表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第六部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/139

121.砂漠の死闘(6)

ライジングアースとプライムローズの死闘です。

 死闘はなおも続いた。

 エアリアル・ステップを作動させながら、プライムローズにキックを浴びせるライジングアース。

 その切っ先は敵のメインカメラにあたって、ぐしゃりとユニットが潰れた。

 乗機を自分の体のように感覚しているパイロットであれば、すでに相当の痛みを感じていただろう……

 何よりも、照準の精度が格段に下がる。

 しかし、相手は抵抗をやめないし、撤退するそぶりも見せない。

 何かに取りつかれたように、ライジングアースを攻撃してくる。

 斎賀はあらためて、(これは、恐ろしい敵だ……)と思った。


 迷った後で、斎賀はミューナイトに伝えた。

(ミューナイト、覚悟を決めるぞ。この敵は殺さなければ倒せない。ユーマナイズが使えればよかったんだが?)

(だめだ、サイガ。この人は殺しちゃいけない。なんだか……そんな感じがする!)

 ミューナイトは抵抗した。

 あからさまな作戦にたいする批判は、この時が初めてだったかもしれない。

 斎賀は驚いた。

 その間、コンマ数秒。

(いつものミューナイトらしくない)

 と思う。……敵に感化されたのか?

 いや、そんなはずはないと斎賀には思えた。

 であれば、なぜ?

 今まで多くのネオスを殺してきているはずのミューナイトなのである。

 ──俺が甘いのか? ミューナイトが甘いのか?

 その思考がミューナイトに伝わらないように、細心の注意を払う。


(もはや、向こうも捨て身の攻撃になってきていないか?)

 と、斎賀は思う。

 その一瞬の躊躇が、致命的な判断ミスになった。

 高速で突進してきたプライムローズは、ライジングアースを避けるどころか、その両足でライジングアースの機体をがっしりととらえる。手が使えなければ足を──そういう作戦だ。

 当然のことながら、制動を失った両機は地面に向かって落下し始める。

 高度1500フィートからの落下である。

 ライジングアースはソードを握っていないほうの腕で、プライムローズを押し返そうとした。

 しかし、力が通じない。

 これは、機体の性能の差なのか? パイロットの腕の差なのか?

 斎賀は、じんじんと頭が痛むのを感じる。──このままでは、やられる!


(ミューナイト、腰部ミサイルを射出! いったんプライムローズの後方に逃がしたあと、やつの背中に命中させる!)

(了解、やってみる!)

 プライムローズは、だっこちゃん状態でライジングアースに組み付いている。

 斎賀は、ソードでの攻撃を止めて、自由になっている腰から下での攻撃に切り替えた。

 250メートルほど飛んでいったミサイルが急旋回して、自分たちとプライムローズに向かってくる。

 体をひねって躱そうとする、プライムローズ。

 しかし、躱しきれない。

 落下態勢のまま、ライジングアースの放ったミサイルは、プライムローズの右足と背中に当たる。爆音。

(やったな! これで拘束を解ける!)

 斎賀は、一瞬幸運に包まれたように思った。

 ミューナイトの言うように、相手を殺さずに勝つことも可能かもしれなかった。


 ……しかし、それもさらなる判断ミスだった。

 右半身の制動が自由になったプライムローズは、そのまま右腕のハイ・フリークエンシー・ソードをライジングアースの喉元に突き付けてきた。

 ミシリ! と音を立てて、プライムローズのハイ・フリークエンシー・ソードがライジングアースの頸部を貫通する。

 コックピットの直上である。

 コックピット内にスパークが走った。

 とくに、斎賀の位置に衝撃は強く伝わった。

 電磁スパークが斎賀の脳内に流れる。

「うおおおおおっ!」

 斎賀は叫ぶ。

「サイガ、大丈夫なのか?! 無事なのか!?」

 ミューナイトも、思念通信を忘れて叫んだ。

 ミューナイトは焦る。

 狭いコックピットの中のことなのに、斎賀一人の安否すら確認できない。

 彼女は人間の、ひいてはネオスの限界を思い知った。

 ミューナイトは抵抗の手段として、必死でハイ・フリークエンシー・ソードをプライムローズの胸元に突き付ける。

 胸部装甲にめり込む、ハイ・フリークエンシー・ソード!

 敵のカーネルを停止させた……。


 そのまま、2機の機体は砂漠にむかって落下していく。

 ロボ(ビッグマン)のコックピットにはショック・アブソーバーが装備されているから、地面に叩きつけられて即座に死ぬということはない。

 しかし、その衝撃は相当なものだった……。だろうと思われた。

 というのは、多くのネオスにとってもそうした衝撃というものは未知なのだ。

 ミューナイトは思わず奥歯をかみしめる。

 ズシン、という衝撃。

 2つの巨体が、砂漠に突き刺さった。

「サイガ、大丈夫か?! サイガ、返事をしてくれ!」

 ミューナイトの声は、コックピット内部の静寂な空間に吸い込まれた。

 斎賀は意識を失っていたのである。

 ……ただ、ジジジという低い電子ノイズだけがコックピット内に走っている。


 ──


 セラフィアはすぐに状況を確認した。

 だめだ──計器類がすべて死んでいる。

 カーネルもやられたらしい……ライジングアースの剣がプライムローズの胸部を貫通している。

(これは、動けないな)

 と、セラフィアは即座に直感した。

(すると、自分は統合戦線の虜囚となるのか……?)

 ネオスは、たとえば敵の虜囚になるといったことについて、屈辱には感じない。

 単に、演算のパターンが以前とは異なるものになるだけである。

 人間でいえば、「転向」に近いものだろうか?

 しかし、このときのセラフィアには統合戦線の捕虜になる、という選択肢はなかった。

 たとえ捕虜になったとしても、リュシアス一将は講和の条件として、セラファイアの引き渡しを要求してくれるだろう。

(……しかし、それではだめなのだ)

 なにがだめなのか、彼女自身にもよくわからなかった。

 ただ、AI脳の演算結果だけが、「そうではない」と伝えている……

 幸いなことに、現在のライジングアースは作動を停止しているらしい。

 電力不足による、一時的なデフォルト状態だろう。


(ヴォルガ二将は、戦闘空域から離脱できたのだろうか?)

 作戦上、そんなことがセラフィアの胸をかすめる。

(しかし、ヴォルグラスが墜落した地点より、ずいぶんとバグダッドよりに来てしまっていた……)

 ──これではまずいな、とセラフィアは思う。


 セラフィアはコックピット・ハッチの外に出た。

 そこは高さにして、10数メートルはある。

 そこから、セラフィアは思い切ってライジングアースの機体へとジャンプする。

 ちょうど肩の部分に着地できた。

 コックピットはプライムローズと同じく頸椎の部分だろう。

 さきほど、頸部をハイ・フリークエンシー・ソードで貫いたから、敵にも相当のダメージを与えているはずだ。

 しかし、ここは慎重になるに越したことはない。

 ゆっくりと、歩みを進めていく。

 そのまま、コックピット・ハッチへとたどり着いた。

 セラフィアは、胸ポケットから夜光虫を取り出す。

 クラッキング専用のナノマシンである。

 それを、ゆがんだハッチの隙間からコックピット内に差し入れる。

 十数秒後、ライジングアースのコックピット・ハッチががしゃんと音を立てて開いた。

 セラフィアは、手にピストルをもっている。

 そこにいたのは、一人の人間と一人のネオスである。

 ──トムスクでその存在を感じ取った、斎賀とミューナイトだった。

セラフィアは新たな行動に出ます。第六部はこれで終了で、次回からは第七部になります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ