64.南極戦線(3)
ライジングアースとブラックスワーンダーとの戦闘です。
ライジングアースとブラックスワーンダーとは雪原に着地した。
銀色の結晶が地に舞い上がる。
無人機群は攻撃して来ない……
(とすると、ライジングアースの鹵獲が目的なのか?)
そう、斎賀は思った。
素早く、30機のAPF‐Jに敵無人機のかく乱を、残り30機に敵基地の探索を指令する。
APF‐Jに搭載されているのはAIブレインだとは言っても、敵施設の探索くらいは可能である。
高度を1000フィート以内に抑え、南極大陸をくまなく探索させる。
それにしても……と、斎賀は思った。
目の前のビッグマンからは殺気が漂っている。
俺たちを殺す気だ……たぶん、敵の操縦士はそうとうの手練れなのだろう。
あるいは、アルスレーテで出会ったあの機体のパイロットか?
名前くらいは聞きたいものだな……
(ミューナイト、いつでもマグネティック・シールドを作動させる準備を!)
(もうやっている。全身の量子フィールドがあれば良いんだが……)
(たしかに、敵のビーム兵器は防げないな)
(その時には、最悪頭部バリアがある)
(いちいち敵の攻撃に頭を向けるのか、間抜けだな?)
(笑ってる場合じゃないよ、サイガ。このライジングアースは、設計が本当に特殊だ)
(対ビッグマン戦闘を意図してはいなかったからだろう。帰ったら整備班に要望しよう……)
その間、コンマ数秒の会話。
斎賀のかぶっているヘッドアップ・ディスプレイが、「DANGER」の表示を写した。
敵ビッグマンは、じりじりと間合いを詰めてくる。
核の弾着まで、あと45分である。
──
セラフィアは身構えていた。
スキャン結果によると、敵のNNN‐3は以前にはなかった武装を装備している。
どうやら、手のひらにはビーム兵器も追加されているらしい……
(量子重力フィールドがあれば良いのだが、磁界バリアで防ぐしかないか?)
手元のコンソールにすばやくコマンドを打ち込む。
敵ロボがビーム攻撃を行ってきたときの、回避行動のパターンを覚えさせる。
(アルスレーテで戦った時とは、もう別の機体だな……)
セラフィアはコンソールではなく、目の前の全視界モニタを見つめた。
敵ビッグマン(ロボ)が屹立している。
それは、「偉容」と呼ぶにふさわしい姿だった。
──
上空では、無人機同士の戦闘が始まっていた。
APF‐Jに入力されたコマンドが、敵オルリヌイ・ルーチを誘導してライジングアースの1マイル圏内から引き離していく……
しかし、じわじわと敵ビッグマンは間合いを詰めてきていた。
(ミューナイト。こちらは、敵の武装が分からない。とりあえず、ハイ・フリークエンシー・ソードを抜け。それでミサイル攻撃くらいは防げるだろう)
(そうだな、サイガ。誘爆の危険性を考えると、敵もビーム兵器は使ってこないと思う。接近戦……いや、肉弾戦が良いと思う)
(おっかないこと言うね。でも、格闘女子、嫌いじゃないよ?)
(冗談はやめて、サイガ)
ミューナイトはぶうたれた。
ライジングアースが、背中に構えていたハイ・フリークエンシー・ソードを抜く。
そのままホバリングでダッシュ。敵ビッグマンに切り込む。
敵──ブラックスワーンダーは空中へとジャンプ。
ありきたりの……当たり前の攻撃は効果がないか。──当然だな、と斎賀は思う。
足元の雪が舞う。氷河が割れて、ガキっと高い音を立てた。
残り40分。
──
睨み合っているだけでは埒が明かないと、セラフィアは思った。
飛び道具でかく乱してみるか……
と、両肩に装備されているスパイラル・カッターを射出する。
ぎゅうんとうなりを上げて、ブーメラン状の武器がライジングアースに迫った。
ライジングアースは手に持った刀でそれを打ち返す。
きゅん! という高い音を立てて、ジェット・ノズルが反転する。
スパイラル・カッターは、ふたたびブラックスワーンダーの肩におさまった。
(あのパイロット、思っていたよりも反応が速い……)
セラフィアは、独り言ちるともなく心のなかに思った。
では、量子なぎなたで攻撃するか──と、背中のなぎなた状の武器を抜いて身構える。
ジェットを噴射して、ライジングアースに接近。
ビッグマンの両腕を器用に操って、ライジングアースに切りつける。
──ぎりぎりのところで躱す、ライジングアース。
胸からミサイルが発射された。
ジャンプしてそれを回避。
敵から200メートルほどのところに距離を置いて着地する。
(無人機にあのビッグマンを攻撃させたほうが良いか……?)素早くコンソールを操作する。
その間も、自機は敵ロボに正面を向けたままで対座している。
──
(ミューナイト。ユーマナイズを使う気はないよな?)
(あの武器は使わないと言った。サイガ)
(だな。俺も正々堂々と戦ったほうが、後味が良い……)
(味覚の問題じゃないよ!)
ミューナイトがとぼけたことを言った。
斎賀は苦笑する。
上空からオルリヌイ・ルーチが接近してきた。
3機。いや、4機?
ライジングアースに向かってAAMを発射する。
「こっちは地上にいるんだよ!」
斎賀は思わず叫んで、ミューナイトに思念通信をした。
瞬時に飛行形態に変形するとともに、ブラックスワーンダーのほうへと突っ込んでいく。
そのまま、すれすれの状態で急上昇。
ライジングアースを追ってきたミサイル群が、ブラックスワーンダーにまともにぶつかる。
──と思った瞬間、敵もマグネティック・シールドを作動させる。
1つのミサイルが自爆し、それに巻き込まれて誘爆するミサイル群。
ブラックスワーンダーは、ジェットノズルからジェットを噴射して後方に飛びのいた。
そのさらに後ろ側に着地する、ライジングアース。
──
(敵の機体が複座だということを、油断していた。単座の機体よりも動きが良い……人間の能力とはこれほどのものか?!)
瞬時にミサイルのコントロールをハックするとは。
セラフィアはうめいた。
そのまま機体を振り向かせ、榴弾ミサイルを発射する。
人型形態に戻っているライジングアースはジャンプ。地面に激突して爆発するミサイル。
──今度は空だ!
ハイ・フリークエンシー・ソードをかまえて、ライジングアースが襲ってきた。
ホバリングで回避。量子なぎなたを相手に突き立てるように持って、突進。
ブラックスワーンダーの量子なぎなたと、ライジングアースのハイ・フリークエンシー・ソードがうなりをあげてぶつかりあった。
ライジングアースは手のひらを返して腕を振る、
ぶん! という衝撃とともに、宙に放り出されるブラックスワーンダー。
量子なぎなたの量子重力場が逆に不利に作用した形だ。
相手を破壊するのではなく、自分への衝撃波として返ってきた。
そのまま後方宙返りをして、氷河のうえに着地するブラックスワーンダー。
(敵の言う通りであれば、核が弾着するまであと30分ほどか……)
額の汗を、セラフィアはそっと手のひらでぬぐった。
ブラックスワーンダーが氷河を踏みしめると、みしり、という高い音が走った。
臨場感重視です(笑)。




