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21.好きな人は見つめたくなる

「じゃあ投げるよイヴちゃん! うまくレシーブしてねーっ!」

「おおーすっ」


 体育館を男女別で区切っての体育。イヴと友香は向こう側でバレーもどきをしてる。

 女子側を眺めるのは変態くさいかもしれんが大丈夫。イヴ以外はアウトオブ眼中だから。


(……恋人か)


 まだ完全には実感がわかなかった。でも本当に嬉しい。道端の軍手さえも輝いて見える。


「海くんよかったら一緒に練習、あれ? なんだか嬉しそうな顔だね」


 話しかけてくれたのはセラ君。一、二年生合同の体育だから。


「のぞきじゃないぞ。イヴだけを見てた」

「イヴお姉ちゃんを? なにかされたの?」

「ん?」


 されたといえばそうなる。どうしよう。報告しておくべきか。


「イヴに告白した」

「え」

「で、オッケーされた」

「ええっ!?」


 少し迷って伝えた。親しくしたい友達だから。


「おめでとう。よかったね。あ、実は僕もいいことがあったんだよ」

「なんだ?」

「おじいちゃん入院してたでしょ? 今日退院なんだ。しばらくは家で暮らせるんだって」

「おお、やったじゃんか。今度はお見舞い抜きで遊びに行けるな」

「えへへ、うん」


 にこにこ無邪気な笑顔のセラ君。俺まで嬉しくなった。日常は稀にいい種を運んでくれる。


「でも、恋人かあ。ちょっとうらやましいな」

「セラ君は、好きな人とかいないのか?」

「えっ? う、うんとね。言っていいのかな」


 戸惑う姿。うんその仕草かわいいな。ってそうじゃなくて。


「大丈夫だ。誰にもばらさない。体育館の中にいたりするのか?」

「う、その、いるよ」


 ちらり。セラ君が視線を向ける。その方向にいるのは上手いことレシーブを返すイヴ。


「まさかイヴか?」

「う、ううん。一緒にバレーボールしてる人」


 イヴと共に絶賛運動中の人といえば。


「頭突き系女子か」

「……うん。まだあんまり話せてないし、好きというよりも、気になってる状態かな」


 友香か。優しいし素敵な相手だと思う。あと鋼鉄頭だし。


「セラ君」

「なに?」

「ちょっといいか?」

「え」


 セラ君と向き合う。ゆっくり互いのひたいを重ね合わせた。


「な、なな! どうしたの海くん急に」

「いや、友香に頭突きされて怪我は大丈夫だったかなーと」

「あ、そ、そっか。ありがとね。おかげさまでなんともないよ」


 冷静さを取り戻すセラ君。慌てる反応が見たかったのもある。無事ならよかった。


「友香と喋る機会とかはあるのか?」

「あ、あんまりないかな。いつかはって思うんだけど難しくて」

「よし、なら今だな」

「えっ!?」


 ちょうど休憩中だし。イヴとのだべりが盛り上がってるみたいだし。


「俺さ、分かったんだ。気持ちは口にした方がいい。本音を飲み込む生き方は損するって」

「……うん」

「音に乗せるだけでいい。きっと良い方向に動き出すよ」

「分かった。男だもんね。僕から行かないと」


 決意を固めたセラ君。深呼吸の後、たしかな足取りで歩き始めた。

 イヴと友香は雑談続行中。集中すれば全員の声が聞こえる。


「友香さんバレー上手いですね。実は経験者とかですか?」

「うん。中学の部活で三年間やってたよ」

「プロですねえ。じゃあ、いっぺん本気アタックを撃ってくれませんか?」


 イヴが挑戦心を携えて立ち上がる。


「え、いいの? 危なくない?」

「はい。そうですねえ、わたしが負けたら雪見だいふくをおごります」

「……ようし、じゃ全力で行くからね! 怪我しないでね!」


 ノった友香も立ち上がる。お互いに適度な距離を開けた。離れた位置で見守るセラ君。

 友香式ヘッドバットを警戒してるんだろう。あの場所なら安全だ。


「行くよーっ!」

「こいやーっ」


 叫びと構え。放り上げられたボール。勝利への欲望か、フルパワーで腕が振り下ろされた。

 三年間の経験があるから平気。誰もが思っていた。打球が横に大きくそれるまでは。


「うわぁ!?」


 悪夢再び。高速球はセラ君に直撃した。最も無防備の股間に。

 ばたりと倒れるセラ君。あれは殺人だ。たまに球が当たったなんて洒落すら言えない。


「きゃーっ! だ、だいじょうぶセラ君! ど、どうしよう、どうしたらいいのかな!?」

「ううう……は、話したかっただけ、なのに」

「ほ、保健室ーっ!」


 セラ君をおんぶする友香。全力で体育館から出ていった。いつかも似た惨状を見たような。

 イヴは見送ってから俺の側に来た。そしてこんな疑問を口にする。


「あれ痛いんですか?」

「ああ。神は死んだって確信できるほどに」

「なるほどぉー」


 うまく説明できないのがもどかしい。会話のきっかけが出来たから結果オーライだろうか。

 セラ君には、頑張ってほしいと感じた。隣に大切な人がいてくれるのは、すごくあたたかいことだから。


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