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追放された俺、辺境で畑を耕していただけなのに、いつの間にか都市ができていた件 ~売らない・奪わない・支配しない、静かな開拓村づくり~  作者: 影山クロウ


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第27話 管理される善意

 仮登録が完了してから、村は何も変わらなかった。


 少なくとも、見た目は。


 畑は畑のまま。

 棚は棚のまま。

 人の動きも、昨日と同じだ。


 だが、レオンははっきりと感じていた。

 ――見られている。


「数字が、増えました」

 ミラが帳面を閉じながら言う。

「保存量ではありません。項目です」


 レオンは、苦笑した。

「監査用か」

「ええ」


 登録番号。

 物納記録。

 出入りの履歴。


 どれも、村の運営に直接必要なものではない。

 だが、「説明するため」には必要だ。


「面倒ですね」

 イオルが正直に言う。


「面倒だ」

 レオンは否定しない。

「だが、拒めば“危険”になる」


 昼前、セリスが再び姿を現した。

 今回は一人だ。書類筒は、前よりも薄い。


「経過確認です」

 形式的な言葉。

 だが、視線は鋭い。


 焚き火のそばで、帳面を広げる。


「供給量は、抑えられている」

「独占契約は、なし」

「価格は……相変わらず空欄」


 セリスは、ペン先でその空白を叩いた。

「不安になりませんか」

「なります」

 レオンは即答した。

「だから、決めない」


 セリスは、わずかに首を傾げた。

「決めないことも、意思表示ですか」

「ええ」


 ミラが、静かに補足する。

「価格を決めると、その数字が“命令”になります」

「我々は、命令したくない」


 セリスは、しばらく黙っていた。

 帳面を読み、村を見て、人を見る。


「……善意ですね」

 彼女は言った。

「ここで行われているのは」


「善意ではない」

 レオンは首を振る。

「判断です」


「違いは」

「善意は、管理される」

 レオンは淡々と言う。

「判断は、責任を伴う」


 その言葉に、セリスの目がわずかに揺れた。


「管理される善意は」

 彼女は続けた。

「制度に組み込まれます」

「そして」

「制度は、人を守る」


「同時に」

 ミラが言う。

「選択肢を削ります」


 沈黙。

 これは、対立ではない。

 **立場の違い**だ。


「……あなたたちは」

 セリスは息を吐く。

「とても危うい」


「ええ」

 レオンは頷く。

「だから、残っています」


 午後、セリスは村を一周した。

 誰にも命令しない。

 だが、誰も無視しない。


 去り際、彼女は一言だけ残した。

「次は、私一人では来ません」

「理解しています」

 レオンは答えた。


 人影が消えたあと、エルナが呟く。

「……怒ってませんでしたよね」

「怒ってはいない」

 バルドが言う。

「だが、警戒している」


 ミラが、帳面に新しい項目を書き足す。


 ――説明用記録、増。

 ――外部監査、定期化。


「増えましたね」

 イオルが言う。

「責任が」

「ああ」

 レオンは答える。

「管理されないために、管理する量が」


 夜、火を囲みながら、レオンは考える。


 善意は、放っておけば称賛される。

 だが、称賛は、いずれ管理に変わる。


 ここは、善意の場所ではない。

 判断の場所だ。


 判断には、常に責任が伴う。

 だからこそ、誰かに預けない。


 村は今、

 **「守られる対象」から、「説明を求められる存在」**へ変わった。


 それは、成長だ。

 だが、後戻りできない成長でもあった。


 レオンは、静かに火を見つめ続けていた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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