12.ライジングアース奪取!
やっと出てきます。
ビッグマンNNN‐3は、山側のドーム出口へとむかってゆっくりと歩いていた。
フルスロットルではないらしい。
そもそも、あのビッグマンに飛行能力はあるのだろうか?
従来型のビッグマンに比べて、すこし大型のようだが?
斎賀は、せわしない時間のなかでもそんな思いをめぐらしていた。
ミューナイトが、彼の腰にしっかりと手をまわしてつかまっている。
彼らの乗るドローンは、あっという間にNNN‐3に接近する。
機銃の音が響いた!
警戒されていたと見える。
(なるほど、やつら。人間とネオスの2人だと思って、あなどったな?)
斎賀は、ポケットに潜ませていたコンパクト・タイプのジャミング・システムを取り出した。
これは、兵器類のAI照準機構をクラッキングして、射線をゆがませるというものである。
キューイーーーン!
という音を立てて、コンパクトがうなる。
(このタイプは、人間の生身にも害がある、というのが難点だな……しかし、サテライト群が機能していないこの状況では、都合がいい)
斎賀が足元のペダルを踏んだ。ドローンが急上昇する。
高射砲が目標を失って、ドーム天井にパ、パ、パンという当て外れの弾を打っている。
ローカルネットでは、目標の位置・方向分析にやや時間がかかるらしい。
これも、助かった。
「ミュー、パンくずはこちらに向けているか?」
斎賀が叫ぶ。
「やってる。急いでビッグマンの足元に集めている」
「そうだ。奴らはどうせAI照準だ。人間を準備していなかったのが、やつらの仇になる」
「それくらいは、ジェマナイも予想していたと思うけれど?」
「人員削減だな!」
「人間嫌いのせいかも……」
そんな冗談を言い合っているうちに、ドローンはNNN‐3の頭の上に。
敵側からもドローンが出てきた。
この間45秒。
思っていたよりも早い。いや、想定内だ。
ドーム内の低い空のうえで、ドローン同士が交錯する。
敵兵士(人間だろうか? ネオスだろうか?)が、ライフルを構えている。
「ミュー、撃て!」
「了解!」
ミューナイトが何発か銃弾を発射する。
こちらは、AI脳の目視による正確な射撃である。
何人かの兵士が銃弾をくらって、地上に落下した。人間らしい……
(ネオスではなかったか。後味が悪いが、今は助かった)
「気をつけろ? ミュー。外のビッグマンも動き出すぞ!」
「それは、NNN‐3を奪ってから!」
「その名前、嫌いじゃなかったのか?!」
空中戦の最中で、声も自然と高くなる。
斎賀は、いくつかのドローンをかわすと、NNN‐3のコックピットらしいハッチにドローンを取りつかせる。
と思ったが、再びドローン上の兵士による攻撃。
斎賀のドローンは、再度急上昇。
ミューナイトが敵兵を狙撃する。
遠くで、がさりと人の落ちる音。
ミューナイトは表情を変えない。
ネオスにとって、やはり人間は異種族なのだろう……と、斎賀は思う。
何度かの空中での交錯を経て、斎賀は3度目にNNN‐3のコックピット・ハッチにとりついた。
マグネットが、かちりとした音を立てる。
ポケットから携帯小型汎用レーザーを取り出して、ロック箇所らしい部分に押し当てる。
ウィン! と鳴って、レーザーが作動する。
レーザーを握りしめている、右手に負荷がかかる。
取り落としそうになるが、必死にこらえる。
「痛い、が、ここで負けんな、俺!」
斎賀は唇をかみしめた。
「ミュー、夜光虫を!」
「わかった」
ミューナイトが、ポケットから新しいナノマシン兵器を取り出す。
見た目は、人間が飲む錠剤の飲み薬のような形状だ。
それを器用に指でひねって、ミューナイトはハッチの溶解した部分に押し当てる。
ハッチの焼け焦げた部分から、ナノマシン型のドローンが侵入していく。
夜光虫とは、システムのクラッキングに特化したナノマシン・ドローンだ。
これで、内部でロック機構を破壊して、ハッチを開けることが出来るだろう……
あとは、開錠までのあいだ敵の攻撃を防ぐことだ。
一度クラッキングされて効力を失った武器は、リカバリーまでに時間がかかる。
斎賀がクラッキングした機銃類も、依然としてドーム天井に銃弾を放っている。
ドローン群はいまだに飛び回っているが……斎賀のコンパクト型ジャミング・システムでは、飛行機能まではクラッキングできないのだろう。
斎賀は、旧式の武器と最新の武器を場面に応じて器用に使い分ける。
「マジシャン」というコードネームが伊達ではないと、ミューナイトは思った。
「ミュー、夜光虫は何秒で機能する?」
「侵入までに1分。クラッキングは2秒もかからない!」
「おう。どうやら、お前も興奮してきたようだね? おりこうさん!」
ドローンをNNN‐3のハッチから離脱させて、また数度敵のドローンと交戦する。
そのなかに、子ルーチンらしい兵士が何人かいた。
死闘の末に、打ち倒す。
ミューナイトがほっと息を吐いた。
やはり、同じネオスとの対峙では緊張するらしい。
ミューナイトのAI脳が、高速で演算し、敵ドローンの飛行した航跡から、次の位置を予測する。
さらに、敵をかわすためのドローンのあるべき位置を斎賀に伝えつつ、おとり弾と、本命の弾を発射する。
それで、完璧だった。
「サイガ、敵の子ルーチンが『カミカゼ』タイプじゃなくて、良かったよ」
「だな。人間もネオスも、自滅上等なんて、歓迎したくないぜ!」
斎賀が、4度目にコックピットにとりついた。
ミューナイトが、ドローンから飛び降りて、ハッチを開放する。
ビッグマンのコックピット内部から、驚いた顔が彼らを見上げた。
人間が1人。ネオスが1人──と、斎賀は見た。
「降りろ! このビッグマンは俺たちがもらう!」
どうやってライジングアースを奪うかはいろいろ考えたんですが、こんな感じです。




