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第七十六章

第七十六章


 九十九は、ボールを蹴って遊んでいる碧をジッと睨んでいた。


 「なるほど。そういう事だったか…」

ややあって九十九が口を開く。

「ガードが下がるのが思ったより早かったのは、あの子の力のせい…成る程な」

「お前…まさか坊やの時のように、みーちゃんを使って何かやろうってんじゃないだろうな?」

「あの能力自体に興味は無いと、以前にも言った筈です。必要があれば別、ですがね」

意地の悪い笑いを浮かべて、その日初めて九十九は銀さんを正面から見た。

「坊やだって酷い目にあったんだ、あんな子供に耐えられる訳がねぇ!」

「おちついてくださいよぉ〜、やると決まったなんて言ってないじゃないですかぁ〜」

またいつものC調に戻った九十九が銀さんの激しい口調を丸め込む。


 こいつ、コロコロ調子を変えやがって。

いつもこれで、こっちはペースを狂わされるんだ。


 「それに久我さん、心配事をあまり増やさない方がいいんじゃないですか」

「…?どういう意味だ」

「刑事が来てましたね、今日」

銀さんの顔色が変わるのを確かめてから、九十九はゆっくりと言葉を繋いだ。

「貴方に興味が出てきてね、調べてみたんですよ、過去の経歴を。履歴書は…綺麗なモンでした、まっさらで」

「それだけじゃないだろう」

「知り合いに、こういった事を調べるのが得意な人がいてね。動いてもらいました」


 久我銀次 43歳


 元 広域暴力団山下会系墨田組若頭


 7年前に近隣組織の組長、及び組員を横浜中華街にて拳銃で射殺


 自らも4発の銃弾を浴び、自首


 計画性の無い偶発的事件と判断され、初犯という事もあり刑はこの手の事件としては異例な程軽かった


 出所後の消息は不明…


 「…もういいだろう」

乾いた声で銀さんが言った。

「刑事は苦手、って訳ですね」

「あぁ…」

指の間から、煙草の灰がゴソッと落ちて道に砕けた。



 午後6時58分。

 成田空港到着ロビー。


 長身、痩身の男がゲートから足を踏み出した。

傷跡だらけの顔にアイパッチ。

一般客は皆、男の周りを大きく迂回してそそくさと手荷物預かり所へと急いでいた。


 久しぶりだな


 男は体重が無いかのように、ユラリと歩き出す。


(続く)

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