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極東戦記  作者: ATD-X
2.北方紛争編
17/66

第十四話「苦闘」

初の海戦シーン。あまり自身がありません。

海上保安庁の登場するところから三人称になります。

8月5日

午前3:39

東経145°36’47’70’ 北緯43°30’31’65’

<さかえ漁船団、漁船第九大栄丸乗組員、山田やまだたくみ>


東の空がうっすらと明るくなった頃、俺たちはこの海域で網引き漁をしていた。


「お~い、引っ張れ~!。」


掛け声とともに網を引っ張る。

この栄漁船団は根室港から出航しており、第三福栄丸だいさんふくえいまる第七海栄丸だいななかいえいまる、俺が乗っている第九大栄丸だいきゅうたいえいまるからなっている。第三福栄丸は進水して既に30年以上経っている老漁船だ。安定性があり、頑丈ではあるが老朽化により性能にガタが来ている。第七海栄丸は進水してから13年経っており、エンジン馬力が非常に強い。船長曰く根室港で最も速いとの事。第九大栄丸は去年進水したばかりの漁船で、最新鋭のソナーや無線などを搭載しており三隻の中では電子面で最も進んでいる。三隻とも船名に栄と言う文字がついているので漁師仲間からは栄漁船団と呼ばれている。

漁船の上で漁師達が網を引いている。俺たちの獲物はスルメイカとホッケだ。


「おぉ、こいつぁ大漁だ!。」


「ハハ、雑魚もかかっていやがる。」


「おい、結構あるぞ。転覆しないよな?。」


どうやら大漁のようで仲間も他の船の乗組員も喜んでいる。


「よーし、この調子でどんどんいくぞ。」


「応!。」


第三福栄丸の号令に返事をし漁に精を出す栄漁船団の面々。

漁に精を出すこと3時間。そろそろ漁も佳境に差し掛かったころにそれは起きた。


「お、露助の船が居るぞ。」


不意に第七海栄丸の乗組員の一人が声を上げた。

その声に反応し声を出した漁師が指をさす方向に視線を向ける。

そこにはシベリア国境警備隊の旗を掲げた警備艇がいた。

しかしそこに疑問を持つものは居ない。この海域はちょうどロシアと日本の境目でシベリア共和国が独立を宣言する前からロシア国境警備軍の警備艇が出現していたのだ。シベリア共和国国境警備隊の船がこの海域に来ても誰も気にしないのだ。

だがこの日は違った。警備艇から警告が飛んできたのだ。


「ここはわが国の排他的経済水域内だ。直ちに停船し、積荷を見せろ。」


これを受けた漁船団の船員は首をかしげた。


(ここは日本の経済水域内にはず。)


そういう考え頭の中に浮かんでいた。

だが、突然警備艇が銃撃を仕掛けてきた。



ヴォーーーーーーーーー



銃声がつながって聞こえるほどの連射速度で弾丸をばら撒いてくる



「うぉ!?。」


「撃ってきやがった!。」


「逃げろ!。」


舵を切り、逃げようとするが、漁船と警備艇じゃ速力が違いすぎるので逃げられない。


「海上保安庁に連絡しろ!。」


「了解。」


船長の命令であわてて海上保安庁に連絡をする。

だが次の瞬間、俺の命は俺のいた場所ごと銃撃により粉々になった。







6:42

海上保安庁第一管区、根室海上保安部所属。巡視艇きたぐも


第九大栄丸の連絡は海上保安庁根室海上保安部に届き近くを航海していた海上保安庁の巡視艇きたぐもが現場に急行することになった。根室にあるほかの巡視船、巡視艇は出港準備で慌ただしく動いている。


木本三等海上保安士「おい、長雲。現場が見えたぞ。」


長雲三等海上保安士「こいつはひでぇな、木本・・・。」


あたりには漁船の残骸や地や死体が浮いていた。

そしてたった今発射された銃撃で漁船が一隻沈みもう一隻も逃げ切れそうに無かった。

この光景に乗組員は絶句した。




ブリッジ


この光景は艦橋からも見えていた。


熊井三等海上保安士「う、ひ、酷すぎる。」


今井二等海上保安士「艇長!。」


高野三等海上保安正「判ってる!。あの漁船のこの海域からの離脱を援護せよ。発砲を許可する。どこを狙っても構わん。」


今井「了解。」


有川二等海上保安士「だ、大丈夫なんですか!?。」


この命令に一部乗組員が動揺した。


高野「全責任は私が負う。」


有川「・・・了解しました。」


今井が艇内に無線で指示を出す。


今井「総員、配置に着け。あの漁船を援護する!。」




甲板


木本「おい、聞いたか。」


木本が長雲に問う。


長雲「あぁ、聞いたぜ。でも20ミリ相手に勝てるか?。」


木本「さぁな。」


木本は全速力で走り、弾薬を装填し配置に着いた。因みに木本の配置は機関砲の操作、長雲はレーダー手である。


木本「射撃準備よし!。」


機関砲の照準をシベリアの警備艇に合わせる。

因みにきたぐもの機関砲はGAU-19ガトリング。遠隔操作式で口径12.7ミリの3銃身ガトリングである。





ブリッジ


今井「撃て!。」


ブリッジに今井の射撃命令が出される。


バーーーーーーー


あまりの発射速度に銃声がつながって聞こえる。

どうやら警備艇の気をそらすことに成功したようだ。


有川「おい、木本。警備艇を撃ってもいいぞ。」


木本「え。」


有川「もちろん警告を無視したらな。」


バーーーーーーー。

ちゅんちゅんちゅん。


銃声がしたと思ったらきたぐもの後ろで銃弾が水面に当たり跳ねた。


木本「・・・・・・どうやらその必要はなさそうですね。」


有川「ああ。正当防衛で言い訳できる。やっちまえ。」


バーーーーーーーーー。


長雲「命中を確認。ダメージなし。」


高野「やはりか・・・・。」


実は海上保安庁の巡視艇の武装ではロシアの警備艇相手では勝てないという意見があったのだ。

ロシア国境警備軍は100ミリクラスの艦載砲や艦対空ミサイル、対潜ロケットなどを搭載。

警備艇クラスでも20ミリ機関砲を標準装備しているのだ。

対して海上保安庁は最大でも精々40ミリクラスの機関砲なのだ。

だが、ロシアと事を構えるつもりのない現政権は海上保安庁の武装強化をしなかった。その弊害が今この場に出ていた。


有川「とにかく撃て!。漁船が退避する時間を稼ぐんだ!。」


木本「了解!。」


だが、撃っても撃ってもあまりダメージは見られない。

そしてついに命中弾が出た。


ガンガンガン


今井「命中したぞ!。ダメージは!?。」


熊井「右舷機関室にに浸水を確認!。」


今井「急いで塞げ!。」


熊井「了解!。」



しかし漁船を逃がすことには成功した。

だがこのままでは機関室が一部損傷、逃げることができなくなった。

そして弾薬も残りあとわずか。

このままでは沈むのは時間の問題であった。



高野「至近距離に近づき機関砲による攻撃を行え。」


有川「艇長!?。」


突然の命令に振り向く高野のほうへ振り向く有川。


高野「このままではジリ貧。それならば打って出たほうがいい。合図は俺が行う。」


有川「・・・了解。」



持てる力を振り絞り全速で警備艇に近づくきたぐも。


有川「距離1500メートル!。」


高野「まだだ。」



その意図を知ってかしらずか、機関砲をきたぐもに向けて撃つ警備艇。



有川「距離1250メートル!。」


高野「まだだ!。」



徐々に20ミリの弾丸が当たりぼろぼろになっていくきたぐも。



有川「距離1000メートル!。」


高野「まだ撃つな!。」



木本の引き金を握る手が汗でべっとりと濡れる。



有川「距離850メートル!。」


木本「もう無理だ!。」


高野「もう少しだ!。」



木本の悲痛な叫び声が響く。



有川「距離500メートル!。」


高野「ブリッジを狙って撃て!!。」



バーーーーーーーーー。


三秒だけの連射であったがほとんどが警備艇のブリッジを捕らえ全弾命中した。

命中した弾丸によりブリッジは破壊され、警備艇は沈黙した。


長雲「レーダーに感あり。巡視船3、小型船舶2。味方です。

小型船舶は海自のミサイル艇と思われます」


長雲の声がブリッジに響く。

この声によりブリッジの緊張した空気が一気に離散した。


木本「だ、誰か助けて。腰が抜けた。」


熊井「だ、大丈夫か。」


腰の抜けた木本に熊井が肩を貸す。


有川「くるのが遅せぇよ」


有川がぼやく。


高野「まぁ、そう言うな。全員救命艇を降ろせ。生存sy「四十度の方向から本艇に向かってくる飛翔体あり!。ミサイルです!。」何だと!!。」


次の瞬間きたぐもは光に包まれた。




違和感はありませんでしたか?。

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