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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第一部

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17/96

17.ユーマナイズ

ちょっと変わった展開です。

 ライジングアースの胸部ユニットが、不気味に光を放った。

 敵も味方も、息を飲んでいる。

 アコーディオにはロケットパンチを回収するための、一瞬の間が必要なはずだったし、アリューシャンはどうやらミサイル発射機構の冷却に時間がかかるらしい。


 ミューナイトは変形コマンドを解除した。飛行形態への変形動作が中断される。

 そして、軽くため息をついた。

 まだ、斎賀と完全に思考が一致するにはいたっていないらしい。

(わたし、パートナー失格だ)

 そう、ミューナイトは思った。

 しかし、それを思念通信で斎賀に伝えることはしなかった。

 もし、そうしていたら、そのままのミューナイトの気もちが、斎賀のヘッドアップ・ディスプレイに文字で表示されていたはずだ。


 ミューナイトは右手をコムナイト・グリッドから外して、コンソールを高速でタップする。

 多数のサブルーチンにまたがるコードを書き変えるさいには、手打ちで作業をしたほうが速いのだ。

 画面内の複数のサブルーチンのアドレスをタップして、同時に展開する。

 複数の窓で、ミューナイトの指が別々に踊った。

 ミューナイトは、7秒で、ライジングアースの中枢戦術サブルーチンを改ざんした。

 その間、斎賀は敵ビッグマンのハッキングコードを探している。


(バリアとかないのか? ミューナイト)

(たぶん、あると思う。でも、バリアは物理兵装だから、起動にコンマ数秒かかる。それに……)

 ミューナイトはすこしのあいだ戸惑う。

(それに、バリア稼働中は、こちらの攻撃も制限されると思う)

(それは敵も同じだな。だから、今は敵はバリアを解いている)

(それってチャンス?)

 ミューナイトが尋ねた。

(いや、どうかな。敵がバリアを作動させたら、こちらの武器が使えなくなる。この町にビッグマンを残しておくと厄介だ……)

 斎賀は慎重だった。


(それより、さっき見つけたらしい武器ね?)

(そうだ。やっているのか?)

 ミューナイトは返事をしなかった。

 どうも、ライジングアースの中枢戦術サブルーチンのカスタマイズに手こずっているらしい。

 メインコアは解読したが、それからクモの巣のようにサブルーチンが散らばっている。 

そして、それぞれが、自己認識サブとつながっているのも、異様だった。


 その数秒の間に、アコーディオとアリューシャンはじりじりと間合いをつめていた。

 アリューシャンが右方向に迂回先行して、ライジングアースの背後を取ろうとしている。油圧音が静かに鳴る。


(くそっ、ミサイルがもう2発あったら……)

 斎賀の心のなかのつぶやきは、ミューナイトにも伝わる。


 しかし、ミューナイトはなにかに集中している。

 再び、思考プログラミングでライジングアースの戦術サブルーチンメインコアをカスタマイズしている。

 ミューナイトの脳内のいくつかのシナプスが、ライジングアースの機体神経とシンクロした。

(やった……サイガ。これで、例の未知の武器が使える!)

 ミューナイトは手をたたいた。


(今だ。やれっ!)

 斎賀が思念でミューナイトに合図をした。


 ライジングアースの胸部のW字型のユニットが光りはじめる。

 ブゥゥゥン、という作動音がコックピットにも響き渡った。

 どうやら、これは攻撃の前段階?

(ビームなのか? レーザーなのか?)

 斎賀はすばやく思考を巡らせた。

 ビーム兵器であれば、たぶん広範囲照射で敵2体のビッグマンを沈黙させられる。

 一方、レーザー兵器であれば、少なくとも1体のビッグマンに致命傷を負わせられるだろう。照準はミューナイトにまかせる。


 アコーディオのスカート内のジェット噴射ノズルが煙を吐き出し、左手のドリルが高速で回転を始めた。

 突進攻撃をかけてくるらしい。

 くるぶし部分の油圧ブレーキシステムが解除され、油が噴出した。

 一方のアリューシャンは、ビルからビルへと飛び移るのをやめて、天井付近へと一気に上昇加速する。


(ちっ、上か!)

(大丈夫! 頭部バリアっていうのがあった。上からの攻撃は防げる!)

 0.3秒かけて、ライジングアースの頭部バリアが作動する。

(やれっ!)

 ブンッッッッ! と音を立てて、ライジングアースの胸から光が飛び出した。虹色に近い輝き……

 いや、それは起動時のフラッシュだった。

 実際には音波兵器らしい?!

 ブォォォォン! というすさまじい音が、ライジングアースのコックピットの外と内側に響き渡る。

 思わず、斎賀は耳を抑えた。ミューナイトもだ。右耳が痛そうだ……

 そして、空気のスペクトルが変わった。

 大気中の分子が、なにかの変換作用を経ているらしい。


 はた……と、アコーディオが動きを止めた。

 ドリルが、からからとゆっくり回転している。

 右腕のロケットパンチは有線ワイヤーをだらりと下げて、地面に横たわっていた。

 アリューシャンのほうは、依然として上空から特攻してくる。

 ライジング・アースは股間のジェットを噴射して、後方へと高速移動した。

 地面にアリューシャンのミサイルが突き刺さって爆発する。

 アコーディオは動きを止めたままだ。

 アリューシャンが着地して、大きく膝をかがめる。

 大量の砂塵!

 そのあいだも耳をつんざくような音が木霊している。

 どうやら、ただの音響兵器ではなく、人間やネオスの内耳に直接響くようなのだ……


 と……斎賀のヘッドアップ・ディスプレイとミューナイトの脳内に、敵からの緊急通信が入った。

(待て……わたしは味方だ。あなたたちへの攻撃を停止する!)

 とぎれとぎれの、うつろな声が響いた。

 どうやら、戦闘の意志を完全になくしてしまっているらしい。


 斎賀はあっけにとられた。ミューナイトもである。

 ──何が起こったのか?

 斎賀のヘッドアップ・ディスプレイには『HYU-MAIZE COMPLETED』という文字が大きく表示されていた。

 ミューナイトが、

「これは『ユーマナイズ』だって、ライジングアースが言ってる」

 と、つぶやいた。

 なんのことだか分からない。


HUMAN_FUNCTION : 65%

RESISTANCE_VALUE : 335(baseline) -> 221(crawling/sec)

HYU-MANIZED : 50%


 ヘッドアップ・ディスプレイには、そのように表示されている。

「HUMAN_FUNCTION」は、「人的関数」?

「RESISTANCE_VALUE」とは「抵抗値」のことだろうか?

 いずれにしても、攻撃の効果について記されているのは間違いなかった。


 アコーディオのパイロットは、どうやら斎賀たちの側に寝返ったようだった。

 とすると、敵は残りのアリューシャン1体???

 斎賀が戸惑った。

 ミューナイトは、ふたたび高速で演算をして、ライジングアースからのフィードバック・データを読み取って分析している。


「ライジングアースが『人間関数』と『抵抗値』がどうのって、言うの。わたし、わかんないよ!」

 ミューナイトが混乱したように叫んだ。


 敵の1体を無力化したものの、ライジングアースの攻撃システムがどういうものなのかが分からない。

 少なくとも、ビーム兵器でもレーザー兵器でもなかった。

 敵を倒すための武装ではないらしい??

 ……とすると、「ユーマナイズ」とは洗脳兵器?

 斎賀は、すばやく思考を巡らせて、考えを整理した。

 過去の、人類とジェマナイとの戦闘を思い出している。

 そこで出た答えとは……


「ユーマナイズ」とは、一種の洗脳兵器で、人間やネオスを感化する力を持っているのでは?

 これがアコーディオのパイロットに作用したことで、彼は攻撃を止めたのだ。

 ……でも、なぜ?

「人間関数」や「抵抗値」という言葉の意味を、斎賀は何度も心のうちで探索した。

 わからない。しかし──?!

「抵抗値」──これは分かる。

「人間関数」……それは、もしかすると、俺とミューナイトとのコミュニケーション能力ということではないのか?

 斎賀の動物的な勘と技術者としての経験が、そんなふうに不確かな答えを知らせていた。

ユーマナイズの謎はおいおい分かってきます。

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