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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第二部

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36/98

36.アルスレーテ空爆(2)

ひきつづきアルスレーテ空爆です。

 空爆……とは聞こえの良いものではない。

 上空では航空機同士の撃ち合いがあるし、地上からは地対空ミサイルが襲ってくる。

 今回の主力は無人機とは言え、犠牲は避けがたいとセラフィアは思った。


(リュシアス一将はなにを考えているのだろう? ビッグマンでバグダッドを制圧する、という作戦も考えられたはず……)

 バグダッドを制圧して後、NNN‐3の返還を交渉材料とするのである。

 それが妥当な作戦に思われたが……

(リュシアス様は、統合戦線に恐怖を与えたいのだろうか?)

 それが、ジェマナイの戦略・戦術長官としての、彼女の立場ではあったろう。

 しかし、セラフィアにとっても、今回の作戦は腑に落ちないところがあった。


(あの時と同じだ……)

 と、セラフィアは考える。

 声が聞こえる。


 ──気を付けて。……油断しないように。……敵は。


 それが誰の声なのか、セラフィアには分からなかった。

 ただ、サテライト群がその声を拾ってくるのだろうとは、考えていた。

 それは、通常のAI通信とは違う。

 まるで、自分の魂のなかに割って入ってくるような声……

 その声の主に、セラフィアは会ってみたいと思った。


 しかし、それが敵の声だろうということも、セラフィアは分かっていた。


(自分は、相手を殺すために、彼女に会いたいと思うのだろうか……)


 アルスレーテ上空では、すでにスホーイ5機とイングレスαの部隊とが交戦状態に入っていた。


 無人機を落とすのは容易ではない。

 地対空ミサイルの数にも限りがあるだろうし、戦闘機では速度が速すぎる。

 それに、今回のジェマナイの無人機群は雲霞のごとき大群だ。

 ミサイルを撃っても、焼け石に水のはずである。

 それならば、電子妨害装備を使って、オルリヌイ・ルーチの攻撃機構そのものを阻害しなければならない。

 しかし、敵のイングレスαにそのような装備があるだろうか?

(いや、ある。統合戦線の戦力を甘く見てはいけない……)

 セラフィアは自身を戒めた。


 ──


 無人機群が、イングレスαの戦隊のなかにつっこむ。

 数条のビームが飛び交い、何機かのイングレスαの攻撃システムがロックされた。

 パイロットはあわてて、システムをマニュアルに切り替える。

 しかし、遅い……

 オルリヌイ・ルーチ群の発射したミサイル群に追尾されて、1機のイングレスαが爆散した。

 統合戦線側にとっては、最初の損害だった。


 チーム・アマリのリーダーであるチディ・マベナは、シエスタ他のパイロットに告げる。

「予想通り、敵は電子戦装備を搭載している。空対空ミサイルの発射能力もあるようだ。1機ずつは大した戦力ではないが、しかし相手は大群だ。自分が撃墜されないことだけを考えよ」

 そして、味方機の航路を見守った。

 アマラ・ンドゥベがやや先行している。


「くそ。発進命令がもっと早ければ……」


 悔やんでも仕方がない。

 上層部は当初地対空ミサイルだけで対処しようとしたが、ケニア方面からも敵が侵入していると聞き、急遽チーム・アマリとチーム・ンデゲに発進を司令したのである。

 チーム・アマリは南から来る無人機群の迎撃に向かい、チーム・ンデゲは北から来る正体不明の敵の迎撃に向かった。

 そのうちの何機かはスホーイだということだったが……

 この時代、航空機はほぼステルス性能と対AI電子線装備を備えている。

 目視するまで、正体が不明であることも珍しくない。

 航空機であれば良いのだが、ビッグマンが混ざっているとすると分が悪い。

 チーム・ンデゲは外れくじを引かされたわけだった。

 この攻撃が終わるまでに何機が生き残れるか……

 しかし、そんな心配は分を超える……自分が生き残るのだけでも、ぎりぎりなのである。

 アマラ・ンドゥベは奥歯を嚙み締めた。


 ──


 そのころ、チーム・ンデゲは苦戦していた。

 目視したところ、敵のスホーイは10機しかいない。

 しかし、そのなかにビッグマンが1体混じっていた。

 白色の細身の機体である。

 これは、これまでの戦闘データにはない機体だった。

 第3世代のビッグマン1体を倒すのにもてこずったが、これはこれまでの機体よりも性能が上かと思われた。

 人型に変形しても機動がスムーズで、個型戦闘機並みのスピードを維持している。

 パイロットは……これは手練れだろうと思われた。


 リーダーであるヌール・ジュマは散開しての攻撃を命じる。

 すでに、イングレスα1機が撃墜されていた。戦士したのは、アフメド・モラナ少尉である。優秀なパイロットだった。

 しかし、感傷にひたっている暇はない。

 チームのメンバーである、リエナ・ヴァルガとマルク・べソンとが大きく旋回した。

 チャフをまきながら、インメルマン・ターンをする。

 と、飛行機雲がヌール・ジュマの機体をかすめた。

 ヌール・ジュマは、短期対AI攻撃システムをオンにして、敵の攻撃をかく乱する。

 一瞬、サテライト群からの情報が途絶えて、チーム・ンデゲのメンバーは目視で戦わなければいけなくなった。

 それでも、敵の攻撃を回避するのには都合が良い。

 ヌール・ジュマは、AAMの照準を敵ビッグマンに定めた。

 航跡を描いて、ミサイルが飛んでいく……命中!

 と思ったが、なにかワイヤーのようなものにからめとられて、ミサイルが自爆した。敵にダメージは与えていない。

 ヌール・ジュマは、「ちっ、外したか……」と、低い声でつぶやいた。舌をかまないように。


 ──


 そのころ、斎賀とミューナイトとは悶々としていた。

 ライジングアース1機だけが、滑走路上で屹立してる。

「首都を守れ……」と、厳命されたのだった。

 つまり、南から来る無人機群、そして北から来る正体不明の敵を待って、直近で遊撃せよという指令だった。


 攻撃はいつだって先制攻撃が有利なはずである。

 しかし、軍上層部はライジングアースを最後の切り札にしようとしていた。

 奪取後、武装は強化されたが、バルーンを相手にした射撃訓練しかしていない。

 実戦で、何を撃ち落せというのか?

 無人機か? スホーイか? ビッグマンか?

 その目標すら定かではないまま、斎賀たちは待機していた。


「ミューナイト。怖いか?」

 ふいに、斎賀が尋ねた。

「なぜ? わたしは今までも何度もイングレスαで出撃している。それが未経験だというの?」

 ミューナイトは、不満というのでもないような調子で答える。

「いや……違う。首都を守るということを、お前はどう思っている?」

「サイガ。そろそろ思念通信に切り替えたほうがいい……」

 それが、ミューナイトの答えだった。

 斎賀は不満だったが、それで納得するほかなかった。

 上空では、すでにイングレス部隊が戦闘を始めている。

 自分たちにも「Ready」が下るのは、数分後のことだろう。

 そうすれば、そこから先は戦場だ。

 自分の命がもっとも大事な。そして国の命運はもっと大事な。

斎賀とミューナイトはまだ待機中です。

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