表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方幻想語  作者: みずたつ(滝皐)
地霊殿
39/41

私の家族を

 私はここが嫌いだった。私はここが嫌いになったのだ。


 理由はハッキリとしていて、そのことがとても許せなくて嫌いになったのだ。


「空」


 私はこの人の声が好きだ。この人の手が好きだ。撫でてくれる時のこの手が好きだ。だからこそ許せない。ここが許せない。叶うことなら、その全てを焼き尽くしたい。


 そんな時だった。


「ねぇ君。ちょっと私と遊ばないかな?」


 この人に出会ったのは。



 ―――



「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」


 空。さとりの口からそう漏れた言葉は、彼女の咆哮にかき消された。なみなみならぬ威圧感、肌が焼けるような霊力の塊に、吸血鬼であるフランでさえ息を飲んだ。


 魔理沙は勿論、人間である妖夢は呼吸することさえままならなくなり、息を吸うたびに肺が焼けるような熱さに苛まれる。


「なんだよこれ? 霊力が桁違いだ!」


 これは、私達でどうにかなるような相手じゃない!


 魔理沙は一瞬で悟った。このままこの場に居れば彼女に焼き殺されるということを。でも、だからといって逃げれるのかと言われればそういう訳でもない。もし背中を見せたらすぐさま塵にされるだろう。だからこそ、魔理沙たちは動くことができなかった。ただ一人を除いて。


「空ー!!」


 さとりは己の体の状態を考えずに前に飛び出す。それを目で追うことはできても、体が頭に付いて行かない。いますぐ止めなければさとりは殺されてしまう。それほど危うい状態なのにも関わらず、足は地面に張り付き、腕は鎖に繋がれたように微動だにしない。


 動いてくれ、頼む! 動け! 私の体!!


「――っ! ああああ!!」


 自身の魔力を放出して、重くなった体を楽にする。それにより緊張の糸が解けたのか、魔理沙の手はさとりの腕を掴んでいた。


 刹那。さとりの頭上に、おん柱を振り上げた空が現れる。


「くっ!」


 なんとかそばに引き寄せる。空の振り下ろした腕はさとりの前髪を掠り、そのまま地面に叩きつけられた。


 凄まじい轟音と共に地面に巨大な罅が入る。衝撃に魔理沙たちは入口付近の壁に叩きつけられる。


「ぐっ! ……おい。無事か?」


 魔理沙は全員に呼び掛ける。さすがに、さとりは体調のこともあり気を失っているが、他は全員意識があるようだ。


「なんとか……ですが」


 妖夢の言いたいことは魔理沙にもわかっている。戦わずに逃げる。それが最善策で、今はそうしなければいけない。


 本来ならこの状態になることすらもいけないことだ。これほどの強者を相手にする時は、相手にしないというのが鉄則で、それが正しいことなんだ。こうなった時点で、私達は負けを確定させている。


「せめてさとりだけでも――」


「そうさせると思う?」


 魔理沙の考えを読むかの如く、諏訪子から悪寒がする。


 ヤバい。どこに逃げる。取りあえずここじゃにどこか。まずはそこにいかないと話にならない!


 視線を走らせて退路を探す。そこが詰みでも最早そこ逃げるしか生きるための道はない。


「――! 扉に急げ!!」


 魔理沙の号令と共に全員が空が出て来た扉に急ぐ。魔理沙はさとりを抱え直し、扉に急ぐ。


 考えろ。恐らく諏訪子からの攻撃と空からの攻撃は防ぐことはできない。逃げたところで追撃されて結局やられる。まずは時間を稼ぐことだ。打開する策を思いつくまで、思考を止めるな!


「ば~あ~い」


 諏訪子からの霊力弾と、空が恐らく最初に見せたであろう熱線を撃ってくる。狙いは、最後に動き始めた魔理沙とさとりだ。


「魔理沙さん!!」


 妖夢は手を伸ばす。その手に届くように、必死で走る。だが後ろから迫り来る圧迫感に、魔理沙は振り返った。


 駄目だ! 間にあわ――!!


 轟音と共に、爆風が辺りを包む。先に避難したフランたちは茫然とその様を見ていた。


「嘘……嘘ですよね。魔理沙さん!!」


 土煙が晴れる。誰しもが絶望していた中、その姿はあった。魔理沙を庇うように、さとりが立っていたのだ。


「返せ……」


 冷たくなるほどの霊力と殺気。その全ては、諏訪湖に向けられる。


「私の家族を返せぇぇぇぇ!!」


 怒号が響き渡る。


 諏訪子は不敵に、舌鼓をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ