出会い
「はぁ……なぁサミエル、ミリア。一体此処はどこなんだ?」
アヴァニールはぼやくように言った。
現在、俺たちは森をさ迷い歩いていた。
「森の出口は丁度この辺りではあると思うのですが……前回は資源の探索及び回収でしたので……」
俺たちは研究所を出た後、すぐに地図で見た場所にワープした。ワープは一度見た場所にしか飛べないので、今回はこの間探索に行ったミリアにワープをしてもらった。今回の俺の役目はその補佐というわけだ。
そしてこの森に辿り着いたところまでは良かったのだが、サミエルは昔一度来た程度でミリアはこの付近の植物や生物の生態などしか分からないらしい。ついでに言うと、集落には一度も行ったことがないとの事だった。なのでミリアの生体感知や脳内地図という魔法で森の中を歩いている。
ミリアの魔法が無かったら今頃迷子だ……
目の前で此方ですと説明しながら歩くミリアに目を向けると、突然あっ!!!と声が上がる。
「アヴァニール様!!集落らしきものがあります!!」
「おぉ、お疲れミリア。じゃあその一番最初の集落で話し合いしようか」
俺は一番最初の集落で片を付けたいと考えていた。ぶっちゃけこれ以上面倒な事はしたくない。なので一番最初の集落で何人か引き抜いた後はそいつらを使って近くの集落に連絡を取ってもらおうと考えていた。
大体、人材を見つけるのは下っ端に任せればよかったんじゃ?と今更思った。そう思いながら歩いていると、突然サミエルが動きを止めた為にぶつかった。
「おい、サミエル。急に止まるな」
「申し訳ありません……彼方の方から何か気配を感じましたもので」
そう言って静かに俺たちの背丈を軽く超える草を見据えるサミエルは、徐々に戦闘態勢へと変わっていく。それに続いてミリアも戦闘態勢に変わった。風に靡く草が揺らめくとサミエルが突然腰に下げていた鞭をふるった。その瞬間、辺りの草木がズバンッ!!と音を立て地面に落ちると一人の人物が姿を現した。
その人物は突然の事に目を丸くして両手を上に挙げていた。
「……誰だ貴様は」
サミエルは鞭を向けたまま、立ち尽くす少年に尋ねた。
「……俺は、ロウ。……お前たちこそ、誰だ」
ロウと名乗った少年は、ゆっくりと両手を下ろした。
「で、何で捕まえたんだ?」
「もしこいつが嘘をついてアヴァニール様に近づいているのなら、危ないですから」
サミエルとミリアは魔法で作った縄でロウを縛り上げ地面に座らせると、尋問し始めた。
「おいお前、お前は何故隠れていた」
最初ロウはサミエルを睨んでいたが、サミエルが話さないなら殺すと物騒な事を言い始めたので、ロウは仕方なくといった感じに話し始めた。
「……今俺の、住んでる集落が……シーザ帝国に襲撃されてて……それを他の集落に伝えようと」
「なんだ、逃げてきたの」
辛辣なミリアの一言にロウは何か反論しようとしたようだったが、一度開いた口をそのままゆっくりと閉ざし悔しそうに顔を歪めた。その表情に俺は少し同情していたが、そんな事はお構いなしにサミエルは言った。
「ではこのままその集落は避けた方が良いですね」
今シーザ帝国に関わるのは拙いですし……と呟きながら話すサミエルに、それを聞いていたロウが口を出した。
「なぁ!!あんたら!!あそこを、あの人たちを助けてくれ!!お願いだ!!俺じゃ無理なんだ!!」
そう言って頭を下げたロウは、身体を震わせていた。
「俺じゃあ、無理なんだ……。このままあいつらに、全部奪われちまう……大切な場所も、大切な人も……俺は、守れない」
縛られたロウが頭を下げる地面にはポツポツと雫が落ちていく。言葉にしてさらに自身の無力さを痛感したのだろう。俺はその姿をぼんやりと見つめながら最初に見た記憶を思い出していた。
大切な場所も、人も……か
あの日、あの時、きっと俺は大切な場所も人も守れずその後悔の内に死んでいった。その転生する前に見た記憶と今のロウが重なってしまい、俺の気持ちは徐々にロウを助ける方へと傾いていた。だが、無償で引き受けてしまえばサミエルとミリアが納得しないだろうと思った俺は、悪役が一度は言うかもしれない台詞を恥じらうことなく言う。
「分かった。ではロウ、その集落を助ける代わりに、お前は俺に何をくれる?」
俺の言葉にロウが下を向いていた顔を上げると、その顔には零した涙の後がはっきりと残っていた。ロウはしばらく黙り込んでいたが、すぐに真剣な表情で言った。
「俺の全て、だ」
その声と表情にははっきりとした意思と覚悟が宿っていた。
「……いいだろう。俺が救ってやる」




