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東方幻想語  作者: みずたつ(滝皐)
地霊殿
31/41

怖いだけかもな

ここから地霊殿の話しが始まります。時系列は星蓮船と変わらない作りになります。

「……」


「……」


「ふっふふ~♪」


 地霊殿に行くため、魔理沙と妖夢はこないだ依頼を受けるために窺った守屋神社の裏に来ていた。お出迎えしてくれた長い長い下りの階段に、二人は嫌気がさしたもののその前を歩く少女は意気揚々と下りている。


「……」


「……魔理沙さん」


「なんだ妖夢?」


「……なんで妹様がここに居るんですか?」


「私に訊くな」


 目の前を歩いていいるのは、紅魔館の主の妹フランドール・スカーレットだった。吸血鬼なのにも関わらず、太陽が昇っているのに普通に歩いている。勿論、多少紫外線を防ぐためにフードの付いたローブを羽織っているが、レミリアみたいに日傘で完全シャットアウトしてはいない。


「きっもち~♪」


 すったかた~っと一段飛ばしで階段を駆け下りて行くフラン。かれこれ三十分近く下っているのにまだまだ元気一杯だ。


「そもそも。いつからついて来てたんですか?」


「さあな? 紅魔館を出た時には居なかったと思うんだが」


「ですよね。そう言えば。パチュリー様から何か貰ってましたよね? あれなんですか?」


 妖夢の問いに、魔理沙は「これか?」とポケットから小さな宝石を取り出す。コバルトブルーに輝くそれは中が透き通っていて、除くと向こう側が見える程だ。


「何かは教えてくれなかったな―――」



 紅魔館にあるベランダのティータイム専用の場所に二人とパチュリーはいた。


「それで? なんでまた私に相談なんてしに来たのよ?」


 パチュリーは日差しを遮るように小悪魔に傘を差させ、自分は魔理沙たちの方は向かずに持ってきた本を読んでいる。


「相談って程じゃないんだけどよ」


 魔理沙は罰が悪そうに頭の後ろ掻くと、妖夢にアイコンタクトする。妖夢は溜め息を吐きながらも、不甲斐ない魔理沙に代わって話だす。


「実は。パチュリー様の神殺しの力を拝見したいんです」


「私の?」


 本から顔を上げて暫し考え込むパチュリー。


「あれはあまり人に見せたいものじゃないし。魔理沙だってその力は持ってるじゃない」


「なんでも魔理沙は、まだその神殺しをちゃんと習得していないみたいなんです」


 唖然と魔理沙を見るパチュリー。「たはは」と笑いながら誤魔化しているが、その話は少しだけ可笑しくも感じる。


 魔法使いに取って神殺しの魔術は独自で編みだし、研鑽を重ねて形にする物。それ故他者の介入を毛嫌いする傾向にある。誰だって自分で編み出した魔術を他人に見られたくはあるまい。盗まれる可能性だってあるのだから。


「魔理沙はその魔術。どこまで完成してるの?」


 パチュリーの問いに眉根を寄せるが、「ぜんぜん」と答えるだけだった。呆れて溜め息を吐く。


 どうせ話さないんだろうし。


「あんたの神殺しなんて私が知ったことじゃないわね。自分でどうにかするしかないでしょ?」


「やっぱそうだよな~」


 そう言われるのがわかっていたようで、落胆はしているが残念がってはいなかった。


「まあそれならしかたないな。邪魔したな」


 魔理沙が立ち上がったので妖夢も続いて立ち上がる。そのまま部屋を出ようとしたが、パチュリーが「ちょっと待った」と呼びとめる。


「これ持ってきなさい」


 懐から出した宝石のようなものを魔理沙に向けて投げる。危なげなく受け取ると、まじまじとその宝石を見た。


「なんだこれ?」


「とりあえず持ってきなさい。それが私とあなたを繋いでくれえるから」


 それだけ行ってパチュリーはまた本を読む作業に戻ってしまった。これ以上は干渉しないと言っているようで、仕方なく魔理沙と妖夢は何も訊かずに紅魔館を後にする―――



「なんなんでしょうね?」


「さあな? 私はそれより自分に心配になってくるけどな」


 あの術は既に完成はしている。ただどうしても使うことができないんだよな。気持ちの問題か……私の魔力の問題か。やっぱり私の術じゃないからなのかな?


「神がどれほどの力なのかはわかりませんが、使わないならそれに越したことは無いですよね?」


 妖夢の問いに魔理沙は頷く。そうだ。今回は一様殺しも許可されているが、できるなら殺しはしたくない。とっ捕まえて、神奈子の前に突き出してやる。


「しかし。まさか地霊殿が守谷の裏にあったとはな。驚きが隠せないぜ」


「神奈子さんは知ってたみたいですが……なんで行かなかったんでしょう?」


「いけない理由でもあるんだろ? それか……単に、怖いだけかもな」


 私も、今あいつに会うのは怖いと思うよ。どこで何してんだろうな?


 物思いにふけっている魔理沙に、妖夢は何も言わなかった。魔理沙には隠し事が多い。だけど、それを皆は聞かずに待っている。妖夢はその意思を尊重して、魔理沙についてはあの二人が知っていること以外は聞かないようにしていたのだ。魔理沙自身もそうされるのが都合がよいみたいで、踏み込んでこない妖夢を付き合いやすいと思っている。


「あの感じだと、ただならない関係なんだろう。だったら私たちが首も突っ込む問題じゃない」


「……そうですね」


「二人ともー! おっそーい!」


 かなり先に行っていたフランが立ち止まり、こっちに大声で叫んでいる。魔理沙は「おめぇが早いんだよ!」と言って笑いながら下って行く。

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