表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第四部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/97

79.セヴァストポリ攻略戦(12)

電子戦を展開していくライジングアースでしたが……

 周囲では、レーザーと爆音が響いている。

 しかし、ライジングアースのコックピットのなかは静寂が支配していた。

 その沈黙を破るように……斎賀が思念通信で告げる。

(ミューナイト。敵ビッグマン……ヴォルグラスのコックピットをハックしろ。それで、操縦者の意図を解析する)

(ハッキングはあなたがプロだろう? わたしがやっても意味がないんじゃ……)

(俺にはAI脳のことはわからない。お前が、ヴォルガの心理構造を把握するんだ!)

 斎賀は、強い念で思考を伝えた。

 それが、ミューナイトにも伝わる。

(わかった)


 ミューナイトは右手の小指をコムナイト・グリッドの挿入したまま、左手で高速でコンソールを操作している。

 ネオス……と言っても、その判断にはコンマ数秒から数秒かかる。

 斎賀は、そのタイムラグをチャンスだと思った。

 今は、味方のイングレスαやエル・グレコを救わなければいけないのである。

 敵は、どうやらメインカメラを粉砕されているようだ?

 それなら、こちらにも勝ち目はある。

(ミューナイト、敵の行動パターンを分析できたか?)

(やっている……できた。敵は、全方位レーザーをAI制御に切り替えたところ。これだと、ネオスのAI脳による攻撃の演算は遅くなる)

(よし! それなら、こちらにとっては有利だな!)

 斎賀は、確信に満ちた調子でミューナイトに伝えた。

 しかし、もちろん慎重さを失ってはいない。

 そのまま、インターセプト・サブルーチンをヴォルグラスのコックピットに向かって送る。


 ──


 ヴォルグラスのコックピットでは、ヴォルガが動揺していた。

「なんと?! ヴォルグラスが俺の言う通りに行動しない! 機体制御サブがクラッキングされているのか?!」

 こんな攻撃は今までなかった。

 いや、そうではなかったのかもしれないが、このようなぎりぎりの戦闘状況で機体がクラッキングされることはなかった。

 AI演算が停止されれば、ヴォルグラスは即座の撃破の危機も招きかねないのだ。

 ヴォルガは、コンソールを操作して、AIシステムが正常に機能するようにコマンドを打ち込む。

 それが、敵……統合戦線のビッグマン(ロボ)の挙動から数秒遅れている。

 敵にロケットパンチを打ち込もうとするが、それよりコンマ数秒早く「Danger」の警告がコンソールに表示される。

 もし、ロケットパンチを発射すれば、それは自分の機体に向かって突き進んでくる。

 ヴォルガは焦った。

 メイン・カメラを粉砕された以上に、これは危機的な状況だった。

 さらに、それを後押しするかのように、敵からの通信が入ってくる。


『警告。こちらにはユーマナイズという武装がある。これは、パイロットの命を奪いかねない攻撃である。こちらは、その攻撃の準備中』


「なんだと? 敵がユーマナイズを使う? あの、ムルマンスクで使われた攻撃か?」

 ヴォルグラスはうなった。

 洗脳兵器の恐ろしさは、ヴォルガにも想像できた。

 実際に体験したことはないが、報告レポートからすれば、それは「抵抗すれば死を招く」という攻撃である。

 しかし……ここで敵に屈することをヴォルガは良しとしなかった。

 ヴォルグラスが統合戦線側に鹵獲されてしまえば、それは敵に対して決定的に有利なカードを与えることになる。

 ヴォルガは、「うううううん」とうなり、ヴォルグラスを空中に急上昇させた。

 飛行形態に変形し、敵から逃れようとする……

 しかし、そこにさらにイングレスαからのリードル・ワイヤが射出された。

 シエスタの機体からである。

 シエスタはその時、「自分の命は無にしてもよい」と本気で思っていた。

 ──ヴォルグラスの機体そのものがクラッキングされて、挙動が不規則になる。

 ヴォルガは、「おおおおおお!」と思った。


 ──


「ミューナイト、シエスタ機が近づいている。その行動を阻害しないように、さらにヴォルグラスにクラッキング・コードを送信。完全に敵機を沈黙させる!」

 と、斎賀は思わず思念通信を忘れて叫んだ。

 両耳を痛そうにしている、ミューナイト。


(ひとつひとつの攻撃はわずかでも、それが積み重なれば、敵に決定的なダメージを与えることができるんだ!)

 と、斎賀は思っていた。

 ユーマナイズの効力を無際限に肯定していたわけでないのである。

 しかし、その奥底の思いはミューナイトには伝わらない。

 斎賀は焦った。

 今、「人間関数」は何パーセントになるのだろうか?

 斎賀は、思念通信でミューナイトに報告を求める。

 73%。

 南極戦線で出したのよりも低い数値だ……

 斎賀は瞬間、不安になる。

 このまま「ユーマナイズ」を発動してしまってもいいのか……?

 斎賀は、味方に多大な損害を与えることを恐れた。

 その一瞬の躊躇をぬって、人型に戻ったヴォルグラスがふたたびロケットパンチを射出してくる。

 その攻撃に対して、ミューナイトは瞬時の判断で頭部バリアを作動させた。

 振動し、ふるえるヴォルグラスのロケットパンチ。

 これで、つかの間の猶予が生まれた。

 斎賀は、再びユーマナイズを発動するタイミングを伺う。

 味方が攻撃範囲にいないとき……と、斎賀は思うのだったが、ユーマナイズがいったいどれくらいの範囲に作用するものであるのかは、斎賀も把握していない。

 再び、恐れが斎賀の感情をとらえる。

 その心理の動きを、ミューナイトも感応によって感じ取っているのだった……


 しかし、斎賀の不安な思いは、ミューナイトの一言によってさらに増幅されることになった……

(サイガ。ライジングアースの攻撃コマンドが、ユーマナイズからユー・フォーチューンに切り替わっている。これは、新しい武装なのか?)

 ??? 斎賀にもなんのことなのかわからなかった。

 いそいで、HUDヘッドアップ・ディスプレイ内で検索をかけてみるが……

 たしかに。「HYU-MANIZE」として表示されていた戦闘コマンドが、「YOU-FORTUNE」に切り替わっている。

 斎賀は焦った。

(ユー・フォーチューン? まさか自爆覚悟の攻撃じゃないんだろうな……エヴァンゲリオンじゃないんだぜ??!)

 斎賀が思ったのは、ライジングアースが敵・味方を含めて、すべてを「不本意なやり方」で救済する、ということだった。

「ミューナイト! ただちに戦闘行動を中止しろ! ユー・フォーチューンを発動するな!?」

「なんで、サイガ? この子は、みんなを救いたがっているんだよ?」

「ユー・フォーチューンは、敵も味方も葬り去る危険性がある。魂をだ!」

「そんな機能……ライジングアースにはないよ。彼を信じて、サイガ!」

「そんな危険は犯せない!」

 斎賀もミューナイトも、思念通信を忘れて叫んでいた。

 コックピット内が一気に騒音に満たされる。

 彼らの言葉以外も、その場ではライジングアースの「言葉」としてざわめいているようだった。


 ──


「ん? 敵の行動が止まった。これはチャンスかな?」

 ヴォルグラスのコックピット内で、ヴォルガがつぶやく。

 すかさず、ロケットパンチを射出。

 それは、阻害されることもなくライジングアースの胸部にあたった。

 轟音を立てて、へこむ胸部ユニット。

「なるほどねえ……。敵さんも迷い中か……」

 ヴォルガはにやりと笑って、舌なめずりをした。

「戦闘では、一瞬の躊躇もしてはいけないって、教えてあげますよ?」

 不敵なセリフだった。

ヴォルグラスとの戦いはなおも続きます……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ