第十五話「宣言」
永田町
8月5日
7:17、執務室
<霧本雄一郎内閣官房長官>
霧本「吉月のやつ遅いな。」
現在シベリア共和国に関連する報告書を纏め上げ、
仕事を終えたときにいつも飲んでいるラムネを吉月に買いに行かせている。
秘書がいてほんとよかった。
別に仕事をさせているだけであって決してパシりにしているわけではない。
ただ・・・・
霧本「いくらなんでも遅すぎやしないか?。」
俺がラムネを頼んで40分。未だに戻ってこないというのはおかしい。
少なくともここの近くでラムネは買えるはずだし、店からも15分とそんなに遠くない。何が起きた?。
と、一人で逡巡しているとドアがバン!と勢いよく開いた。
吉月「霧本さん!大変です!。」
霧本「遅いぞ。何やってたんだ。」
何事もなく無事に戻ってきたのはいいが、ラムネはどうした?。
まさか売り切れ程度でこんなにあせっているのか?。
そんな推測は吉月の言葉で吹き飛んだ。
吉月「海上保安庁と海上自衛軍がシベリアと交戦状態になりました!。」
霧本「何だと!?。」
7:25
内閣閣議室。
浅尾「不味いことになったな。」
シベリア国境警備隊と海上保安庁+海上自衛軍の交戦結果を見ながら顔をしかめる麻生さん。
交戦結果は巡視船かりばが大破、くなしりとさろまが撃沈。巡視艇きたぐもが爆沈。
ミサイル艇ちどりとからすが中破するという結果になった。
シベリア国境警備隊のほうは警備艦二隻、警備艇四隻のうち警備艦一隻中破、警備艇一隻撃沈しただけだという。・・・・・・根室海上保安部所属の船はほとんど行動不能だな。
霧本「いくらなんでもこの被害は無いのでは?。ミサイル艇があるんですし。警備艦も二、三隻沈んでてもおかしくないでしょうに。」
平間「いや、どうやら妨害電波のようなものが出たらしくミサイルをことごとく回避させられたらしい。
巡視船とミサイル艇の砲撃でどうにかできた感じだな。」
・・・・・・ひょっとして向こうはやる気満々だったのか?。
梅本「これが向こう側の言い分です。」
梅本外相がそういって書類が運ばれてくる。シベリアの言い分は簡略化すれば、
日本国籍の漁船三隻がわが国の経済水域内で密漁をしていたので停船命令を出したが、従わずに逃走しようとしたので攻撃した。
しかし、日本の沿岸警備隊と海軍が漁船を守るように行動したためこのようなことが起きた。我が国の主権を侵した日本に速やかな謝罪と賠償を要求する。
と言うものだ。
新田「そしてこれが根室に帰還した第三福栄丸の証言です。」
新田領土問題対策大臣が第三福栄丸の証言が書かれた書類を見せる。
書類には日本の経済水域内で停船命令を受けた後にいきなり攻撃を受けたと書いてあった。
第三福栄丸のGPSの記録も日本の経済水域内からギリギリ出ていないことを示している。
今泉「これは・・・・。」
城井「見事に食い違っているな。」
梅本外相が溜め息をついている。これは骨が折れそうな交渉になりそうだな。
矢部「ミサイル艇と根室海上保安部の船は、どのくらいで復帰できますか?。」
平間「ミサイル艇は三週間で復帰可能です。」
永津「巡視船は今年中には無理でしょう。少なくとも一年以上は掛かるかと。」
矢部「そうですか。」
浅尾「やはり、巡視船の武装も強化すべきだったか。」
浅尾さんがそんなことを呟く。
今泉「まぁ、後悔先に立たずというわけですし。いまさらそんなことを言っても始まりませんよ。」
浅尾「そうだな。皆、これは憲法改正以来初めての危機だ。もし今までのような対応をすれば確実に周辺諸国に舐められる。そこで準有事体制を発令しようと思うしようと思う。賛成の者は立ってくれ。」
この多数決の結果は言うまでもなく全員賛成となった。
浅尾「本時刻を持って準有事体制を発令する。」
「「「分かりました。」」」
浅尾さんの指示に全員が返事をする。
戦後初めて日本が戦争を辞さないことを宣言した瞬間でもあった。
さて、これから忙しくなるぞ。
日本が攻撃された時に内閣の国務大臣が集まるところって内閣閣議室であっているんでしょうか?。あっていなかったら感想で教えてください。
追記6/15
いくらミサイル艇や巡視船を破壊されても武力攻撃事態になるのはおかしい。かといって武力攻撃予測事態になるのもおかしいと考え、新しい単語を作り改訂しました。因みに準有事体制の解説は次回になります。