表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第三部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/96

47.意外な出会い

ミューナイトを設計した女性科学者が登場します。

 マダガスカル島、ムラマンガの空港を飛び立った無人機群が、航跡を描いて海側へといっせいに飛んでいく。

 アンタナナリポからその姿は見えなかったが、上空を1機のビッグマン(ロボ)が飛行していくのは見えた。

 ライジングアースである。


 ライジングアースはそのまま西へと飛び、アンタナナリポ郊外のある邸宅の前の畑地に着地した。

 手には、要人護送用のカプセルを抱えている。

 統合戦線が、この1週間で急ごしらえした、ライジングアースの装備品である。


 この地で、斎賀とミューナイトとはある一人の高名な人物を迎えることになっていた。

 彼女の名前は、オリヴィア・トゥレアール博士。

 統合戦線側のネオス研究の第一人者である。


「やあ、これはすごいな!」

 と、博士はライジングアースを見上げながら言った。

 その傍らには、大きなスーツケースが鎮座している。

 これから、統合戦線の空母へと向かうのである。


 オリヴィア・トゥレアールは54歳。偏屈者で、大の自動車嫌い、飛行機嫌いとして知られていた。マダガスカルの地元、マザンドゥレ出身。

 それがなんの因果か、というか当然か、統合戦線の軍事演習のアドバイザーとして招かれているのである……。


 斎賀の明言した通り、この軍事演習はチーム・アマリ、チーム・ンデゲ、ライジングアースと無人機群によって行われる。

 エル・グレコや戦闘ヘリコプター、空中給油機なども参加するが、主力はイングレス部隊とライジングアースである。

 どのようなルールか?

 それを斎賀たちは4日前に知らされた。

 アルスレーテを出発する直前である。


 ルールは以下の通り。

 統合戦線の部隊は2軍に分かれる。

 一方のシルフィード組には、チーム・アマリ、チーム・ンデゲのイングレスα20機と無人機100機。

 一方のバルバロッサ組には、ライジングアースとエル・グレコ19機、無人機100機。

 この総力をもって模擬戦をするのだが、ルールが微妙に変わっている。

 というのは、イングレス部隊とライジングアース、エル・グレコ部隊は、それぞれ無人機の誘導のみを行い、実戦には加わらない。撃ちあいは無人機群によって行われる。

 実弾の代わりにペイント弾を用い、限りなく実際の戦闘を再現する。

 ペイント弾を撃ち込まれた無人機は撤退となる。

 無人機以外の攻撃機は、ミサイルの撃墜のみ可能とする。


 こんなことをして何をしようとしているのか、斎賀には分かるような気も分からないような気もした。

 要は、統合戦線側はできるだけ人的損害を出したくないのである。

 それは……先日のジェマナイによる攻撃も同様だった。

 統合戦線とジェマナイ、双方の思惑は同じだと思われる。

 しかし、それならば上層部はなぜこんな入り組んだ作戦を立てるのか?

 ……まるで、演習以外の隠れた目的があるとでもいった具合だ。


 それに、演習前にイングレス部隊には、新しい戦術戦闘AIシステムが組み込まれていた。その名も、「NooS」という。

 ギリシャ語で「知性」「思惟」を意味する言葉らしいが……正式名称は、「Next Optimization Operating System」だ。

 新鋭企業の、RSAITec社が開発した戦術戦闘汎用AIだと、斎賀は知らされている。


(明らかに、統合戦線はイングレス部隊を味方側、俺たちを敵側としてこの演習を敢行したいようだ……)

 そんなふうに、斎賀は考えた。

 そして、そのことをミューナイトにも伝える。

 ミューナイトの答えはそっけなかった。

「統合戦線にはロボが少ないからな……わたしたちを敵ビッグマンに見立てたいんだろう?」

 それは、ネオス流の無知のように、斎賀には思えた。


 話が逸れたが……斎賀とミューナイトは、ライジングアースのコックピットからワイヤー・ロープを使って博士の前に降り立った。


「初めまして、オリヴィア・トゥレアール博士。統合軍空軍のシンイチ・サイガ中尉です。こちらは、ネオスのミューナイト少尉」

「知っているよ? このロボのパイロットなんだろう? 今は」

「え?! 今は?!」

 斎賀とミューナイトとは驚いた。

 とくにミューナイトが驚いていた。自分の存在は民間人には秘匿条項のはずなのである……


 ネオスについて説明すると、ネオスには軍に所属する者もいれば、民間人として生活している者もいる。

 統合戦線側では、ほとんどのネオスがジェマナイのAIネットからは独立したスタンド・アローンAIとして脳機能を保持している(ただし、ハッキングやクラッキングの危険性がないわけではない)。

 民間で勤務するネオスたちは、いわば養子のような形で一般人に払い下げられる。

 しかし、軍属となるネオスは、一括して軍の管理下となる。

 戸籍はなく、当然ながら苗字もない。

 ──ネオスたちは、一応人造人間(アンドロイド/ガイノイド)だが、一応の人権を有してはいるのである。その処遇は、それぞれの立場によって異なるが……

 オリヴィア・トゥレアールは、そのネオス研究の第一人者だった。


「そして、今は、とは?」

 とは、斎賀。

「今は……そのライジングアースのパイロットなんだろう? 空軍からの連絡で知ったよ。でも、それ以前にはイングレスαのパイロット。それ以前は軍の事務職。軍歴は、そうだな……5年だ」

「どこでそんな詳しい情報を?」

 あわてて斎賀が尋ねる。

 しかし、オリヴィアの答えは意外なものだった。

「当然ださ。わたしが知らないわけがない。ミューナイトを作ったのはわたしなんだもの。彼女は、わたしが設計した17体目のネオスさ……」


 ミューナイトはあっけにとられていた。

「本当なんですか? あなたが……わたしの、お母さん?」

 手を、思わず握りしめている。

 斎賀は気づいたが、見るからに唇をふるわせていた。

「おやおや。その感情、あなたらしいねえ……ミューナイト。ミューナイトという名前をつけたのも、わたしだよ」

「わたしの名付け親でもあるんだ?!」

 ミューナイトは一種の感動をもってそう答える。

「あはははは。当たり前じゃないか。わたしは、ネオス1体1体を自分の子供のように設計しているんだよ? 名前くらいつけるさ。おかげで軍からはにらまれるわけだけれどね。まあ、偏屈なのは今に始まったことじゃない。この性格のせいで、今はマダガスカルから出もしない。ま……わたしは自動車と飛行機が大嫌いだからね」

 2人ともあっけにとられていた。

 こんなところで、思わぬ人物、ミューナイトの生みの親を迎えることになろうなどとは、想像もしていなかった。

「ところで、ボワテ大佐は元気? わたしと初めて会ったころは、まだほんの坊やでねえ」

 そのボワテ大佐が、明後日から始まる合同軍事演習での、斎賀たちシルフィード組側の指揮官だった。


「ボワテ大佐もご存じなんですか?」

「当たり前だよ。あたしを誰だと思ってるんだい? 元統合戦線技術軍のオリヴィア・トゥレアール博士だよ?」

 博士は、いかにも当然というように言ってのけた。

タクシーがわりをつとめるライジングアースです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ