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追放された俺、辺境で畑を耕していただけなのに、いつの間にか都市ができていた件 ~売らない・奪わない・支配しない、静かな開拓村づくり~  作者: 影山クロウ


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第36話 残る場所

 季節が、一つ進んだ。


 畑は、緑を深めている。

 干し葉の棚は、無理なく回り続けていた。

 人の数は、多くも少なくもない。


 変わらない。

 だが、同じでもない。


 境界の杭は、そのまま立っている。

 越える者は、声をかける。

 入る者は、用件を告げる。


 それが、当たり前になっていた。


 昼前、隣村の男がやってくる。

「今年は、量を減らす」

 簡単な報告。


「理由は」

 ミラが訊く。


「急がない方が、続くと分かった」


 短い言葉。

 だが、それで十分だった。


 かつて去った三人の村も、同じやり方をしているという。

 価格を決めない。

 量を守る。

 顔の見える相手とだけ交わす。


 名はない。

 制度にもなっていない。


 それでも、広がっている。


 夕方、セリスが最後の確認に訪れた。

 書類は薄い。

「安定していますね」

「ええ」

 ミラは頷く。


「法にする予定は?」

 セリスが訊く。


「ありません」

 レオンが答えた。

「形が固まれば、壊れる」


 セリスは、静かに笑った。

「記録は残します」

「残してください」

 レオンは言う。

「消えないように」


 夜、焚き火の前に、全員が集まる。


 特別な日ではない。

 祝うこともない。


 イオルが、ぽつりと呟いた。

「都市には、ならないんですね」


 レオンは、火を見つめる。

「ならない」


「でも」

 イオルは続ける。

「強いです」


 レオンは、少し考えた。


「強くはない」

 静かな否定。

「壊れにくいだけだ」


 風が、畑を揺らす。


 ここは、王の城ではない。

 市場の中心でもない。

 戦場にもならなかった。


 それでも、人は戻ってくる。

 迷えば、ここを思い出す。


 奪わない。

 縛らない。

 急がない。


 その形が、残った。


 レオンは、最後に一度だけ村を見渡した。


 何も誇るものはない。

 だが、何も悔いるものもない。


 この村は、強くならなかった。

 だから、壊れなかった。


 火が静かに落ち、

 夜が、ゆっくりと広がっていく。


 物語は、終わらない。

 ただ――


 **続いていく。**

ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。


この物語は、誰かを倒す話でも、頂点に立つ話でもありませんでした。

追放された一人の男が、畑を耕し、量を数え、線を引き、そして「選ばない」という選択を積み重ねていく話です。


正直に言えば、派手な展開はいくらでも書けました。

戦争も、陰謀も、急成長も。

けれどこの物語で描きたかったのは、そうした“強さ”ではありません。


強くならないこと。

急がないこと。

奪わないこと。


それでも続く場所は作れるのか――

その問いを、最後まで書き切りたかったのです。


レオンは特別な能力を持っていません。

ただ、判断から逃げなかっただけです。

そして、その判断が「制度」ではなく「在り方」として残ることを願いました。


この村には大きな勝利はありません。

ですが、大きな敗北もありません。

それが、この物語の結論です。


もし読んでくださったあなたが、


・急がなくてもいい

・勝たなくてもいい

・それでも続いていけばいい


そんなふうに、ほんの少しでも思えたなら、作者としてこれ以上の喜びはありません。


最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


――また、どこかの畑で。

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