獄炎の大地
「さて、今日は魔王軍第二席、グラド・ブレイズ・ヘイリオンに会いに行くわけだが……ミリア、土産は持ったか?」
「はいっ!!此処に!!」
「よし、じゃあ次にロウ。お前さっきから震えてるが、大丈夫か?無理して来なくていいんだぞ?」
「お、俺は……主について行くだけだから……ですから」
「そうか……最後にサミエル。……特に言う事ないな」
「そんな!!♡」
俺たちは今、前回ミリアの研究所を見るために来た森の中の整地された所に居る。
その理由は簡単だ。部屋の中では移動が出来ないからという事と、大人数……まぁ5人しかいないが、ミリアに聞くとやはり広い場所でやった方がいいとの事だったので、森の中で最終確認をしているのだ。
そしてこれから魔王軍第二席の居る城へと向かう訳だが、俺的には挨拶回りとお城チェック、……主に親睦を深めるのが目的だ。そして、俺たちは今忘れてはならない人物を待っている。俺がまだかと声を出す前に、目の前に突然人影が現れた。
「うぉ!!……ラオル、あんまり驚かせるな……」
「……」
ラオルは相変わらず無言だが、昨日は薄暗い所で顔を見たので分からなかった事だが、ラオルはかなり顔に出るタイプの様で眉とかが感情に合わせて結構動く。今は眉を八の字にしておろおろとしているので、焦り……と取っていいだろう。
「そんな顔するな。責めたんじゃない。……さて、気を取り直して行くとするか」
俺は城をイメージした。実は昨日、ラオルが第二席の魔王の所に伝達に言ってから教わったのだが、精神感応を使って相手の記憶やらなにやらが共有できるらしい。勿論、相手が見せたいと思うものに限定されるが。
そんな便利な事が出来るなら最初から教えてもらいたかったが、サミエルはこの事を忘れていたらしく俺が話すと悔しがったのち、ラオルに対する苛立ちと嫉妬?が物凄い事になってしまったのだった。
今度からはラオルに教わったことは独学で学んだことにしよう……俺のせいであの二人、マジで殺し合いをし兼ねない……特にサミエルは
そんな雑念だらけの中、目の奥に見えてきた城を見てから俺は魔法を唱えた。
「移動」
すると、一瞬にして城の門前へと移動していた。だが、重大な事に気が付いたのは移動した後だった。
「か、火山地域!?」
俺が声を上げた瞬間、火山と思わしき山から赤いものが噴き出した。灼熱の色をした大地には、草木一本生えていない。それどころか生物すら見る事ができない。俺が乾ききった大地を踏むだけで砂煙を上がった。
「此処が、第二席の居る所……」
「はい。しかし、グラド様にお会いするのは久方ぶりです」
俺の隣で喋るサミエルは、少し遠くにある城を眺めながら言う。すると今度はミリアが口を出した。
「グラド様は暑苦しい御方なので……私は苦手です……」
「そうか……ミリア。顔真っ赤だけど大丈夫か?暑いか?」
ミリアを見ると、その顔は火照りうっすらと汗が滲んでいた。
「このくらいならまだ大丈夫です……ですが、一応魔法をかけておきます……」
そう言いながら魔法を唱え始めたミリアから目を離し、今度はサミエルとラオルを見た。二人はいたって普通の表情をしている。
あの二人は大丈夫なのか……あ、ロウは?
そう思って後ろを振り返ると、ロウが地面に倒れていたので俺は急いでミリアに魔法をかけさせた。
「おい、大丈夫か?」
「……あるじ、ちょっと、あたまが……くらくらして、ます……」
うっすらと目を開けたロウがそう言ってまた目を閉じる。この暑さなのだから倒れても仕方がない。それは理屈として分かる。だが、ロウよりも確実に厚着をしているサミエルとラオルが全く暑そうに見えないのが不思議だった。
俺も暑……くないな……?
そう思いながら自身の身体に手を当ててみるが、熱は感覚として伝わってくるが、暑さとして認識されてないせいか、汗一つかいていない。
「魔族って熱に強いのか?」
「そうですね。基本的に魔族は暖かい、寒いなどの感知器官にある程度の耐性があります。更に、我々上位魔族になるとその感知器官を意思でコントロールでき、ほとんど無効になります。アヴァニール様は無意識のうちにやっておられますので、分からなかったのではないでしょうか?」
流石はアヴァニール様と褒め称えるサミエルに、満更でもない俺はそうか?と照れ隠しに答えた。
「と、こんなところで喋ってる場合じゃなかった。行くぞ皆」
そう言って俺は先頭を歩き出した。
城の前までやって来ると、先程の場所から見たのでは迫力に差があった。目の前に立つでかい城は、下の方は岩盤をそのまま削り出したかのような形をしており、上に向かうにつれその岩が段々と煉瓦状になっている。
やはり普通の岩では溶けてしまうのだろうと思っていると、目の前にある鉄の塊のような大きな扉が開き、中から一人の人物が出てきた。
その人物はロウと同じ狼人種で、髪と瞳が黒い。だが、その瞳は死んだ魚のような目で、少しだけ目つきが悪く見える。格好は至ってシンプルで、ノースリーブにゆったりとした白い長めのズボンといった格好だ。その人物が俺たちを見つめ動かないでいると、後ろに居たラオルが俺よりも前に出た。何が始まるのかと思って見ていると、ラオルがお辞儀をした。すると目の前に居る人物もお辞儀をした。
「皆様……ようこそおいで下さいました」
顔に合っている低い声音の狼人種の男は、話を続ける。
「私は、グラド様に仕えております側近のサリヴァンと申します。……では、此方へどうぞお上がりください」
そう言って、サリヴァンと名乗った男は俺たちに背を向けて城の中へと入っていく。俺たちもその後に続いて城の中へと足を踏み入れた。
城の中に入ってみると、中は外観とは違って厳つくて恐ろしい感じはなかった。寧ろ綺麗過ぎる程だ。通路の中心には赤い絨毯が敷かれ、左右には何か高そうな壺や珍しい色の鉱石などが置いてある。そんな中を死んだような瞳で真っ直ぐ歩くサリヴァンを見ながら、丁度隣に居たミリアに彼について尋ねた。
「……なぁミリア。サリヴァンはいつもああなのか?」
「はい。基本あの顔ですね。愛想のないお顔をされてますけど、良い御方ですよ。ラオルとも仲が良いみたいですし」
ミリアの説明を聞きながらそうなのか~と頷いていると、突然サリヴァンが足を止め此方を向いた。俺は内心、先程の俺の言葉が耳に入ったか!?と思ったが、サリヴァンの此方がグラド様の玉座の間になります。と言って扉の前に立つ姿を見て、俺は安堵した。
サリヴァンが両手を扉に添えると、重そうな鉄の扉がゴゴゴ……と音を立てて開いていく。
「では、どうぞ中へ。グラド様、魔王第一席、アヴァニール様以下四名様がお見えになりました」
サリヴァンがそう言うのを見ながら、その肩越しに玉座の間の最奥に目をやった。
そこには玉座の肘掛けに頬杖をつき、足首を膝に乗せ、此方を見つめる者の姿があった。
ちょこっと出てきましたねー……やっと……




