依頼
「只今戻りました……グラド様、何をなさっているのです?」
「んー?弟分を可愛がってるだけだぞー!!」
「……グラド様、そろそろその手を退けないとサミエル様の鞭が飛んできますよ」
サリヴァンのその台詞に、俺はサミエルを見ると笑顔でグラドを見つめていた。一件ただの笑顔に見えるが、いつも見ていた俺にはこれがかなり怒っている顔だという事が直ぐに分かった。だがいつもならとっくに切れているであろうサミエルが、鞭を片手にグッと堪えている。
やっぱ、相手が魔王だと強く言えないか……しかも俺の親友だしなー……まぁ俺は初対面も同然なんだけど
俺はそう思いながら、グラドの手をやんわりと払いのけた。
「で?その追っ払って欲しい魔獣は、どんな奴なんだ?」
「あぁ、それはな。マンティコアだ」
グラドは俺から手を放すと、先程座っていた椅子に腰を掛けながら言った。俺はその聞きなれない名前に、思わずなに?と聴き返した。
「マンティコア。身体と顔が獅子で、背中には蝙蝠の羽。尻尾はサソリの生き物だ。魔獣の位付けするなら上の下辺りだな」
「……それって大丈夫なのか?」
「ん?俺には被害がないから安心しろ!!」
「いやそうじゃない。俺が勝てるものなのか聞いてるんだ」
そう言った俺に対して、グラドはあっさりと大丈夫だ!!と言ってのける。
「俺たちは魔王。この世界で勝てる者なんて早々居ないぞ?……まぁ、タイミングとモチベーションにもよるが……大丈夫だ!!それに、魔獣はまだ子どもだからな!!」
はっはっと笑うグラドは、今度はサリヴァンに紅茶を淹れさせていた。
「じゃあグラド……さんが、行けばいいんじゃないか?」
「さんなんて他人行儀な言い方。俺とお前は兄弟だろ!?兄貴って呼んでくれ!!」
「あ、うん。じゃあグラドって呼ぶわ」
俺のその返答に、グラドは不満そうな顔をしたが俺はグラドに続きを促す。
「アヴァニールはまだこっちの世界に戻ってきてあんまり経ってないだろ?だから、少しでも強いのと戦えば戦い方もそのうち思い出すし、もしかしたら記憶も蘇るかもしれないからな!!」
その台詞を聞くまで、俺はグラドの事をアホな熱血漢男だと思っていたので、もっともらしいその台詞に感動したのだが隣に立っていたサリヴァンが口を出す。
「この間はご自分で動くのが面倒だと仰ってましたのに」
「おい!!サリヴァン!!!もっと気を遣え!!俺に!!」
サリヴァンのその言葉に少し怒って見せるグラドを見て、俺は改めかけた意識を撤回した。
俺の感動した心を返せ
「……まぁいい。取り敢えず、そのマンティコアを倒せばいいんだな?」
「あぁ、任せたぞ。アヴァニール」
「その代わり、資金の援助じゃなくて人員を少し寄越してくれ。これから俺の城を建築し直すのに、足りないからな」
城を建てるにしても、物資を集めるのにも結局は人員不足を何とかしなければならない。現在、ロウと各小隊長達が人員不足解消のために色々と動いてはくれているようだが、それでも足りそうにないので一時的にでもこうして借りる他ない。
「いいな?後からこの話を無しにするのだけはやめてくれよ?そしたらただじゃおかないぞ」
俺はそう言ってグラドにすごんで見せたが、グラドは分かった!!と笑いながら言うだけだった。




