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未練を残して死んだら魔王に転生させられました。  作者: 夘月
第一章 魔王と仲間
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お買い物



アリシアは朝からご機嫌斜めの状態で、自室の椅子に座っていた。



理由は至極簡単だ。今朝方いつもの様に外に行こうと準備をしていた時、運悪くパナティールが部屋に来て現在もお説教を受けているせいだ。




「ですから、アリシア様。貴方様には王家の自覚をですな……」

「……もーっ!!分かった!!分かったから!!ていうか部屋に来たってことは、何か報告があったんじゃないのか!?」




お説教に耐えかねてアリシアが声を上げると、パナティールはおぉそうでした。と言って一度咳払いをする。




「ここ最近、魔族や魔王達が活発に動き始めている。と報告を受けましてな。アリシア様にも一応お知らせをと思い来たのです」

「ふーん、魔王がねぇ……城下に住んでいる亜人種は大丈夫なのか?あぁ別に追い出そうなんて思ってないぞ?ただ人間との共存には問題ないのか聞きたいだけだ」

「そうですね今のところ、何の問題も無いようですが……」

「そうか……じゃあ、アマン帝国に行ってくるな」




そう言ってアリシアが立ち上がると、パナティールは分かりました。と一度は頭を下げたが思い直したのか突然頭を上げ、アリシアを呼び止めた。




「お待ちくださいアリシア様!!アマン帝国に行かれるなど」

「仕方ないだろう!俺は今日、向こうの使者から魔具についての研究共同作業があるって言われたから行くんだ!!じゃあな!!」




アリシアは後ろから聞こえるパナティールの声を無視し、急いで城の門まで走り出した。


♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦


「おぉ、これが人間の王国……人間だらけだな!!」

「そうですね。本当、こんなに居ると邪魔でしかないですね」

「おいサミエル。その発言は良くないぞ。第一、お前目立つんだからそういう所気を付けろよ」

「アヴァニール様の言う通り。いくら本当の事でも、今はこの人間達に紛れて物資を調達しなきゃならないんだから」




そんな会話をしつつ今歩いているのは、人間と亜人が共存する王国『アマン帝国』の城下町だ。アマン帝国は学問の都市として有名だ。その理由は、この都市で暮らす人間と亜人のハーフにある。この都市に住む多くの研究者や学徒は、人間と亜人のハーフ『天賦混血人ホルダー』と呼ばれる者達で、研究や開発の能力に長けていて日々魔法の研究や魔法を使った機器などが開発、製造しているらしい(ミリアがそう言っていた)。




そして、何故俺たちがそんな国に来ているのか。




それは俺たちがいない間に、備蓄していた食料品がほぼほぼ無くなっていた事にある。その事についてアルファに話を聞くと、どうやら帰って来たばかりのラオルが相当腹を空かせていたらしく、飯を作ってやった……らしいのだが、ラオルの食欲は並大抵のものではなかったらしい。昔、城に住んでいた時もラオル専用の食糧庫を作っていたのだと、アルファは言っていた。




しかも城に居た時は、食糧庫が二つあったとか……一体あの身体の何処に溜めてんだ




俺が考えていると、右側に居たミリアがお買い物リストのようなものを広げたので、何となくそれを見てみると何やら色々と書き込まれていた。




「そんなに買う物あるのか。……この魔具ってなんだ?」

「あ、これはですね。魔力を持たない人間が、魔法を使うために球体型の魔力備蓄装置を作ったんです。その通称を『魔具』と呼んでいるのです」

「そうなのか」

「はい。この魔具の大きさはまちまちで、大きさによって用途も様々、値段も大きい物の方が高いんです。魔具は、兵士の剣から一般的な家庭の日用品にまで使われています」




その後もミリアの説明は続いたが、ざっくり話すとこういう事になる。




1、魔具は言っていた通り日用品にも使われるので大きさ分けがある。

2、魔具は永久に使える訳ではなく、壊れれば買う必要がある。また、壊れはしなくても内蔵された魔力がなくなれば継ぎ足しの専門店で足さなくてはならない。

3、だが俺たち魔族や、亜人種などは魔力を直にその球体に注ぐ事が出来る。






「……それって、壊れない限りは使い放題、溜め放題って事だよな?」

「そうなりますね。ちなみに此処に亜人が多く住んでいる理由は先ほど言った通り、魔力を継ぎ足し出来る専門店が多いから、と言う理由もあると思います」

「なるほどな。働き口もあるし、人間との共存も可能って事か」




俺とミリアが話していると、何となく視線を感じ取りすれ違う人の顔を見る。すれ違う人全てが、魂が抜けた様なうっとりとした表情をしていたので、俺は左側に立つ人物に注がれていることに気が付いた。多分、すまし顔をしているサミエルを見て骨抜きにされているのだ。




「サミエル、やっぱお前は目立つな……ロウと一緒に置いて来るべきだったか」

「そ、そんなっ!!あのような田舎者と一緒だなんてっ!!どうかお許しをっ!!」




サミエルはそう言いながらもその表情は喜びに満ちていた。その表情に引きながら、俺はサミエルのフードを下に向けて引っ張った。




「お前顔は綺麗なんだから、もうちょっと隠れるようにしろ。じゃないと目立ってしょうがないからな」




そう言って頭をぽんと撫でると、サミエルは少し小さな声で申し訳ありません……と言ってフードを一所懸命に下に引っ張った。その顔が少しだけ赤かった様に見えたのは気のせいだろう。サミエルが目深に被ろうと引っ張るのを見て微笑ましくなったが、それは疑問に掻き消された。サミエルの額に生えている筈の角が、全く見えない。と言うか、角自体が無くなっていた。




「サミエル、お前の角どこいったんだ?それ」

「はい。現在は魔法で消しています。ですが一時的なものですので、王国を出た後には元に戻ります」




サミエルは深く被ったフードを少し上に上げて、俺の目を見て答えた。




「そうか、じゃあ俺もやった方がいいのか?」




俺の今の状態は、かなり格好悪いものだ。頭にある角でローブが浮いた状態なので、正直馬鹿に見えていても仕方ない。だがサミエルは俺に言った。




「いえ、それには及びません。アヴァニール様のローブは特注品ですのでそのままフードを被って頂ければ人間の目には普通の旅人にしか見えませんので」




補足ですが我々にも普通に見えております。と微笑みながら言うサミエルに、俺は安堵した。




「そうか、なら良かった。こんな格好悪いの見せられないからな」

「……格好悪い……アヴァニール様………」

「……サミエル、鼻血」

「はっ!!申し訳ありません!!」




俺はサミエルが何を想像したのかは聞かない事にした。



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