異変の始まり
如月の丑ノ刻のこと。博麗霊夢は神社の鳥居の下、石畳の階段に腰をかけて,
空を覆い隠す紅い霧を無愛想な表情で睨んでいた。
栗色の髪を後ろで一つに括り、赤いセーラー服のような物に別着けで白い振り袖を着ていて、袖は風に揺れてひらひらと舞っている。
「異変か……」
まったく面倒だ。けど今月厳しいからな〜。
心の中でぼやくと、霊夢は重い腰を上げて両手を腰に当てて体を伸ばす。息を一つ大きく吐き出し体の緊張をほどく。
「荒稼ぎにいきますか」
「そうだな」
鳥居の上から聞き覚えのある声が聞こえたので見上げる。すると下を覗きに込むように黒いトンガリ帽が姿を見せた。
「一人で行くのは連れないんじゃないか?」
そう言うと鳥居の上に乗っている人物は霊夢の後ろ、鳥居から賽銭箱の間の石畳に着地した。
金色の長い髪に右手には竹箒、服装はゴシックに近い格好をしていた。
「どうせ絡んで来ると思ってたわよ。魔理沙」
魔理沙と呼ばれた少女はニヤリと笑うとトンガリ帽子を少し後ろにずらす。
「まだ異変として新しいし、霧が出始めたのがだいたい戌ノ半刻ぐらいだったから、企業からの報酬としてはだいたい……五十万っていったところか」
「それは解決した場合? それとも討伐した場合?」
魔理沙は首を横に振る。
「さあな。上の考えていることはよくわからん。いつもの妖怪退治じゃなく異変としての扱いだからな、解決で報酬は貰えるんじゃないか?」
「ならいいんだけど」
霊夢は言い終えると左手の拳を魔理沙に向けて突き出す。それを見て魔理沙は霊夢に近づき、左手で拳を作り霊夢の拳にくっつける。
「取り敢えずお互い死なないことね」
「そうだな。互いに無事を祈ろうぜ」
そして霊夢は体を浮かし霧の発生源である館の方向に飛んでいった。それに続くように魔理沙は箒に股がり霊夢を追いかける。