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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第四部

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66/139

66.南極戦線(5)

ライジングアースをブラックスワーンダーが追ってきますが……

 ライジングアースを追ってくるブラックスワーンダー。

 しかし、遅い。

 一瞬で飛行形態に変形して、離脱するライジングアース。

 どうやら、敵ビッグマンは飛行形態にはなれないらしいと斎賀は思う。


(ミューナイト、ライジングアースの1マイル圏内の無人機を検索しろ)

(やってる。ライジングアースの1マイル圏内には無人機が3機)

(それぞれの無人機に、こちらのAPF‐Jを5機ずつ差し向けろ。STSMの雨で敵を撃ち落す)

(了解。それと同時に敵ビッグマンに牽制のミサイルを発射する)

(やってくれ)

 斎賀は答える。

 今、ライジングアースは敵のマウント・ハンプトン基地の方角へと向かっている。

 斎賀は迷った。

 ミューナイトの気もちを無にしても、ここはユーマナイズを使うべきではないのか?

 ──シリウスが戦術核を発射するまで、あと15分。


 ──


「敵を倒すな」とは何なのか……と、ブラックスワーンダーのコックピットでセラフィアは思っていた。

 あれは敵のクラッキングではなくて、マザー・ルーティーンだった。

 ということは、ジェマナイはわたしの思考を矯正しようとしている?

 敵と戦わず……いや、「敵を殺さずに戦え」、ということなのか?!

 セラフィアのAI脳が混乱する。

 しかし、コンマ数秒で最適化されるセラフィアのAI脳。

 つまり……相手を自分の味方とすれば良いのだ!

 NNN‐3! パイロットの生死は問わない。わたしはあれを鹵獲する!


 ──


(ミューナイト、敵の無人機はどうなっている?)

(ライジングアースの周囲を旋回しているが、しだいに近づいてくるようだ……)

(敵無人機に最接近される前に、APF‐Jで攻撃!)

(わかった)


 マウント・ハンプトン山に近い雪原の上で、APF‐Jの群体が集合した。

 まるで有機的な、生命の集団のようにも見える。

 サイクロイド曲線を描いて、オルリヌイ・ルーチに迫るAPF‐J。

 オルリヌイ・ルーチの機体は、APF‐Jよりもずっと大きいが、急所を狙えば良い。

 クラッキングの影響が最小限に抑えられるように、STSMを発射。AAMよりも細かなコントロールができる。

 ストレンジ・アトラクターのような曲線を描いて、オルリヌイ・ルーチに迫っていく、APF‐JのSTSM。

 雲を抜けて、ミサイルが敵機体へと到達した。

 1機、いや2機のオルリヌイ・ルーチが爆発する。

 これで、ライジングアースの半マイル圏内に敵無人機はいない。

 そのまま機首を傾けて、3機目へと向かう。

 敵機からAAMが発射された。

 しかし、これは電波のクラックで対応できる。

 敵のAI照準システムを侵害して、進路を狂わせる……そのままブラックスワーンダーのほうへ。

 ブラックスワーンダーはふいをつかれたが、なんなく回避する。パイロットが優秀なのだ。


 斎賀は最後の手段を使った。

 1機のAPF‐Jをそのままオルリヌイ・ルーチへと特攻させる。

 爆散する、2機の機体。

 これで、ライジングアースの1マイル圏内にいる敵は、あの黒いビッグマンだけとなった。


(ミューナイト……お前の気もちは害するが、あの兵装を使う。ユーマナイズだ)

(サイガ! あの武器は使わないって約束したじゃないか!)

 ミューナイトが抗議する。

(ああ、だが、今この状況では仕方がない……それに、これはジェマナイの南極基地の人間を救えるんだ!)

(どういうことだ、サイガ??)

 ミューナイトは混乱しているようだった。

 ライジングアースの「ユーマナイズ」が洗脳兵器だということは、誰もが知っている。

 しかし、それだけなのだろうか? と斎賀は思っていた。

 この兵装には、もっと別の目的と効果とがあるように思える……

 戦乱や戦争を収束させるような効果が。

 斎賀はそれに賭けた。

(いや、説明は後だ。マウント・ハンプトン基地に進路を取れ!)

(了解)

 ミューナイトはしぶしぶ従った。


 ハンプトン山の大きな火口が見えてくる。

 その中心に、敵のマウント・ハンプトン基地はある。有人だ。

 斎賀は、その基地にいる全員を退避させようと思った。

 味方のシリウスから、戦術核が発射されるまでに15分。そこから、目標に弾頭が到着するまでにおよそ10分だ。

 25分あれば、基地からの脱出には十分な余裕がある。

 斎賀は、この作戦をオバデレ准将の思うままの成果にさせたくはなかった。

 自分たちは、人を救うために戦っているのである。

 敵の人的資源を消耗させるために戦っているのではない。

 ──それを証明したかった。


 敵のビッグマン──ブラックスワーンダーは、ライジングアースから30秒程度遅れている。

 ハンプトン山の火口の上空で急旋回。

 そのまま人型形態に変形して、空中に仁王立ちになる。

 人型形態でなければ、ユーマナイズは使用できないのである。


(ミューナイト、決断しろ。ユーマナイズを使う!)

(サイガがそう言うなら仕方ない。上官はあなただ、命令には従う)

 顔をゆがめて、ミューナイトが答えた。

 ムルマンスクでの苦い記憶がよみがえる。

 それとともに、自分たちのせいで死なせてしまったマリアの記憶も。

(大丈夫だ、ミューナイト。こちらのユーマナイズを全開にするとともに、全周波数帯で敵基地に退避を呼びかけろ! 今、人間関数はどれくらいの数値になっている?)

(わかった。人間関数の値は……今情報をあなたのHUDに送る。現在、87%だ……)

(たぶん、十分な数値だな。ムルマンスクのようにはならない。保証する。俺は確信している。この兵器は……)

 と、交わしている会話にも余裕はなかった。

 斎賀は作戦が成功する確信がないまま、ミューナイトはユーマナイズという兵装に納得できないまま、攻撃準備が整う。


 ライジングアースの胸部ユニットが荘厳に光った。

 コンマ数妙して、音波と光とが同時に射出されていく。

 ユーマナイズの虹色の光だ。

 そして、何らかのメロディーにも似た音波の塊。

 それは人々の鼓膜を震わせる。

 そして、それだけではない。

 人々の心に何らかの「感情」を巻き起こすのである。その感情とは……?!


(こちらは、統合戦線の戦術兵器、特殊地上戦機A号。貴基地は目下、我々の戦術核兵器の攻撃目標となっている。施設に滞在している全員は、今すぐ退避されたし。繰り返す。こちらは、貴軍の人的損害を最小限に抑えたい……)

 そんな文字列と音声を、ミューナイトはマウント・ハンプトン基地に向けて全周波数で送信する。

 これで、伝わって!


 ──


(あれは、なんだ?!)

 と、セラフィアは思った。

 敵ビッグマン、NNN‐3の胸部が発光し、不気味な音波まで照射されている。

 避ける間もなく、それにさらされるブラックスワーンダー。

 その計器類が一瞬のうちに混乱し、リミッターが振り切れた。

(なんなんだ、これは?)

 ムルマンスクからの報告で受けた、未知の兵装の効果だということは、瞬時に直感で分かった。

 しかし、避けようがない。なかった。

 人型形態のブラックスワーンダーは、戦闘機などに比べれば挙動が遅い。

 音速を超えるような回避行動はできないのである。

 虹色の光と音波に包まれる、ブラックスワーンダー。

 そして、セラフィアの意識のなかにも不可思議な声が流れ込んできた。

(戦うな。我々は敵ではない……)

 なんの声なんだ、とセラフィアは狼狽する。

 モスクワ上空でヴォルグラスが受けた攻撃か? いや、やはり違う……


 コンソールに次のような文章が表示された。


[WARNING]

Immediate withdrawal recommended.

Ascend the unit to the stratosphere.

Maintain altitude until enemy assault subsides.

Recovery subroutine already active...


 要約すれば、今すぐ機体を成層圏まで離脱・上昇させなければいけない、という警告である。

 セラフィアは息を飲んだ。

 敵の攻撃は、それほど広範囲に作用するものなのか?!

 リュシアス様がムルマンスクに巨大なドームを作ったのも、これが理由か……?

 一体どんな兵器なんだ、あれは???

 そのまま、セラフィアの操縦を待つまでもなく、ブラックスワーンダーは成層圏へと急上昇していった。

とうとうライジングアースがユーマナイズを使いました。セラフィアにはある理由で効きませんが……今後は効くかも? いや、実は効いているのかもしれませんね。^^

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