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スタイリッシュざまぁ  作者: Aska
番外編
20/22

後日談⑧ ガーランド一族、覇王家へ 前半戦




 フェリックス・ガーランドはハイブリッドである。両親の性癖の全てを受け継ぎ覚醒した息子は、それから全く自重しなかった。むしろ積極的に成長チート環境の名の下、順調にレベルアップをはかってきたのである。愛するドS婚約者からの折檻に胸を高鳴らせ、和解したドM父からの紳士なる変態の在り方を教えられる。時には文字通り身体を張って息子の助けとなってくれた。さらに、学園で自身を蔑んだ相手や胃薬(ライバル)をちくちくいじめることで得られる幸福感。フェリックスは現状に大変満足していた。


 母親が亡くなってから父親と疎遠となり、父親の所業に後ろ指をさされながら生きてきた幼少期。そのため、周りから目立たないように生き、あまり自己主張をしてこなかった。それははっちゃけだした現在でも、多少尾を引いている。フェリックスには上昇志向というか、上を目指すといった欲があまりないのだ。愛する人と結ばれ、自分の性癖を満たし、父の跡を継いで侯爵として働ければそれでいい。それだけで十分自分は幸せだと考えていた。


 そういった点でいえば、ルルリアも特に気にしていなかった。彼女もまた、権力などに興味を持っていなかったからである。もちろん、権力があるかないかならある方がいいに決まっている。もらえるというのなら、喜んでもらうだろう。それでも、自分の身の丈以上のものを他から奪ってでも手に入れたいかと言われれば、首を横に振る。そこまで頑張るほど、魅力的なものだとは思えないからである。


 そんな彼ら二人の考え方に一番ホッとしたのは、他でもないユーリシアであった。覇王様はガーランド家の扱いに頭痛を起こしてはいたが、そこまで問題にはしていなかった。確かに婚約者に新しい扉を開かせようとしたり、学園の生徒が下僕化したり、彼らのお父様による公開謝罪プレーで一部貴族が胃薬愛好家になってきたり、本気で勘弁してほしい内容はあるが、それでも国母として国のかじ取りをする上でなら問題にはしていなかった。


 しかも、彼らはこちらに大変好意的なのだ。魔王様とは堂々と後ろ暗い話を午後のひと時程度の軽さで語らいあうことができ、フェリックスはクライスと懇意にしており、次期侯爵として真面目に勉学に励んでいる。リリック・ガーランドなど、醜態ともされる行為をあれだけやっておきながら、それでも侮れない人物として貴族社会を生きてきた男である。


 さらにリリックはルルリアを通して、ユーリシアにとって有益な情報を渡したりもしている。そういったこともあり、覇王様としてもガーランド家を無碍にはできないのだ。それなりに貴族社会を知っているといっても、彼女はまだ十代の娘でしかない。ユーリシアにとって痛手だったのは、信頼できる年長者が少ないことだ。本来ならその役目は親や身内が行うべきであるが、彼女にはそれができない。故に長年貴族社会を生き続けた侯爵閣下の助力は、彼女にとっても非常にありがたいものだったのだ。



 これだけなら、これだけなら覇王様は積極的に侯爵家と関わりを持ちたいと思っただろう。しかし残念ながら、彼らは変態だった。それも生粋だった。周囲を下僕化してうっとりするような性癖第一主義の恐ろしい一族だった。実害はないのだ。むしろ、覇王ロードのために手も貸してくれる。ただ弊害として、周りに変態が増えるというだけである。それが非常に頭が痛かった。


 ガーランド家は変態とお薬愛好家を作り上げることに関しては、間違いなくスペシャリストである。魔王様の下僕牧場は今でも勢力を拡大させているし、その手腕を吸収するようにフェリックスも婚約者と仲睦ましく牧場経営を楽しんでいる。常識のある貴族は、リリック閣下の全く折れることのない恍惚とした思いで繰り返し行われる謝罪プレーに胃を痛める。なにこの一族、この国をどうしたいの。


 彼らは決して悪いことはしていない。ただ変態とジャンキーを量産しているだけである。頭痛がする。だが幸いだったのが、彼らが現状に満足していることだった。もしフェリックスに野望があれば、ハイブリッドを遺憾なく周りへ発揮していただろう。ルルリアに欲があれば、愛する婚約者のためならと親子そろって魔王様を支えただろう。リリックは義娘と息子の幸せ第一であるため、彼らが動かないのならそれでいいと考える。


 つまり、彼らがアグレッシブに動く理由がないのだ。息子は天然なところがあるため、もし野望を持つような知り合いができたら無自覚に協力することはあるかもしれないが、そこは魔王様が確実に止めるだろう。少なくとも、ハイブリッドを動かすには彼女に認められなければ不可能という訳だ。今は人と向き合うように努力をしているルルリアだが、もともと排他的な思考を持っている。そのため、覇王様もそのあたりに関しては問題はないだろうと特に気にしていなかった。


 魔王に認められ、変態(未知の生物)を理解し、世界(ノーマル)の敵すらも自らの内に取り込むことができる人物。それは、この時期であったからこそ、このタイミングだったからこそ、この人選だったからこそ、--そんな奇跡のような邂逅が訪れたのかもしれなかった。




******




「こちらは、弟のエヴァン。ルルリアと話をすると聞いて、ぜひ一緒にお話をしてみたかったみたいです」

「初めまして。公爵家嫡男、エヴァン・セレスフォードと申します。姉のご友人とお会いできると聞いて、楽しみにお待ちしておりました」

「こちらこそ、お初にお目にかかります。ルルリア・ガーランドと申します。私もあなたとお会いできたことを大変嬉しく思います」

「ルルリアの婚約者で、フェリックス・ガーランドです。このたびは、セレスフォード領へお招きいただきありがとうございました」


 変態にワンコへの性癖改変の注意をして、ついでに覇王弟を生贄(防波堤候補)にしちゃおうぜ! という人として終わっている話し合いが行われて、数日後。乗り継いだ馬車から降りたルルリアたちは、セレスフォード家の使用人の案内を受けた。そして案内された客室へ入ると、落ち着いた雰囲気の黒髪の少年と、うっすらと微笑みを浮かべた黒髪の女性と顔をあわせたのであった。


 使用人たちが素早く客人のために仕事をこなしている間に、自己紹介を済ませた四人は和やかなムードのまま学園での話をしたり、セレスフォード領の名産を称賛したりなどしながら、楽し気に会話が弾んでいく。傍から見なくても穏やかな談笑の時間である。途中フェリックスがうっかりしたときは、ルルリアが笑顔で誰にも見えないように足の脛を容赦なく蹴っていたので問題もなかった。


 ちなみに、笑顔の裏で冷静に人間観察をしながら話をする弟君。いきなり頬を赤らめてハァハァしだす次期侯爵閣下に、「えっ、何? どうしたんだろう、この人。具合悪いの?」と大変まっとうな疑問を抱く。胃薬が知ったら、純粋(ノーマル)さに泣くだろう。


 そうして、使用人たちが部屋を退出し、しばらく間があくと同時に自然と会話が止まる。ユーリシアは紅茶を一口飲み、ソーサーの上にカップを置いた。表側の会話はこれで十分に楽しんだだろう、と覇王様はにっこりと本来の笑みで笑った。



「さて、改めて我が領に来てもらい感謝しよう。せっかく友人を初めて招いたんだ、普段通りゆっくり寛いでくれるとありがたいな」

「あら、ふふふ。お友達の家に招待されたのは初めてだから、少し緊張してしまっていたの。でも……そうね。ユーリの言うとおり、さっきまでの会話だけでも自慢の弟さんだってわかったわ。今だって、眉一つ動かさないもの」

「こちらこそ、さすがは姉さんが認めたご友人です。ここまで表と裏の顔を使い分けられる二面性のある女性は、姉さん以外に知りませんでしたよ」

「あら、お勉強になったようで何よりだわ。こんなにもご聡明だなんて、エヴァン様の受けてきた公爵家の教育はさぞ素晴らしいものだったのでしょうね?」

「えぇ、本当に。僕もこの姉の下、このような家庭環境で過ごしてきましたので、次期公爵家の者として必要であったとは思っていますよ?」

「二人共、私を持ち上げすぎだ。ルゥの二面性やエヴァンの性格は、お前たちの生来の才能であるだけだろう?」


 三者三様に、楽し気な笑い声が部屋中に響き渡った。三人が笑いあうと同時に、部屋の温度が精神的に肌寒く感じてくる。三人が三人共、口元の歪んだ笑み以外は先ほどまでの和やかな表情のままなので、傍からだけなら先ほどまでの日常会話を楽しんでいる延長に見えるだろう。そう見えたほうが、一部の人以外幸せなのは間違いない。


「しかし、驚きましたね。世間から慈悲深く健気な女性と謳われているルルリアさんが、普段はこんなにも快活な方だったなんて……。社交界で皆さんに知っていただけたら、もっとたくさんのお声がかかるのではないですか?」

「あら、お友達の家にいるから少しはしゃいでしまっているだけよ? ふふっ、エヴァン様は大好きなお姉さんが初めてのお友達に取られそうで困っちゃったのかしら。なんせ世間的には、十歳児ですものねぇ? あなたから大事なお姉さんを取るなんてしないわ。ご心配でしたら、皆様に宣言でもしておきましょうか?」

「それはそれは、ご心配なく。お優しいルルリアさんの手を煩わせるほどのことではありませんよ。家のことですから」

「そうね、家のことですものね」


 にっこりといい笑顔を浮かべあう両人。今のやり取りだけで、間違いなくこの人は姉の同類だとエヴァンは確信する。先ほどエヴァンは、さらっと社交界にルルリアの裏をばらすとしたらどうしますかー? と挨拶代わりに聞いてみたのだ。意味はあるがそこまで重要ではない、エヴァンなりの軽めの挨拶であった。


 いきなりの脅しのような挨拶。それにルルリアは顔色一つ変えずに、こちらもさらっとエヴァンが十歳の子どもであることを前面に出し、「お姉ちゃんを初めてのお友達に取られたくなくて、ルルリアに裏があるとわざと嘘をついちゃったりするのかしらねー」と微笑まし気にカウンターアッパーを繰り出した。


 エヴァンが表にルルリアの裏をばらせば、おそらく学園、社交界含め『お姉ちゃん大好き(シスコン)な次期公爵家嫡男』という不名誉な二つ名をさりげなく、そして全力で彼女は流し出すだろう。この姉と似た女傑なら、確実にやる。売られた喧嘩は真正面から容赦なく買う魔王である。そして覇王様も大そう面白がって一緒に流しだす。この姉なら絶対にやる。いじめっ子気質な姉へのこの手の信頼度は100%だ。


「姉さんが友人を家に招待したのは初めてだったので、僕も少々はしゃいでしまったようです」

「あら、一緒ね」

「はい、一緒ですね。これからも楽しい会話ができる関係でありたいですね」

「そうね、私も楽しい関係でありたいわ」


 お互いに目を細め合い、くすくすと笑い声をあげる。そんな二人を見て覇王様は、大変楽しそうで何よりだ、と友人と弟が仲良くなったことに頬を緩ませる。挨拶代わりにその友人にかるーく遠回しな脅しをかける弟と、エヴァンにとって不名誉な性癖を意気揚々と定着させようとする魔王様。大変神経が極太い者同士、いい関係を築けるであろうと頷く覇王様。


 俺、絶対にこの覇王家の中でなら一番常識人だと思う。と、もしシーヴァがここにいたら自分のことは棚に上げながら、胃薬の一粒一粒に愛情を込めて名前を付けだしていたことだろう。



 さて、そんな仲睦ましい会話が繰り広げられる横で、全体のごく一部に値するだろう息子は、--ルルリアが生き生きとしている姿にセレスフォード家に来てよかったー、とのほほんとしていた。普通にいつも通りの表情で出されていた紅茶を飲み、お菓子をつまむ。とりあえず頭の中で、この三人で自分のことを罵って蔑んでくれたらと脳内妄想プレーでもして楽しんでおくことにした。さらっと覇王姉弟、変態の脳内に巻き込まれる。


 ちなみに、フェリックスはルルリアに蔑まれることはバッチコーイだが、決して嫌われたいわけではない。元エンバース家の子女とガーランド家の者に話があるからと訪れているが、ルルリアが初めて友人の家に招かれていることとも同意なのだ。今彼女らが会話している最中に話に入ることもできるし、三者から蔑まれるように罵ってくださいと行動することもできるが、本当に楽しんでいる彼女の邪魔をするほどでもなかった。


 フェリックスは、傍から聞かなくても嫌みの応酬にしか聞こえないBGMに心地よくなりながら、自然と賢者モードへと移行していたのであった。


「フェリックスさん、でしたか?」

「ん? あぁ、エヴァン君か。どうかした?」

「いえ、この状況下であまりに普通にお菓子を食べていたんで」


 こんな状況下で、大変慈愛に満ちた表情でお菓子をパリポリする侯爵家嫡男の思考がさっぱり読めない公爵家嫡男は、とりあえず話しかけながら新しいお菓子をおずおずと差し出す。普通にお礼を言われ、餌付け(ファーストコンタクト)に成功したようだ。ちなみに君の兄も、修羅場の横で普通に夜食を食っていた。


 ちらり、と姉を伺うが、彼女はエヴァンが侯爵家嫡男と会話をすることに特に反応をしない。つまり、エヴァンがしゃべりかけることは問題ないということだろう、と結論付ける。むしろ女傑同士の楽しいお話をし出したところから、背中を押されているような気もする。姉の真意はわからないが、これが狙いなのだろうか? と訝し気に思いながらも、視線を目の前の赤毛の少年に戻した。


 今までに会ったことのないタイプだな…、とエヴァンは笑顔を浮かべながら思考を巡らせる。姉のような覇気はなく、王子のような気品もあまり感じず、母のように臆病さや慎重さも感じなく、他の貴族のような欲望も感じない。何も考えていないように見えるが、人のよさそうな目なのにどこか深淵のような妄執を感じる。それなのに、自然体過ぎて考えが読めない。フェリックスと目を合わせるが、彼が自分をどう思っているのかすらわからないのだ。エヴァンの背にじっとりとした汗が流れた。


 そんな相手を真面目に見極めようとする弟君と、S気のある少年をじっと眺めるフェリックス。彼は魔王様のような真正のドS以外には、S方面の方が強く出てしまうグルメな男である。要は、真正なら全てを快感として被虐的に受け取ることができるが、そうでないなら俺の踏み台になれと嗜虐的な快感に変えられる大変器用な少年なのだ。


 覇王様もその点ならいけるレベルだろうが、息子は魔王様以外の女性に浮気など考えられないほどにあの殺人拳と笑顔に惚れている。それに、ルルリアが一度見限った人間への対応をよく知っていた。ざまぁの時は、フェリックスが彼女自身が用意した餌だったから、殺人拳(アレ)一発で許されただけなのだ。変態の直感か、その手の線引きは上手くなってきたものの、迂闊なことはできない。


 しかし、この少年は自分と同姓でしかも年下である。嗜虐か被虐か、どちらにも傾けられそうな黒髪の少年に、フェリックスもどうしたら自分が一番興奮できそうか少々興味はあった。弟君、逃げろ。



「えっ、お菓子を食べていたらまずかったか」

「い、いえ。こちらで用意したものなのでどうぞお食べください」


 なにこの人、実はただの天然なだけなの? 正解である。


「あぁ、さっきの三人の会話のことか。だってあれは、普通にお互いを褒めあっていただけだろう?」

「え、えぇ。まぁ…」

「エヴァン君のもルルリアへの好意的な挨拶に感じたし、ルルリアも言っていたけど、みんなはしゃいでいるんだなぁーって。俺は君たちのように口が上手くないから、それなら聞き手に回っておこうかと思っただけだよ」

「そうですか。でも、……よく、わかりましたね」


 正直、驚いていた。ルルリアのように姉と似た性質の人ならわかる。しかし世間一般から見れば、自分と姉にとっては楽しい会話の応酬も、嫌みの言い合いで嫌いあっているのだと取られると思っていたから。ルルリアへ脅しのように言った言葉は、姉が認めた人ならこれぐらい大丈夫だと猫がじゃれる様に接しただけのこと。でも、何も知らない婚約者の彼にはもしかしたら怒られるかなー、とは少し考えていたのだ。


 姉弟の会話があんな風になった経緯は、ユーリシアとエヴァンが普段から仲良く話をしていたら、母親が発狂しかねなかったからだ。自分が持っていた子ども(もの)が、また彼女に奪われたのだと泣き叫ぶ。自分はユーリシアに会いたくないから、息子のエヴァンに全てを押し付けているというのに。それでも、エヴァンにとってはたった一人の母親なのだ。だから、姉とは嫌みを言いあうような関係である、と傍からは見えるように自然とそうなった。


 ユーリシアは、それに何も言わず付き合ってくれている。ちなみに結構ノリノリで。一般の家庭で行われる姉弟の接し方など、エヴァンは知らない。セレスフォード領から出たことがなく、社交界にも出たことがない十歳の子どもが持つ人脈なんて微々たるものだ。自分の家は、姉弟関係は、あまりに歪で周りにはわかってもらえないものなのだろうな、となんとなくわかっていたのだ。


 だから、エヴァンは心から驚いた。初対面の、それものほほんとした彼のような人が、きちんと自分の言葉を理解してくれたことに。


「なんで、嫌みじゃなくて褒めているってわかったんですか?」

「聞いていて心地よくはあったけど、俺が気持ちよく興奮できなかったから」


 ちょっと尊敬しそうになっていた相手からの返答に、エヴァンは固まった。


「……こ、う?」

「本心から告げた虐げや蔑みを伴った言葉だったら、俺の身体が反応しないわけがないっ! なのに、あれだけ素敵な嫌みの応酬だったのに、それを聞いても全く興奮できなかったんだ。それで分かったんだよ。君たちの言葉には、圧倒的に相手の尊厳を根こそぎ踏みにじるような思いが籠っていないッ! 心から相手を虐げ馬鹿にした気持ちがない偽った言葉などでは、俺の身体はもう気持ちよくなれないんだァァッーー!!」


 真の変態は本物を見極める。上辺だけの偽物などで、彼らは決して揺るがない。本心の籠った嫌みや罵り言葉だけが、身体を張った本気の痛みだけが、彼らの心を真に動かし、どこでも悶えることができるのだ。


 そんな変態(彼ら)の生態を初めて目にしたエヴァン少年の優秀な頭脳がフル回転するが、意味がさっぱりわからない。横目で隣に座る覇王と魔王を見ると、「あぁ…」と遠い目をしながらうなずいていた。エヴァンはフェリックスの魂の籠った叫びで、解を得たらしい二人を見て内心焦る。なんでわかるの? 僕にはいったい何が足りないんだ!? とかなり混乱した。


 もし胃薬がここにいれば、「わからないお前が全面的に正しい」と『全て遠き常識(アヴァロン)』と一生懸命に名付けた胃薬(いぐすり)を優しい表情で弟にあげたであろう。自分の身代わりにした癖にドヤ顔で。こうして、覇王弟はガーランド一族との邂逅を無事に果たしたのであった。



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