表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された俺、辺境で畑を耕していただけなのに、いつの間にか都市ができていた件 ~売らない・奪わない・支配しない、静かな開拓村づくり~  作者: 影山クロウ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/36

第34話 使わなかった責任

 翌朝、広場の空気は重かった。


 被害はない。

 怪我人もいない。

 だが、満足もなかった。


 若者の一人が、木剣を握ったまま立っている。

「追えば、捕まえられました」

 声は震えていない。

 怒りでもない。

 ただ、納得がない。


 ガルドは、黙ってその横に立つ。

「逃げた敵は、戻る」

 短い言葉。


 全員の視線が、レオンに集まる。


「戻るかもしれない」

 レオンは認めた。

「だが、追えば、確実に“増える”」


「増えたら、叩けばいい」

 若者が言う。


「叩けば」

 ミラが静かに口を挟む。

「次は、こちらが“脅威”になります」


 沈黙。


 ガルドが、低く言う。

「それでも、守れる」


「何を」

 レオンは問い返す。


 言葉が詰まる。


「畑か」

 レオンは続ける。

「人か」

「それとも、安心か」


 誰も、すぐには答えられない。


「守るとは」

 レオンはゆっくり言う。

「勝つことじゃない」

「壊さないことだ」


 昨日と同じ言葉。

 だが、今日は違う重みがある。


「壊すとは」

 彼は続ける。

「相手だけじゃない」

「自分たちの形も、だ」


 ガルドは、視線を落とした。

 理解している。

 だが、飲み込めない。


「……後悔するぞ」

 彼は静かに言う。

「守れるのに、守らなかった後悔は、長い」


「使えば」

 レオンは返す。

「戻せない後悔が残る」


 沈黙が、広場を包む。


 やがて、若者の一人が木剣を下ろした。

「……畑、行きます」


 次々に、持ち場へ戻る。


 ガルドは、最後まで動かなかった。

「俺は」

 彼は低く言う。

「力を否定しない」


「俺もだ」

 レオンは答える。

「だが、中心には置かない」


 風が、畑を揺らす。


 守るための力。

 力を持たない覚悟。


 どちらも、正しい。


 だからこそ、重い。


 ガルドは、ゆっくりと槍を地面に突き立てた。

「……俺は、もう少し考える」


「ここにいろ」

 レオンは言った。

「考える場所だ」


 その日の訓練は、なかった。


 夜、焚き火のそばで、イオルが呟く。

「……怖いですね」

「何がだ」

「選ばなかったことが」


 レオンは、火を見つめる。

「選ばなかった責任は、消えない」

「だが」

「選んだ責任も、消えない」


 火が、小さく弾ける。


 村は、戦わなかった。

 だから平和だった、とは言えない。


 戦わなかった。

 その責任を、抱えたまま。


 それでも、壊れなかった。


 夜は、静かだった。

 だが、その静けさは、

 昨日よりも重かった。

本話もお読みいただき、ありがとうございました!


少しでも続きが気になる、と感じていただけましたら、

ブックマーク や 評価 をお願いします。


応援が励みになります!


これからもどうぞよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ