見せた。そのゼノンの行動と同じように、男たちは自分たちの首筋を触った。すると少しだけ痛みを感じ、手を引いて首筋に触れていた手を見ると、そこには血がついていた。




「な!!!い、いつの間に!!!」

「この子は私のお気に入りの子でね。中々筋の良い子なんだ。……さて、ドルマ。行くぞ」

「………」




先に歩き出したゼノンの後ろを、ドルマが小走りに追いかけて行く姿を唖然とした顔で眺めていた男たちは、ふと我に返った。




「も、もしかして、さっきの……『夢狩』じゃ………」

「え、でも確か、『夢狩』は凄腕の暗殺者で……何より、男だろ?」

「さぁ……『夢狩』は噂でしか聞いた事ないしな……」

「じゃあその噂がガセで、実は女だった……って事なんじゃねーの?」

「それにしたってあんな少女なはずないだろ……」

「それもそうだな」





そう男たちは笑い飛ばしながら、また鍛錬へと戻っていった。



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