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東方幻想語  作者: みずたつ(滝皐)
星蓮船
18/41

始動

「こんなとこに来ていいのか? 私は最重要人物だから謁見はできねぇはずだぞ」


 早苗はぶっきらぼうに話す。肝が座ってるとゆうか、とても捕らえられている人物の態度ではない。


「ナズに許可はとってある」


 しかし村紗はそれに腹を立てる訳でもなく、当たり前のように普通に話かける。


「……看守はどうした?」


 ボソリと小声で、目線で看守がいないかを促した。村紗は頷き、早苗の目線の高さまでしゃがみ面と向かう。


「看守は外に待機させてる。監視カメラは音声は拾わないから、小声で喋れば看守には聞こえないよ」


 それを聞いて早苗は安堵の溜め息をもらす。


「それならいいんだ」


「ここまで来るのに時間かけた、ごめん」


 泣きそうな顔になる村紗だが、早苗はどうすることもしない。いつも通りぶっきらぼうに話始める。


「それで、何があった」


 目に溜まった涙を脱ぐい、真剣な顔つきになる村紗。


「星蓮船が幻想郷に戻ってきた、二ヶ月ぶりにだ」


「……」


 もうそんなにたつのか。神奈子には心配かけてるだろうな。


「……それで、ついこの間そのことを神奈子さんに伝えたら、対策を用意するって言われた。助けられる見込みがあるのかもしれない」


 助けか。それは嬉しいな。現状、捕らえられていては何もできない。神奈子に一つでも情報を渡さなくては。


「……いつだ」


「明日だ」


「早急だな」


「音速で飛んでるからな、これ」


「そうだったな……村紗屋」


「なんだ?」


「気を付けろよ。星蓮船は、まだ何か隠してる気がする」


「早苗の勘は当たるからやめろよ。でも……わかった」


 そう言って村紗は立ち上がり去る。


 早苗は姿が見えなくなるまでは目で追っていたが、見えなくなると虚空を眺めた。


「……私の勘は……博麗屋ほどじゃないと思うがな」





 ところ変わり、守矢神社。石畳の階段。雨があがりしっとりとした空気が辺りを包む。四人は神奈子との話を終えて、帰路についていた。


「……しかし、とんでもねぇ案件になってきたな」


 魔理沙は右手で首の後ろを擦り、左右に倒して首の緊張をとる。


「そうね。色々と厄介な話だからね」


 咲夜がそれに同意し、妖夢も無言のまま頷く。


 神社を出てから終始考えにふけっているの霊夢は、ボソリと、神奈子の言葉を思い出した。


「神を、殺すか―――



「神……」


 神奈子の言葉に、四人は言葉を失いただ呆然とした。


「諏訪子は神。いわゆる土地神とゆうやつだ。力は大妖怪なんかめじゃないくらい強大だ」


 神とゆう存在は、その多くが妖怪であったり妖精の類いなのだ。人々は昔から不可能だと思っていることをできる者を、神と崇めていた。だからこそ異形で異常な妖怪や妖精が神とされていたのだ。中には霊力をもつ人間なんかが、現人神として崇められたりしている。ただし、近年ではそれが能力者であるとわかっているので、神とゆう存在の大多数が神として扱われなくなった。


 その中でも神として崇められているのは、土地神や仏像、地蔵、釈迦如来なんかだ。


 それらの実力はやはり神と言われるだけあり桁外れなのだ。普通の人間が勝てる訳があるはずがなく、神に勝てるのは同じ神だけだと言われている。


 その神を相手にしろと言っているのだ、唖然とするのも頷けるだろう。


「……神を捕らえるなんて、できるのかよ」


 まるで他の三人の気持ちを代弁するように、魔理沙は呟いた。


「私も捕らえられるなんて思ってない。最悪殺しても構わない」


「神殺し……できるんですか?」


 まったく検討のつかない妖夢は、神奈子に訪ねた。しかし答えたのは霊夢と魔理沙だった。


「できる」


「霊夢か……私ならな」


「……どうゆうことですか?」


 それは妖夢だけでなく、咲夜も思っていた。いくら妖夢より付き合いが長いとはいえ、まだまだ知らないことが多すぎる。特に魔理沙の方は秘密主義なので、過去の話一つ聞くのに何日もかかる。


 だからこそ咲夜には興味があった。霊夢が絶対的信頼を置く魔理沙と、魔理沙が絶対的信頼を置く霊夢に。


「私は神を封印する術を持っているし、神殺しの術もある」


「私は……神殺しだけだ」


 淡々と喋る霊夢に比べて、魔理沙はどこか浮かない顔だ。この神殺しとゆう力に、何か嫌なモノでもあるのだろうか。


 咲夜はそんな思案をしていると、神奈子が話出した。


「そう。それを知っていたから、私はお前たちをここに呼び出したんだ。お前たちならもしかしたら、諏訪子を止めてくれるんじゃないかってな」


「なるほどな。まあ確かに、今この幻想郷に神殺しができるやつなんて、そうそういないからな」


 魔理沙の言う通り神殺しはそうそういない。そもそも神殺しとゆう力そのものが、今となってはいらない力でもある。昔と違い神が少なくなってきて、なおかつ反感を起こすモノもなくなったので、神殺しの需要がなくなったのだ。だからこそ必要に力を習得することがなくなり、風化していった。


 今幻想郷にいる神殺しの力を持つものは、霊夢、魔理沙の他に、パチュリーなんかもその力がある。


「引き受けてくれるか?」


 神奈子の真剣な眼差しに、三人の顔が曇る。正直なところ今回の山はやばすぎだ。四人でやるには荷が重すぎる、そう霊夢以外は考えていた。しかし。


「いいわよ」


 霊夢が二言返事で応じてしまった。


「おい霊夢!」


 取り乱した魔理沙が霊夢の肩を掴む。霊夢は魔理沙に向き直り。


「ちょっと、会ってみたくなってね。聖白蓮、その意思に」


 楽しそうな顔で微笑んだ。魔理沙は呆気に取られていたがやがて大きな溜め息を吐き、神奈子に向き直る。


「私も引き受けた。こいつ一人にやらせるわけにはいかねぇからな」


 二人の様子を見て、神奈子はクスリと笑う。


「仲いいなお前ら」


「まあ、それなりの関係なんでね。それに、今に始まったことじゃないしな」


 もやは諦めている魔理沙に、咲夜がクスクス笑う。


「なんだよ? 咲夜まで」


「いいえ? 魔理沙も苦労人ね」


「これが何年も続くと慣れてくるぜ」


「ちょっと! 私が毎回無茶してるみたいじゃない」


 やれやれと首を振る魔理沙に霊夢が物申したが、魔理沙は違うのか? と言った顔で見つめる。それにムスッとした顔をする霊夢。


「私も引き受けましょう」


 二人の様子を見ていた咲夜も、神奈子に向き直り頷いた。


「咲夜さんが受けるならば、私も引き受けます」


 こうなれば、咲夜の右腕になった妖夢も必然とついてくる。結局四人は、この案件を受けることにした。


 神奈子は泣くのを我慢するかのように顔を歪めるが、けして涙を見せることはなかった。よりいっそう真剣な面持ちで、頭を下げた。


「恩に着る。どうか、早苗と諏訪子を頼む」



 ―――神奈子は、諏訪子を殺したくはないのかもね」


 霊夢の言葉に魔理沙は頷く。しかし現状はなんとも言えない状況であることは間違いない。諏訪子の実力もわからないし、捕らえられるかもわからない。まずは情報を収集するのが先だ。


「……で? どうする? 報酬は皆平等だから、誰が諏訪子の相手をしても変わらないが」


 神奈子は報酬に叶えられる範囲の願いを提示してくれた。案件を一つ解決したごとに半分の人数分報酬を払う。そうゆう条件付きだが全て解決してから報酬を貰うよりは、ありがたいシステムと言えるだろう。


「私は星蓮船に行く」


 霊夢は率直に自分の意見を言った。もしかしたら霊夢は聖白蓮に何かを感じているのかもしれない。彼女の意志が、どんなものなのかを知りたいのだろう。


「なら、私は霊夢についていくわ」


 次に意見を言ったのは咲夜だった。


「そうなると地霊殿に行くのは私と妖夢か」


「そうなりますね」


 消去法によりそうなるが、戦力的には申し分ない別れ方はしていた。それに星蓮船に潜入するとなると、直球バカの霊夢をコントロールする頭の回転が早い人が必要になる。その点咲夜は適材ではある。


「まあ任せてちょうだい。それに、潜入してるスパイを知ってる気がするし」


「そう言えば名前、なんてったっけ?」


 先程聞いたばかりだとゆうのにもう忘れた霊夢に、三人は苦笑する。代表して、咲夜が答えた。


「村紗水蜜よ」






 星蓮船内部、水蜜の部屋。


「あと一日。あと一日あれば、早苗を助けてやれる」


 それに、これを必ず持ち帰らなきゃいけない。


 自身のデスクの鍵を開け、透明なファイルに入った資料を手に取る。


 書かれているモノはある計画の内容、そして左上には、幻想郷解放計画と書かれていた。

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