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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第四部

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69/96

69.セヴァストポリ攻略戦(2)

イングレス部隊の活躍です。

 いそいでレーダーを確認する。やはりチャフがまかれている。

 ローカル・ネットの通信速度から、距離を特定。

 ……どうやら、シエスタ機からは3マイルほど離れた位置にいるらしい。

(救援に向かうか? どうする?)

 シエスタは、祈りに近い気持ちで考えを巡らせた。


「いや、行く!」

 シエスタ・アレーテは決意もこめてつぶやいた。

 決死の圏内へと赴くのである。

 シエスタは、直感で機体を北東へと向けた。

 クリミア半島の内陸部へと向かう。

 そこには、たぶんワルシャワ基地から発進してきたイングレスαを迎えるための、ビッグマンが1体以上配置されている。

(わたしを、信じろ!)


 ショート・メッセージで、アマラ少尉以外の他メンバーへとメッセージを送る。

 この通信はジャミング下でも通じやすい……が、見落とされる危険性もある。

 雨足は激しくなってきた。

 視界もゆがむ。

 しかし、それは敵にとっても不利だということだ。シエスタは冷静に考える。

 第2世代のビッグマン、ヴェガに飛行能力はない。

 とすると、対空の迎撃態勢を整えて待機している確率が高い。

 そんなビッグマンの1体に、アマラ少尉は遭遇したのだ。

 今は……どのような状況なのか。


 森が続く。

 ヴェガは迷彩塗装だから、森にはなじむだろう。

 アマラ少尉がよく目視で発見したものだ。

 マッハ2から3で飛行しているイングレスαから、目標物を視認することは容易ではないのである。


 自分の武装は? とシエスタは考える。

 AAMとAGMを2発ずつ発射したから、残りはAAM4発だ。

 それと、STSMの残りは少ない。

 この装備で味方の援軍に向かうなど、正気の沙汰ではない。

 しかし、シエスタは味方を死なせたくはなかった。

「亡霊女神」というコールサインにも、彼女は芯から納得しているわけではないのである。

(せめて、「戦場の女神」……とかにね?)

 心のなかで思いながら、索敵を継続した。


 と、森のなかに火花が見える。

 高射砲か? あるいはビッグマンがミサイルを撃ったのか?

 ──後者のようだった。

 敵のジャミングがうまく行っていないのか、アマラ少尉との通信が回復する。

「こちら、アマラ・ンドゥベ少尉。現在、自分はAAMを撃ち尽くしている。敵ビッグマンと交戦中。なんとかしとめたい……」

(ちっ、無理はするなよ?)

 と、シエスタは思った。

 アマラ少尉は訓練のときから、僚機に先行しすぎる癖がある。

 それは「勇敢」という名前で代替されていてはいても、現実的には「無謀」である。

 自分の命を縮めかねない。

 シエスタは舌打ちした。

 アマラ少尉はSTSM以外のミサイルを撃ち尽くしているに違いない。

 本来であれば、帰投しなければいけない状況である。が……


 シエスタは威嚇の機銃を発射した。

 しかし、それがビッグマンに効くはずもない。

 周囲にいるスホーイがいれば、それをけん制する目的だった。

 シエスタは、ビッグマンを通り越して、0.5マイル半径で旋回。

 前方に、さらに3機のイングレスαが見える。

 チーム・アマリB班の5機の機体が、敵ビッグマンのヴェガに相対した。


 シエスタは、通信機能が回復していることを祈って、僚機に通信を試みる。

「フィオリヒト少尉。分かるか? 貴官はビッグマンの前方から侵入して、衝突寸前に上昇。敵の注意を引き付けてほしい」

「……了解しました。……ザッ!」

「ルウェリン・カマウ曹長。敵ビッグマンの右側からAAMを射出。右方向への移動を防げ!」

「分かりました。機体、旋回させます!」

「タビサ・エングロベ曹長。貴官は左側からだ。敵を惑わせるため、STSMで攻撃しろ。STSMの残弾はあるな?」

「はい。十分な数が残っていると思います。ということは、敵を左に誘導するのですね?」

「その通りだ。そこにわたしがAAMを撃ち込む。状況を確認してくれ……」

「了解しました」

 短時間の通信が終わった。

 シエスタの指揮能力は優れている。即座に判断し、どの通信が最適かを判断することができる。

 おそらく、この無線通信が続くのはわずかの間だが……


 シエスタは機体を若干傾ける。

 それで速度がゆるやかになった。

 味方の攻撃を待って、AAMを発射!

 白煙を上げて、AAMが敵ビッグマンに迫っていく。

 しかし?!

 すんでのところで躱された。森が轟音を上げて爆発する。半径50メートルほどの穴が空く。ちっ……! シエスタの舌打ち。


 そのとき、イングレスαのOSがなにかの指示を出したように思えた。

 しかし、後でログを確認してみるまで、シエスタにはそれが何なのか分からなかった。


 敵ビッグマンは、全方位ミサイルを発射。

 イングレス部隊は、それぞれてんでな曲線を描いて退避行動をとる。

 上空に向かって5條の飛行機雲を描いて、イングレスαがそれぞれ上昇した。

 上空でターンし、再びビッグマンに向かう。

 シエスタは数秒の間に、全機にSTSMを発射することを指令。

 自分は、ぎりぎりまでヴェガに接近して、AAMをそのど真ん中に打ち込む。

 捨て身の作戦だ。……しかし、これくらいしなければ!

(海兵隊に申し訳がたたない)と、シエスタは考えていた。

 パイロットとしての驕りである。

 リーダーとしては失格だが、この場合にはそんな勢いが必要であるようにも思えた。


 ビッグマンからレーザーが発射されて、STSMの多くが爆散した。

 シエスタは舌打ちするが、敵は回避行動はとっていないようだ。

 とすれば、シエスタの放つAAMを急所にぶちこめる可能性がある。

 シエスタは錐もみ飛行でイングレスαを飛行させる。

 視界には森。それが半分ほど空になって……目の前にヴェガの巨体が現れる!

 AAMを発射。

 この射程距離であれば、敵のアンチAIシステムに妨害される可能性も低い。


 イングレスαから、ほぼ直線で敵ビッグマンへと延びていく射線。

 AAMが、ヴァガの腰のつけねあたりに命中した。爆散するパーツ!

 ヴェガが片足を崩して、地面に膝をつく。

(やった!)

 行動不能にできたらしい。

 アマラ少尉が、『やりましたね』と、即座にショート・メッセージを送ってきた。


 敵の死角にまわり、一斉にAAMを発射する3機のイングレスα。

 アマラ少尉は、すでに離脱の行動をとっている。

「全機、離脱せよ!」

 と、通信機に向かって叫ぶとともに、あらかじめ用意しておいたメッセージを僚機にむかって送信する。

 サイクロイド曲線を描いて、敵ビッグマンへと向かっていくAAM。

 ヴェガの背中に命中した。1発はコックピットに命中したらしい!

 ガクッ、と膝をついて停止するヴェガ。

 敵AIによるジャミングが止んでいる。


 通信が回復して、「敵ビッグマン、行動不能に陥りました」

 と、フィオリヒト少尉が報告してきた。

 即座に、敵ビッグマンのコックピットをハッキングし、パイロットが死亡していることを確認したらしい。さすがにネオスである。

「ひゅーっ」と、シエスタは息を吐いた。

 アマラ少尉も、ほっとした口調で、「帰投しましょう!」と、通信を寄越す。

「ああ、そうだ。全機、帰投。敵ビッグマン1体を撃破した!」

 シエスタは、嬉し気に叫んだ。

 雨に煙る森が、今はむしろ祝福のように思えていた。

とうとう敵ビッグマン1体を撃破しました。

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