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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第二部

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31.ライジングアース出撃?

斎賀とシエスタが緊急招集されます。

 彼らが動かし始めた箸の動きは、思わぬことで止められることになった。

 突如、斎賀とシエスタのスマホの警報音が鳴り始めたのである。

 軍用アプリが緊急招集を知らせていた。


「敵襲か?! ジェマナイに動きはなかったんだろう? でなきゃ、休暇なんてもらえるはずがない……」

 斎賀は慌てて言う。

「わからない」

 シエスタは、曇った表情でスマホを見つめている。

 メッセージ画面をスクロールしていくと、『航空部隊および特殊地上戦機A号のパイロットは出撃準備を整えて、待機』とあった。

「特殊地上戦機A号って、ライジングアースのことか?」

 と、シエスタが尋ねる。

「ああ、そうだ」

「間抜けな名前になったな?」

「まったくだ」

 急がなくてはならない。基地には30分あれば着けるが……

 食事を続けている時間はまったくなかった。

 斎賀とシエスタは、そそくさと荷物を片付け始める。


 ──


 ボワテ大佐は、チーム・アマリを作戦室に緊急招集していた。


 チディ・マベナは、緊急招集の内容についてボワテ大佐に尋ねる。

「前線で何かあったということですか?」

 それに対して、ボワテ大佐はあいまいな顔つきをする。

「前線ではない……。テヘラン上空からこちらに向かって、未確認の航空機が侵入した。機種は分かっていない。今は、サウジアラビアの砂漠に向かっているという情報だが」

 と、煙草を灰皿に押し付ける。

「スクランブルではないのですか?」

 ──統合戦線アフリカ機構の本土が攻撃されるのであれば、一大事である。

 一大事どころの話ではない。

 国家的な危機であるともいえる。

 ここ1週間のジェマナイの声明のことを考えれば、それは現実の問題だった。

「スクランブル発進は、バグダッド基地から行った。今は、当該の航空機の所属を確認している」

 と、ボワテ大佐。

 すると、

「戦闘機ではないのですか?」

 チーム・アマリのサブ・リーダー、イーヴリン・ケインが横から口をはさんだ。

 言ってから、ちょっと軽率だったか? という顔をする。

「戦闘機ほどの速度ではない。戦闘機なら航続距離も短い。おそらく、哨戒機か爆撃機だろう。わたしも迷っているのだよ」

「単機なのですか?」

「そのようだ」

「目的が分かりません……」

「もちろん、応答を呼びかけている。まもなく、我々の領空だ」

「サテライト群はなんと?」

 ふたたび、チディ・マベナが聞いた。

「情報は送られてきていない。ジェマナイによるハッキングが行われている可能性が高い。今は双方とも臨戦態勢だからな……」

「こんなときに。こんなときだから、か」

 イーヴリン・ケインはそう言うと、身じろぎした。あわてて左右を見回して、姿勢を正す。


 ──


 斎賀とシエスタは、「空軍前駅」の階段を駆け上がった。

 200メートルほど走れば、正門がある。

 短距離走は斎賀も得意だったし、意外なほどに足取りは軽かった。

 膠着状態が何週間も続くよりも、なにかのインシデントがあったほうが気もちは楽だ。

 それが、アクシデントやトラブルであっては困るが……


 今回の招集は、斎賀には誤報のように感じられていた。

 ライジングアースが出撃する?

 それはまだ先のような気が、斎賀はしていたのだ。

 一方のシエスタは、今にもイングレスαに乗り込みそうにしている。

 蒸気した頬で、

「サイガ、待って。速いよ……」

 と、言う。

「兵士が音を上げない!」

 斎賀は叱咤した。


 ……



 斎賀とシエスタとは別々の部屋で着替え、ほぼ同時に作戦室に到着した。

 そこでは、すでにチーム・アマリの面々とボワテ大佐とが一通りの議論を終えていた。

 地図を広げて、作戦を練っている。

 ジェマナイの侵入だとしたら、そんな余裕をもってはいられないはずだが?

 斎賀は、やはり自分の勘はあたっていたかと思った。

 一方のシエスタは、今にも出撃しそうな勢いである。

 その場にはミューナイトもいた。

 うつむいて、黙っている。


 ボワテ大佐は、

「ご苦労、サイガ中尉、アレーテ中尉。今、こちらの対応を図っている」

 そう告げた。

 大佐のかわりに、チディ・マベナが状況の説明をする。

「現在、サウジアラビアの上空を、不審機が1機飛行してこちらに向かっている。速度からして戦闘機ではないと思われるが、爆撃機である可能性も否定できない。また、1機というのも当初の情報で、それ以降変化した可能性もある」

「ジェマナイですか?」

 斎賀は尋ねた。

「その可能性は低い。だが、オーストラリア空軍だったら、それも問題だ。現在、我々はオーストラリア共和国と軍事協定を結んでいない。また、アジア圏のどこかの国が独自に航空機を飛ばした可能性もある」

「まだ現状は不明ということですね?」

「そうだ」

 斎賀は、不穏な空気のなかで「最悪の事態でなければいいが」と思っていた。

 ジェマナイが統合戦線を空爆する可能性はある。

 むしろ、前線基地を攻撃するよりは、本土を襲ってくるだろう。

 現在捕捉されているのが、航空機ではなく、飛行形態のビッグマンだったとしたら……

 1個の都市を壊滅させるだけの戦力をもっていることになる。

「それは、ビッグマンではないのですか?」

「それも不明だ。だが、事前のサテライト群による情報では、ビッグマンが移動した、という報告はなかった」

「サテライト群も万全ではありませんからね……」

 斎賀の指摘はもっともだった。

 彼自身、そのことをよくよく知っている。


 ふいに、ミューナイトが口を開いた。

「味方のような気がします。……その機体」

 その発言に、誰もが息を飲んだ。

 味方?

 とすれば亡命者か?

 ……それは、良いニュースでもあれば、悪いニュースでもある。

 仮に、オーストラリア空軍の兵士が亡命してきたのであれば、ジェマナイをさらに刺激する可能性がある。

 その考えは、まるで腫物に触るかのような感触を、一同にもたらした。

 とくに、斎賀の心はぴりついた。

(情勢をやっかいにさせる……)

 と、心のなかで毒づく。


「もし亡命者であるとすれば……」

 と、ボワテ大佐が口を開く。

「我々は、彼らを受け入れる。この情勢下、味方は多いほど良い。だが、敵であれば……サイガ、ミューナイト。君たちにも出てもらう」

 決然とした口調だった。

 まるで、何かの事前情報を得ていたかのような……

 軍上層部でどんな話が交わされているのか、斎賀には図りようもなかった。

 ただ、現場にいる自分たちが、いかなる緊急事態にも備えなければいけない、そんなことを改めて思った。

サテライト群は地球全土を覆う汎地球ネットなのですが、局所的にクラックすることで航空機やビッグマンなどの移動を不可視とするクラッキングも可能です(斎賀なら可能)。なので、ガンダムとは別の理由でレーダーがあてにならない理由になっています。

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