第四十五話「軍艦行進曲はノリがいい」
今回のゲストは諸事情によりお招きしておりません。第四十五話どうぞ。
2月13日
午後十四時
横須賀沖
海上自衛軍
<清水良太三等海曹>
観閲式。それは海上自衛軍が自衛隊時代から三年に一度代々行っている大規模な広報イベント。
艦隊の行動を示威する事で海上自衛軍へ入隊することを誘っている。観閲式を見て海自に入った人も少なくはないだろう。
そして財務省の中の人や上層部へのアピールや諸外国の牽制も兼ねている。
巻波は大舞台と言うことで、かなり張り切っていた。この艦には色々思い入れがあるし、様々な艦魂と遭えるというのも中々面白そうと言っていたし。
俺も似たような理由で張り切っていた。
「ただいま、甲板において高性能20mm機関砲の試射を行います」
アナウンスが聞こえた後に、前部ファランクスの発射音が聞こえる。
発射音が終わった後に観客のどよめきが聞こえる。
「右手をご覧ください。昨年就航し日シ事変において、戦闘に従事したほうしょうです」
ほうしょうのほうでヘリコプターが着艦している。これにプロペラの戦闘機が加わるといわれているが・・・。プロペラだと中途半端な速度しか出せずSAMや自走対空砲の餌食になりそうだが。
何か秘策があるのか戦後初の艦上戦闘機がプロペラとか50年遅い。
ミサイルを搭載可能らしいが・・・
巻波「清水。こっちにも人が来たよ」
清水「マジか」
巻波の言葉を聞き、一旦思考をとめて、乗艦している民間人への対応に備える。
こうして午前中は客への説明や、演習のイベントの出演。下記の操作や修理の実演などに終われた。
そして、観艦式も終わり横須賀に気管支、お客を全員返らせたあと。俺はほうしょうのどこかで艦魂が見えるもの同士や艦魂たちと一緒に、一種の宴会をやっていた。
まきなみ「いやぁ、今日も疲れました」
まきなみが酒を飲みながら笑顔で言う。中々アウトな光景だ。
「ぷはぁ。やっぱ一仕事終えたビールは上手いねぇ。そう思うだろたーちん」
「たーちん言うな。むらさめ」
あそこで出来上がってたーちんなる人にじゃれ付いているのがむらさめ。むらさめ型一番艦とは思えない。たーちんの本名は唐沢太一。階級は一等海尉のだ。艦魂はどうやら見えているだけらしい。艦魂の出した料理に手をつけていないし、何よりむらさめがじゃれ付いているのに、すり抜けている。
「韓国がきな臭いし、訓練がきつくて困る。すずなみ。ここは一つ交換と言うことでかわってくんね?」
さざなみ「え? えっと・・・」
「「却下だ馬鹿もん」」
飄々とした感じで尋ねたのがおおなみ。それに戸惑ったのがさざなみでさざなみを援護したのがたかなみときりしまだ。
おおなみ「いいじゃん。減るもんじゃないし」
たかなみ「移籍させる手間暇がその分増える。そして、訓練の第三から書類の第四に回されて耐え切れるか?。
私は耐えられん。大体、お前の後釜はどうするつもりだ。
過去の改変でもごたごたが起きてそのしわ寄せが移籍しなかった艦によって着て散々な目に遭っていたじゃないか。そもそもが私たちの独断で艦を異動させたら戦力が偏るだろうし、それ以前にどうやって動かす?。全く。お前はいつもいつも―――――」
おおなみ「だぁー、分かりました分かりました。移籍はしませんッ!」
きりしま「いや、遠慮はするな。たっぷりと我々の仕事を体験してくれたまえ」
仲がよろしい姉妹と艦魂達で。
って、巻波はどこにいるんだ?。さっきまでそこでカレーを食べていたのに。しかも残している。宴会でもめったなことでは残さないはずだが。
「ねぇねぇ、兄ちゃん。護衛艦にどれくらい乗ってるの?」
巻波「もう少しで一年経つね」
巻波と幼女の声が聞こえたのでそちらの方を見るとむこうで内火艇の艇魂たちと会話にいそしんでいる。結構な人数だ。
「シウスの操作やってるって聞いたよ」
巻波「僕のやってるのは装弾と点検」
「ほぇ~」
その他にも様々な艇魂に懐かれている。
中々もてているではないか。まぁ、羨ましいかと言われれば羨ましくないが。
まきなみ「あはは、巻波さんは何か艇魂に懐かれやすい体質なんでしょうね」
「やっぱ言霊的な何かが働いているんじゃない? ま、こっちは艇魂たちを気にせずに会話できるからいいけど」
微笑みながら巻波の様子を見ながらグラスに注がれた日本酒を飲むまきなみ。それに声をかける艦魂。
この子もまきなみと同じく、酒の入ったグラスを持っている。これが見た目が大人だったら子供を見守る保護者に見えるんだがな。
すずなみ「あ、自己紹介がまだだったね。私はすずなみ。まきなみ姉さんの妹で同僚よ」
清水「ご丁寧にどうも。俺はまきなみの甲板要員の清水良太三曹だ」
すずなみとの自己紹介を終えた俺は酒を飲みながらまきなみの宴会時の艇魂の様子を聞く。
まきなみ「ふだんはそれぞれの艦魂に引っ付いて食べ物やジュースを飲むか艇魂同士で話すだけで人になつくのはめったにないんですよ。あ、これ飲みます?」
清水「ああ。お願いするよ。やっぱまきなみと音が同じだから言霊的な何かが発動してああなったのか?」
そうかもしれませんねぇ。と言いながらまきなみは人殺しとかかれた銘柄から酷くやばそうな感じのする日本酒をグラスに注ぐ。しかし、これで、二瓶めなんだが全然酔わない。俺も注がれたお酒を飲む。
…物騒な銘柄の割には結構美味いな
ん? 艇魂と戯れている巻波を艇魂が離れたところからじっと見つめている。何故だか頬は赤くなっており手に持っているのは酒瓶…………って何飲ませてんだよ!? いや、艇魂だから問題ない……のか?
とてとてと巻波に近づきいて行く。何をするつもりだ?
「ねぇねぇ、お兄ちゃん」
巻波「ん? どうs…ムグ!?」
清水「ブホォア!?」
あの艇魂キスしおった。キスしおったで!! この場合は巻波はどうなる?。無罪か? いや、それとも理不尽に有罪か。どちらにしろ出世は絶望的であろう。
「えへへ。キスしちゃった」
顔を赤らめながら言う少女。いや、顔が赤いのは酔いのせいかもしれない。と、そこにマユが出てきた公叫ぶ
「ダメだよ!。巻波さんはまきなみ姉さまの恋人よ!」
「ブフゥ!?」
こんどはまきなみが吹いた。すずなみは顔をうつむかせて肩を震わせている。
清水「巻波。二股はだめだぞー」
巻波「いや、二股も何も付き合ってすらいないんだけど・・・」
このキスを見ていた人や艦魂からの反応はロリコンやれ、色男やれ、と様々な野次が飛んでくる。
巻波からは救援を求める視線を送られるもこの状況を楽しむ俺はこれを華麗にスルーする。
まきなみ「うぅ。はずかしいです」
まきなみの方にも視線が集中している。視線を集中されるのには慣れていないらしい。
「キスをしたようだな。刀で斬る」
すずなみ「こ、こんごうさん!?」
鋭い声が聞こえてたと同時に、竹刀を持った艦魂が現れる。訓練時にお世話になった教官以上の怒気を出しながら・・・
巻波「待ってください。あなたは誰ですか?」
こんごう「私の名はこんごう。護衛艦こんごうの艦魂だ。私の艇魂が接吻をしたようだな」
巻波「…まぁ、そうなりますね」
こんごう「私の艇魂にふさわしい男か、試させてもらおう」
巻波「えっ?」
竹刀を構えて徐々に巻波を追い詰めるこんごう。その頬はどこか赤く染まってるような…
おおなみ「あちゃ~。あれ酔っ払ってるよ」
まきなみ「こんごうさんは酔っ払うと過保護で過激な人になりますからね」
みょうこう「普段は厳しいが、頼れる姉御みたいな性格をしていると言うのに」
お酒の力はここまですごいのか。お、巻波が後ろに走り出した。こんごうはそれを凄まじい速さで追いかけて…
こんごう「セイッ!」
バシィ! と竹刀が命中した音がし、巻波は倒れた。そして、そのまま気絶した。
気絶した巻波に近づいたこんごうは巻波を背負いこう言った
こんごう「私とこの者は少し出る」
そう言い残して、こんごうは巻波と一緒にどこかに転移した。
そして、周りは巻波がキスをする前の空気に戻った。
すずなみ「無茶しやがって」
まきなみ「巻波三曹。幸運を」
そう言ってこんごうが転移したあたりに敬礼する二人。俺も二人と一緒に敬礼する。
願わくば、無事に戻ってくるように…
☆
宴会終了後に巻波とこんごうは戻ってきた。巻波は身体的、精神的に変化はないと思ったが、後に天白の本気の攻撃を軽々と避けていたことに驚愕することになるとは、まだ知る由もなかった。
軍艦行進曲がなっていないという突っ込みは無しの方向で。
さぁて。このスランプを何とかしないとやばい。
それでは、次回もお楽しみに