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未練を残して死んだら魔王に転生させられました。  作者: 夘月
第一章 魔王と仲間
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記憶

ちょっとだけ魔王の記憶が……



ロウに道案内をしてもらい、話に聞いた集落にようやく辿り着くと既に何人かが馬車の後ろに着けられた檻の中に入っていた。




「えーと、もう捕まってる?」

『そうですね・でしょうね』




息はぴったりなのに返し方がバラバラなサミエルとミリアの言葉に、俺はやっぱりかぁと思いながら目の前に居る兵士たちに目を向けた。




うーん、此処は穏便に行くか?それとも普通に奪い返していいのか?……分からん




平然とした面持ちで目の前に居る兵たちを見つめていると、何やら兵士たちが慌て始めていた。




「何で慌ててるんだ?」

「アヴァニール様と私達わたくしたちが此処に居ること自体向こうにとっては誤算ですから、対応をどうするか話し合っているのでしょう」

「そうか」




サミエルの説明に納得しながら兵士たちをよくよく見ていると、胸の辺りに何か紋章のようなものが刻み込まれているのが見えた。およそ50メートル離れていてもその紋章が見えるのは、目の周りに魔力が集中するからだとサミエルは言っていた。




あれは……紋章?……あれ?俺、知ってる……










そうだ、昔……あれと同じものを見たんだ









そして、断片的ではあるが記憶が蘇る。




紋章、旗、見覚えのある城……燃える火の中にその紋章が浮かび上がる。燃え落ちる城の中、俺は床に膝をついて男を見つめていた。その男の瞳が静かに俺を見据えている、俺はそれだけで嫌悪と憎しみに心を蝕まれた。目の前に立つ男が、何者なのかも分からないと云うのにだ。






そして、男は俺に向けて手に持っていた剣を振りかざした。






「---ッ!!!」




驚いて目を覆いよろけると、両隣に居たサミエル達がアヴァニール様!!と驚きの声を上げ、手を差し伸べ支える。俺は支えられながら自身の首に手を添えた。そこには生暖かい皮膚の感触がするだけで、他には何もない。だが、今の記憶は今まで見たどの記憶より鮮明に見えた。







自身の首が落とされる、その瞬間を。







だが、不思議と恐怖の念は湧かない。寧ろ激しい怒りと憎悪に満ちていくこの感情に、歯止めが利かなくなるのではと心配になったくらいだ。俺は支えてくれた二人にすまない、ありがとうと声をかけてから手を放してもらう。




「……あいつらは昔、……死ぬ前の俺から城を……全てを、奪った奴らだ」

「アヴァニール様!!記憶がお戻りに!?」




左側に立っていたミリアが驚きの声を上げたが、俺はその後首を振って見せた。




「全部はまだだ……だが、あの紋章……間違いない、俺の城に、来た奴らだ」




その言葉は、自身も驚くほど憎しみの感情が宿っていた。先程まで穏やかだった心の中に突如現れた黒い部分、それはとてつもなく強い感情の塊だった。





憎い、憎い、殺してやる、にくい、殺してやる、全員、ぜんいん、あそこに居る、人間、全員、許さない……一人残らず、殺す、コロス……!!!!





じわじわと侵食するその黒い感情に抗い無理矢理抑え込んでいると、口から自然と言葉が出た。




不可視インビジブル次元ドメイン




すると突然斜め前方に、真っ黒な空間が現れた。初めて見る黒い空間に俺は驚いたが、身体は俺の意思とは別に動き出す。そして、何の躊躇もなくその空間に手を突っ込んだ。




マジ!?え!?嘘だろ!!!ヤバいって!!!!……あれ、なんも、起きない?……てか、なんかあるな。何だこの柄みたいな感触……




すっかり制御が利くようになった身体で、空間の中を探っていると指に触れる物があった。試しにそれを引き抜いてみると、大剣が一本姿を現した。その大剣は先端から柄まで紫がかっていて、禍々しい見た目だった。そして、右側に居たサミエルが大剣を見た途端、両手を顔の前でガッチリと絡ませ目を輝かせた。




「あぁ!!その大剣!!アヴァニール様、やはり持っていて下さったのですね!!!」




ハァハァと息を荒げ恍惚の表情を見せるサミエルに、俺は遠い目をした。




「……ん?何だかその言い方だと、お前がくれた物だったりするのか?コレ」

「はいっ!!アヴァニール様の生誕祭が行われた日に!!」

「……お前、趣味悪くないか?」

「し、趣味が悪い!!?……」




俺が大剣を見ながら言うと、サミエルは膝から崩れ落ちた。




え!?あれ!?何かショック受けてるっぽい!?




俺は、サミエルは基本的に何を言っても大丈夫だと思っていたのだが、顔を手で覆って震えている所を見ると、サミエルを傷つけてしまった様だった。




「お、おい、サミエル。……悪かった、趣味悪いなんて言って……だからそんなに落ち込むなよ」




俺はそう言って身を低くすると、顔を覆っていた手を退かしてサミエルの顔を見た。だが、そのサミエルの表情は俺の予想と遥かに食い違っていた。





サミエルの顔には悲しそうな表情が一切なく、ただこれでもかと言うほどに嬉しそうな顔をしていた。






「……泣いて、ない」

「わ、我が家の家宝の一つであった大剣……それを、趣味が悪いなど……♡あぁ、アヴァニール様……その冷たい眼差しで、もっとわたくしを、虫けらの様になじって下さい!!!」

「……うん、そうか。本当、一瞬本気で心配して損した」




俺が立ち上がってからサミエルに言うと、お許しくださいアヴァニール様!!と嬉しそうに息を荒げながら言った。一部始終を左側から見ていたミリアからは、小さな声ではあったがキモ……と言う率直な意見が聞こえた。その台詞に俺も同意見だと思っていると、すっかりその存在を忘れていた兵士達の一人が声を上げた。




『おい!!そこの魔族共!!そこを退け!!!でなければ、我々帝国に歯向かう者として即刻排除する!!』

「……何か面倒な事になってきたな。……取り合えず、この剣使うか」

「差し出がましいですがアヴァニール様。戦闘についてのレクチャーなどは」

「いらん。サミエル、ミリア。手を出すなよ」




俺が指示すると、二人は先程と打って変わって同じタイミングで畏まりました。と口にした。



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