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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第四部

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77/96

77.セヴァストポリ攻略戦(10)

戦艦と戦うヴォルグラスです。

 シエスタは超音速でイングレスαを駆っていた。

 目標はセヴァストポリ郊外。

 バグダッドから約40分間の飛行である……


 しかし、それは一つの無線通信によって遮られた。

 それは、クリミア半島沖に展開している護衛艦プレトリアからのものだった。


『当艦隊は現在、敵ビッグマンの攻撃を受けている。統合戦線空軍の近傍にいる各機は、至急支援体制をとらえたし。繰り返す、当艦隊は現在、敵ビッグマンの攻撃を受けている。当艦は殴られている……』


(殴られている? なんだそれは……)

 と、シエスタは思った。

 しかし、それは正式な緊急支援要請だった。

 この緊急支援要請は、事前のあらゆる作戦にも優先される。

 戸惑いながらも、シエスタはまだ通じている無線に向かってこう告げる。


「作戦リーダーのシエスタだ。これよりチーム・アマリB班は、クリミア半島沖に展開している護衛艦プレトリア、および統合戦線セヴァストポリ遠征艦隊の支援へと向かう。いいか? 皆気を引き締めていけ?!」


 それにたいして、アマラ少尉、フィオリヒト少尉、ルウェリン・カマウ曹長、タビサ・エングロベ曹長から『ラジャー』の返信があった。こちらは、テキスト・メッセージによる応答である。

 シエスタ以下、チーム・アマリB班のイングレスα各機は、進路を若干西へと変更し、さらに高速で飛行する。


 ──


 ヴォルガは、統合戦線艦隊群の艦船と対峙していた。

 イングレスα他航空機には、全方位レーザーの効果があった。

 あったというより、ありすぎるほどだったと言って良い。

 ヴォルグラスがレーザーを放てば、一気に5~10機の航空機がその攻撃を受けて爆散した。

 まさに、ヴォルガ無双だったのである。


 しかし、艦船相手では勝手が違う。

 ジェマナイだけでなく、統合戦線やオーストラリア共和国の艦船も、量子フィールドによるバリアを展開することができる。

 そこにレーザーは効かないのだった。


 ために、ヴォルガはロケットパンチで統合戦線の艦隊を攻撃していった。

 まず、護衛艦アクスムの艦橋にむかってロケットパンチを放った。

 しかし、量子フィールドがあるために一度では効かない。


「やるねえ……。こちらのビッグマンがいくら強力とは言っても、戦艦相手ではやはり後手を取るか……」

 ヴォルガはコックピットのなかでつぶやいた。

 しかし、ヴォルグラスのロケットパンチは有線であるために、敵からのクラッキングを受けにくい。

 そのまま、パンチを100メートル後退させ、再び艦橋にむけて打ち込む。

 今度は量子フィールドを貫く。

 爆音を上げて、アクスムの艦橋が破壊された。

 艦載艇で脱出する兵士たち……

 彼らに攻撃することは、ヴォルガはなかった。

 ただ、「ふん」とコックピットのなかでうなってみせる。

「沈没させることは簡単だよ? でもね……僕の任務はそうじゃないんだ」

 不敵につぶやいた。

 そこへ、シエスタたちのイングレスαが迫っていることは、ヴォルガはまだ知らない。


 ──


「目視できた。ンドゥベ少尉、フィオリヒト少尉。聞こえているか……これから我々は、護衛艦アクスムの救援へと向かう」

「了解しました、アレーテ中尉」

 と、アマラ少尉から。

「アレーテ中尉。護衛艦アクスムはすでに無力化されているようです」

 とは、フィオリヒト少尉からだった。

 ネオスのAI脳では、艦内活動まで詳細にハックして知ることができる。

 高速度の演算で、すでにアクスムには戦闘能力がないことを把握する。

「なんだって? それでは、目標は変更となる。セヴァストポリ遠征艦隊の旗艦はムワタ・ヤムボだったな? 我々は、ムワタ・ヤムボ以下遠征艦隊の護衛を行う。いいか? 戦況に応じて柔軟に布陣せよ。ただし、必ず生き残れ!」

 シエスタは命じた。

 誰も死なせない、その心だけがシエスタの胸にあった。

 まずは、遠征艦隊をビッグマンの攻撃から遠ざけなければならない。

 攻撃しているのは、昨日のヴォルグラスかもしれない。

 とすると、厄介だ。

 パイロットのヴォルガは、ジェマナイのなかでも屈指の戦士として知られている。

 簡単なことで撤退はしないだろう。

 その難敵から、味方艦隊を守らなくてはいけないのだ。

(わたしは今日、守れるのか? 本当に守り切れるのか?)

 と、心のなかに呟く。

 シエスタはAAMを2発発射した。

 威嚇のためだ。

 1隻の護衛艦に近づいていたヴォルグラスが、ジェットを噴射してAAMから逃れる。

 すかさずロケットパンチを発射してくるヴォルグラス。

 しかし、このロケットパンチはシエスタにとっては経験済みだ。

 感覚で数メートルの間隙を躱すシエスタ。

 そのまま、上空へとイングレスαを加速させた。

(アマラ少尉たちはどうしている?)

 シエスタはコンソールを確認した。

 それぞれ、AAMやSTSMをヴォルグラスに撃ち込んでいる。

 乱戦だ。

 しかし、それを器用に躱しているヴォルグラス。

 ロケットパンチを収納して、接近戦に備えたようだった。

 ヴォルガは戦争を知らない。しかし、戦闘を知っているのである。

 と……ヴォルグラスは1隻の艦艇にむかってジャンプする。

 目標は──旗艦ムワタ・ヤムボだ。


 ──


 オバデレ准将はただ悠然と戦況を見つめていた。

 ムワタ・ヤムボ艦長のタファリ・ムレンガは、そのそばでやはり毅然として控えている。


「准将。次の攻撃はどうしますか? ……いや、次の防御はどうしますか?」

 ただ、ゆっくりと准将に尋ねる。

 部下たちの脱出の準備は整えている。

 艦橋には、准将と艦長以下、数名の兵士たちがいるだけだ。

 フルオートで、艦の防御機構が作動するように、すでにAI系統には打ち込んでいるのである。

 オバデレ准将の対応も、静かだった。

「イングレス部隊に任せる。ムワタ・ヤムボは沈まない」

 確信に満ちた声だった。

 その理由をタファリ・ムレンガは知らなかった……が、ただ「了解しました」とだけ答えた。


 ──


「ムワタ・ヤムボはどうしたんだ?! 反撃しないのか!」

 と、シエスタは叫んだ。

 ムワタ・ヤムボの量子フィールドにむかって、ヴォルグラスがロケットパンチを撃ち込んでいる。

 歪む空間。

 轟音とともに、海がざわめいた。

 高波が周囲の艦船を襲う。

 ムワタ・ヤムボから離れないヴォルグラス。

 この艦を、次の獲物、いや今回の獲物と決めているかのようだった……


 ──


「沈まないねえ……。量子フィールドが固いよ。統合戦線も、どうやら予算をかけているらしい」

 と、ヴォルグラスはつぶやいた。

 2発、3発とロケットパンチをムワタ・ヤムボに撃ち込む。

 しかし、甲板が多少損傷するだけで、本体にはダメージを与えられていない。

 ただ、ロケットパンチが当たるのにともなって、周囲の空間が歪んで甲高い音を立てる。

 そこへ、イングレス部隊のミサイルが飛び込んでくる。

 そのたびに、飛びのいて距離を取るヴォルグラス。

「いいねえ……。レーザーなら一発で終わりだけれど、パンチは攻撃が続くからいい。戦っているって実感する瞬間だね?」

 そう、うそぶいた。

 今も1機のイングレスαがヴォルグラスのわきをかすめる。

 と言って、どうということはないのだ。イングレスαのAAM程度であれば、ロケットパンチで防げる。ヴォルグラスの装甲は固い。

「もっと近づきますかねえ? ええ? どうします? シエスタ・アレーテさん?」

 ヴォルガは、シエスタのフルネームから素性までを知っていた。

統合戦線の情報はだいたいジェマナイに筒抜けです。

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