14.戦闘準備
タイトルそのまま戦闘準備です。
ライジングアースは、そのまま天井すれすれまで飛行して、逆噴射ノズルを作動させた。
中空で静止する、ライジングアース。
斎賀は、興奮もすでにおさまっており、冷静にミューナイトに確認する。
「ミュー、制御系は大丈夫か? お前一人で操縦できるのか?」
それに対してミューナイトは、
「だいじょうぶ。小指のグリッド接続部分で、わたしの神経パルスがライジングアースにつながっている」
「それって?」
「わたしの思考した通りに、ライジングアースは動いてくれるっていうこと」
「オーケーだ。じゃあ、俺はジャミングとクラッキング担当だな……」
ライジングアースにも操縦桿はある。
しかし、それは脳内の反射よりも肉体の動的な反射のほうが速い場合に作動する、いわば補助装置のようなものだ。
ライジングアースのAIは、ミューナイトの思考を感じ取って、そのままに動作することができる。
「わたし、ビッグマンの操縦は初めてだけれど……」
と、ミューナイトが静かに斎賀に話しかける。
「ん? それでなんだ?」
「わたし、なんだか好きになってきた!」
それは、明るい兆候だった。
ドーム・シェルターの開口部のシャッターが上昇している。
半分ほど開いたところ、ビッグマンの機体下部が見えた。
1体は、アコーディオ。
他に2体いる。
1体はアリューシャン、もう1体はペトリューシカとライジングアースのコンソールに表示された。
ジェマナイ側の戦術・戦闘・武装データがそのまま残っているのは、斎賀たちにとってはありがたい。
天井に接触しそうになったライジングアースは、そのまま急降下。
ムルマンスクの旧市街に、ぐしゃん、と着地した。
建物の影に隠れて、3体の敵ビッグマンは見えない。
コンソールには、障害物を透過する赤外線センサーで、3体の機影が映っていた。
いずれも、ライジングアースよりはやや小型らしい。
全高は25メートルくらいだろうか?
ライジングアースの戦闘コンソールには、第3世代型のビッグマンとして、詳細なデータが表示されている。
「ミュー、先制攻撃をしたいが、武装はあるか?」
「ある。両手のロケットパンチと、胸部にミサイルがあるはず。臨戦態勢になっていればだけれど……今は格闘戦しかないかも?」
「インジケーターの表示は?」
「残弾4……訓練の後みたい。膝関節に消耗サインがある」
「それじゃダメだな」
と、斎賀はつぶやいた。どこかで武器を見つける必要がある。
「ミュー、どこかに施設建設用のクレーンはないか? それを武器にする」
「今調べてみる」
ミューナイトが左手でコンソールを操作して、ドーム・シェルター内の構造をマッピングする。
「それ、神経接続とかでなんとかならないのか?」
「具体的なイメージを思考でライジングアースに伝えるより、手で打ち込むほうが早い。イメージ・マッピングはAIでも時間がかかるから……あった」
「なるほど。じゃあ、次からは俺の担当だな。そこに向かってくれ」
ライジングアースは、ふたたび地面から離れて、港へ近い方向へとジェットで移動した。
(なるほど、ここは工業地区をそのまま利用したというわけか……)
斎賀は、脳内にドーム・シェルター内の地理を思い浮かべる。
(ビッグマンの建造は航空機とほぼ同じ要領だが、ジェマナイは航空機の建造施設をそのままビッグマンの開発基地に流用しているんだな?)
「ミューナイト、さっきの倉庫に戻れ! まだ、爆弾が何かがあるはずだ」
「さっきの倉庫って?」
「俺たちがマンホールを抜け出たところだよ!」
「わかった」
ライジングアースが右にジェットを吹き、倉庫街に着地する。
目星をつけた一つの倉庫に、右腕をつっこむ。
指先のセンサーが倉庫内を走査する──あった。
「やったな。ここには戦車用の砲弾が格納されていたようだ、それをいただく!」
斎賀が、モニターを見ながら言った。
ミューナイトは、瞳に映るコンソールの画面と、右手の小指から流れ込んでくる情報の両方に注意を傾けている。
「わかった。あれを、つかめばいいのね?」
「『あれ』じゃ、わからんって」
「わたしが分かっていれば、大丈夫」
「そうだね」
「次はクレーン!」
ライジングアースは、地面を踏みしめながら移動していく。
工場地区にクレーンがあった。
本当にこのドーム・シェルターのなかの街は、元のムルマンスクそのものを残しているらしい。
「ミューナイト、うまくつかめるか?」
「もう爆弾のときにやってる」
「そうだったな。悪い……」
ライジングアースの左腕が、クレーンをつかんで引き抜いた。これで近接武器になる。
「そうだな、あの天井をぶち破れると良いんだが」
「無理だよ! できるけれど、瓦礫の下敷きになる」
「なるほど。破壊はされなくても動けなくなるか」
「天井の瓦礫の間をぬって外に出る自信がない」
ミューナイトが不満そうに答える。
斎賀が、後部座席のまえに備え付けられたモニタに何かを入力している。
「何してるの? サイガ?」
ミューナイトが、前を向いたまま、斎賀の行動を気にかけて尋ねた。
「ああ……今な。パンくずを1体に集めて巨大な人型の影を作ろうとしているところだ」
「あ。そういえばぱんくずがあったね? もっと撒いておくべきだった」
「間に合うさ。よし、終わった」
やや小ぶりなものの、巨大ロボットと同じくらいの熱源を、ライジングアースからは50メートルほど離れたところに作り出すことができた。
「俺たちの熱量を消すことはできないよな?」
念のため、というふうに斎賀が尋ねる。
「無理だよ。エンジンを切らないと」
「だな。良いんだな。……待てよ? エンジンを切ってくれ!」
「うそ! 再起動に30秒はかかるんだよ」
「それだけでいいんだ」
斎賀には何か考えがあるようだった。その間にもパンくずの熱源は移動していく。
戦闘は次章で。




