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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第一部

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15/96

15.白昼の激闘

うーん。激闘なのか……とりあえず、ライジングアース、本格始動です。

ここまでで15章……遅っ!

「ミュー、敵のロボについて何かわかったか?」

 斎賀は、思わずロボという言葉を口にしながら、それでも平静にミューナイトに尋ねた。

 パンくずは予定通り機能しているようだ。

 目の前のモニタは、3体のビッグマンがパンくずを囲むように展開しているのが分かる。

 たぶん、熱源は2つあっても、そのうちの動くほうに照準を定めているのだろう。


「待って、サイガ。あなたの足元にHUDか何かない? 人間サポート用のツールがあるって、ライジングアースが言ってる」

「もうこいつと会話できるようになったのか? 早いな」

 驚いて、斎賀が言う。

「すこしだけね。五感を研ぎ澄ませるようにすると、この子のボディの各所についての情報が伝わってくるの」

「すごいな。ヒュー」

 思わず、斎賀は口笛を吹いた。


 いや、ミューナイトならやりかねない。

 ライジングアースのコア・プログラムをクラッキングして自分のものにしてしまいかねない。

 でも、彼女はそういうことをしていない。

 あくまでも、このビッグマンと一心同体になって戦うつもりなのだ。

「あった。ヘッドアップ・ディスプレイだな? 今装着する」

「頼むわ、サイガ。そちらにデータを送るから」

 斎賀がヘッドアップ・ディスプレイをかぶると、体感を刺激するように視野に情報が流れた。


1体はアコーディオ。第3世代のビッグマンで、重装甲・近接戦闘用。右腕のロケットパンチ・掴み攻撃が主武装で、殴り合い攻撃を仕掛けてくる。

2体目はアリューシャン。同じく第3世代のビッグマン。中速・遠距離戦闘用。ミサイル・追尾弾搭載、航空支援的に動く。距離を取って撃ち合うスタイル。

3体目はペトリューシカ……第3世代のビッグマンで、電子支援・撹乱用。短距離EMP・電子妨害・サポート兵装を装備。動きは小気味良く、他2体を補佐する。


(なるほど……)

 と、斎賀は思った。

 3体が過去に統合戦線の衛星国と戦った際の交戦データまで流れ込んできた。


「これは……アコーディオの背から突入していくのが良いな」

 斎賀が思案顔で言う。

「どういうこと?」

 と、ミューナイト。

「まず、ペトリューシカをやる。奴の電子戦装備はやっかいだ。こちらに電子兵装はないが、クラッキングが妨害されると戦闘がやりにくい」

「そうだね。ジェットでアコーディオの背後にまわる」

「うむ」

 パンくずの残り稼働時間は、1分半とHUDに表示されていた。


 今は高層倉庫や建築ドッグのあいまにいるから、ライジングアースの実体は補測されていないが、パンくずによるデコイ作戦がバレるのも時間の問題だろう。せいぜい45秒といったところか。


「良いことを思いついた。ミューナイト、敵のドローンをクラックしろ!」

 斎賀が、思わず叫んだ。

「なんで、それサイガのほうでできるじゃん。ライジングアースはあなたにも操作できるんだよ?」

「そうなのか? たしかにな……よし、できた」

 どうやら、ヘッドアップ・ディスプレイのなかで視線を動かしたり、まばたきをするだけでプログラムを操作できるらしい。

 これはかなり便利なシステムである。

 ミューナイトは、斎賀の適応能力も人間ながらにさすがだと思った。


「サイガ、ちょうど良いビルがあったわ。アコーディオの背後につけた」

「よし、最大速度で加速しろ!」

「ラジャー!」


 ライジングアースが地面を蹴って助走する。

 地面のコンクリートがめくれあがり、機体のまわりに砂埃が待った。

 それにしては、コックピットの内部は不思議なほどに静かである。

 斎賀は、ふとおかしい、と思ったが、今は気にしないことにした。


 ライジングアースの機体は、ほぼミューナイトの精神とリンクしている。

 つまり、ミューナイトが片足を上げたいと思考すれば、その通りに動く。

 右手を伸ばしたければ、そこからロケットパンチが出る。

 このロケットパンチはヴォルグラスのものと同様、有効な武装になりそうだった。


 ライジングアースが1棟のビルをぶちやぶって、アコーディオの背後に出る。

 ぎゅん!──という音。

 アコーディオが振り向くよりも数段階早く、その頭を蹴って宙に舞った。

 アコーディオのメインカメラが砕け散る。目の前には、ペトリューシカがいる。

 左前方に、アリューシャンが身構えていた。

 斎賀は何も動作をしていないが、ただミューナイトを信頼していた。

 どうやら、それはまるで奇跡のようだったが、斎賀の精神がミューナイトに同調するとき、ライジングアースの挙動は格段にアップするようなのである。

 そういうことを、斎賀はこの短時間(4~5分)の間に認識していた。


(ミュー、無理するな?)

 斎賀は心で言った。

 HUDの内部に、(わかってる)という文字が瞬く。

 話すよりも速いのだ。


 ライジングアースは高度40メートルほどの高さに舞った。

 そのまま、道路ともう一つのビルを飛び越える。

 そして、ペトリューシカの眼前に着地。ミサイル4発をすべて叩き込む。


 その直前……

(全部使っちゃっていいの?)

(かまわん。全部使え)

 という心理的な会話が、ミューナイトと斎賀の間で交わされていた。

 ペトリューシカの胴体部分が爆散した。

 右手と左手がばらばらに道路に落下する。

 両足は、地面を踏みしめたまま硬直している。

 腰から上が完全に吹っ飛んだ形だった。

 ミューナイトは、右腕、左腕、心臓、頭部それぞれ別々に照準を定めてミサイルを撃ち込んだのである。

 斎賀のヘッドアップ・ディスプレイには、『MISSILE:0』という表示が浮かぶ。

(ふーっ、やるじゃないか)

 と、斎賀もすばやく心のなかで思考した。


 ミューナイトはそのまま機体を50メートルほど滑空させると、急反転させた。

 が、アリューシャンのミサイルが迫っている。

 斎賀のヘッドアップ・ディスプレイのなかに、緊急事態を警告する赤ランプが点灯する。

(やばっ!)

(この街のなかで撃ってくるかわからなかったけれど……撃ってきた!)

 ミューナイトの頬が紅潮した。

 ──味方を犠牲にしてもかまわない。そんな考えへの怒りからだった。

 ミューナイトは、さっきのマリアの声も回想していた。

 その分、ライジングアースの挙動がわずかに狂った。

 もんどりうって転倒する。だが、それが良かった。

(しかし、斎賀は痛い。左肩を思いっきり壁にぶつけた)

 AI制御されたミサイルは、ライジングアースの向かうほんの少し先に着弾する。

 そして1発は、ミューナイトがクラッキングした敵ドローンに当たった。

 爆音と煙! 煙幕がライジングアースの姿を隠した。

 敵ドローンが、ライジングアースにとってはちょうどよいデコイとなった。

次章も戦闘続きます。

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