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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第四部

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68/95

68.セヴァストポリ攻略戦(1)

場面は変わって、バグダッド~セヴァストポリになります。

 バグダッドの空港を出て1時間。

 セヴァストポリの上空は雷雨だった。

 シエスタ・アレーテは、ヘルメットのなかで唇をかみしめていた。

 戦況は思わしくない。

 敵ビッグマン1機を撃破したものの、イングレスαは5機が失われた。

 これで、今日3度目の出撃である。


 ……2時間の出撃と2時間の休憩。それを繰り返す。

 今朝は、午前6マルロクマルマルからの作戦開始だった。

 昨日……古巣であるバグダッドに赴いてきたのである。


 かつての同僚たちは、シエスタにむかってからかう言葉をかけた。

「よう、亡霊女神! 今度は自分だけ生き残ったりしていないだろうな?」と。

 シエスタは苦笑しながら答える。

「今度は仲間を守ってるよ。わたしだけ生き残ったりはしない……」

「生き残れるのも才能だ。そして、それが仲間を救う」

「そうだな。ちょっとのプライドも、戦況に影響する。プライドは忘れないようにしているよ」

 胸の内の思いを引き締めるように言う。

「そうだ。それが大事だ。今回の作戦もよろしくな!」

 と……

 バグダッドに駐留している部隊は、シエスタとは別行動である。

 そのことが少し、シエスタにとっては寂しくもある……


 チーム・アマリは、5機ずつ4班に分かれて、敵に波状攻撃を加える。それぞれ、30分のタイムラグがあることになる。


 シエスタは、チーム・アマリB班のリーダーを務めることになった。

 そのメンバーは、シエスタほか例の陽気な性格のアマラ少尉、ネオスのフィオリヒト少尉、ルウェリン・カマウ曹長、タビサ・エングロベ曹長の5名である。

 作戦の主目的は、敵地上施設の破壊だが、ビッグマンが配備されていることが問題だ。

 すでに、他の班や他のチームはビッグマンと交戦している。

 敵ビッグマンは第二世代のヴェガだが、あなどるわけにはいかない。

 飛行形態への変形機能はないため、地上にべったりだが、それでも動く要塞といった風格がある。


 そんなところに、アマラ少尉が無線通信で話しかけてきた。

 すでに、AIネットとサテライト群は使えない。敵は目視する必要がある……

「こちら、アマラ・ンドゥベ。シエスタ中尉、ご機嫌はいかがですか?」

 軽口である。シエスタは苦笑する。

「アレーテ中尉と呼べ、作戦行動中だ」

「作戦行動中だからですよ。……我々の目標は敵防空施設、ということで良かったですか?」

「ブリーフィングの通りだ。ディストリクト‐Bのイージス設備を攻撃する。海軍を支援するためだ」

「海兵隊はよろしくやっているんですかね?」

「シーウルフを信じろ。彼らは、すべきことはする部隊だ。我々も、自分たちの義務を全うする」

 リーダーとしての口調である。

 いつもの、穏やかな調子ではない。

 アマラ・ンドゥベは、思わず頭を掻きそうにした。

「ポーランドからの部隊はどうなんですかねえ? あっちのほうが距離が近いんだ、よろしくやってくれないと?」

「お前はそればかりだな? どうやら苦戦しているようだ」

「あちらは精鋭さんじゃないですからね……」

「軽口はそれくらいにしておいてくださいよ、アマラ少尉。我々が油断したら、作戦は成功しない」

 と言ったのは、ネオスのフィオリヒト少尉である。

 ネオスにしては、よく話す方だと言われている。

 シエスタも、それで気が楽だった。

 今回の作戦は、この5人で散開攻撃をしかけるということだが……そろそろ機体同士の距離を離したほうがいい。

 となると、通信も難しくなる。が……

「ルウェリン・カマウ曹長です。アレーテ中尉、そろそろ散開しましょう」

「そうだな。予定よりすこし早いが、貴官の勘を信じよう」

 と、散開の指示を出した。

 機体同士の距離を、0.5マイルから2~3マイルに離す。

 敵のジャミングもあって、これからは無線通信も難しくなるだろう。

 事前のブリーフィング通りの行動が求められるのだが……不確定要素はビッグマンだ。

 シエスタは、再び唇をかんだ。


 イングレスαの機体のそばを、雷光がかすめた。

 これから高度を落としていく……どうやら、低い高度まで雨雲が降りてきているようだ。

 作戦にとっては、至極都合が悪い。が、怺えなければならない。

 AAMとAGMのコンディションを確認する。良好だ。

 この8発のミサイルとSTSMを撃ち尽くすまで、戦線にとどまらなければ最大の成果は上げられない。

 シエスタは自分の体温が上がるのを感じた。


 セヴァストポリの港湾が見えてくる。

 高射砲が甲斐のない砲弾を撃ち上げている。

 その程度の攻撃であれば、イングレスαは容易に回避することができるが、油断は禁物である。

 シエスタは、機体のまわりにAIかく乱チャフをまいた。

 そのまま、マッハ2で半島に突入する。

 目標となるディストリクト‐Bが視界に入った。

 敵のスホーイは、どうやら別の部隊と交戦中らしい。

 AGMを発射! 敵防空施設の1つに弾着する。

 爆風がコンクリートの破片を空中に巻き上げ、木々の梢をなびかせる。

 今の攻撃で、何人かの人間とネオスは命を落としただろう。

 シエスタは、心のなかで祈りの言葉を唱える。

 敵を敬うことは、自分を救うことにもつながるのだ。


 ──


 そんなときに、再びアマラ少尉からの無線通信が入った。ノイズが混じっている。

「敵ビッグマンを発見! ヴェガです。ジジッ! ……これから攻撃態勢に入りますが。応援要請……」

「ンドゥベ少尉。貴官の機体の位置が捕捉できない。無理をするな? 上空を旋回しながら、様子を見ろ……」

「了解。2マイルの距離をとって旋回、AAMで攻撃します……」

 無線が切れた。

 シエスタは、アマラ少尉の健闘と無事を祈る。それしかできなかった。

 再び、敵防空設備の特定と攻撃に立ち戻る。

 高射砲が、また無意味な攻撃をしかけてくる。

 機銃で威嚇。敵がひるんでくれれば、それに越したことはない……

 高射砲の砲撃が止んだ。

(どうやら、セヴァストポリの部隊は戦い慣れていないらしいな?)

 シエスタは、安堵の思いとともに心のなかにつぶやいた。


 スホーイが2機、シエスタ機に接近してきた。

 どうやら、味方とはだいぶ距離が離れたらしい。自機は孤立している……

 しかし、スホーイ程度が相手であれば、シエスタのほうには自信があった。

 これまでの撃墜数は57機である。それが今回59機になるだろう。

 油断はしなかったが、ビッグマン相手ではないということで、シエスタの気もちには余裕があった。

 距離を取りながら、機体を旋回させる。

 敵が1マイルの距離に近づく。AAMを発射。同時にSTSMを数発打ち込んだ。

 弧を描いて飛んでいったAAMが敵の軌道をかく乱する……そして、速度を落としたところにSTSMが命中した!

 1機撃墜。中空で爆散するスホーイの機体。残り1機。


 残りのスホーイがインメルマン・ターンをした。

(後ろを取るつもりか? でも、イングレスαは後ろにも攻撃できるってね!)

 速度を保ったまま、後方にSTSMを発射。

 敵スホーイが機体の位置を戻したちょうどそのときに、ミサイルが命中。

 片翼を失って、墜落していくスホーイ。

 森のなかに墜落、爆散した。ゆれる木々。黒煙。

(やった!)

 と、心のなかで叫ぶシエスタ。いやいや、冷静さを失ってはいけない。アマラ少尉は?


 とぎれとぎれの無線で、

「こちら、苦戦中! シエスタ中尉、援軍を求む……、ザツ」

 という通信が入った。

バグダッドには統合戦線の空軍基地がありますが、イラク自体は統合戦線ではありません。いわば衛星国家のようなものですね。ポーランドも同様。「統合戦線」という国名のいわれです。

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