表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第六部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/139

115.バグダッド攻防戦(18)

決戦前の対話です。

「やはり、わたしが出なければいけないか? ヴォルガ二将」

 と、MVモデリング・ビジョンごしにリュシアスは言った。

 この日の戦闘では、ヴォルガだけが待機を命じられていたのである。

 リュシアスが、その声だけでなく姿をも現すのは珍しい。

 しかも、今日は仮面を取って話している。

 ヴォルガ自身にとっても、リュシアスの素顔を見たのは、これで10度を上回らなかった。


「いいえ、一将。一将自らがお出になるとすれば、それはこの戦闘行為が国家的な規模のものであると、統合戦線に知らしめることになります。早計はお考え直しになったほうが、賢明かと思います」

 ヴォルガはそのように答える。

「しかし、貴官らの作戦では成果が出ていないように思われる。粒子気化爆弾使用のこけおどしも、もう通用しないぞ?」

「は。わたしも不覚を取りましたが、セラフィア三将も苦戦しているようです。やはり、例の兵器がカギになるかと……」

「ユーマナイズか。敵は厄介な武装を持った、ということになるな。しかし、それは敵にとっても諸刃の剣なのではないのかな?」

「と、申しますと?」

「敵がネオスを切り捨てるとあれば、ユーマナイズは使い放題だったろうが、そうなるだろうか?」

「そういうことでしたか。わたしも、ユーマナイズは限定兵器だと考えています。量子かく乱フィールドによる防御も効果があるかもしれません」

「それは……過度に期待しないほうがいいな」

 と、リュシアスは十分に考えつつ言った。

 その真意がなへんにあるのかを、ヴォルガは探り得ない。


 これが、あの「死神」と恐れられている女でなければ、自分も惚れてしまったかもしれない、とヴォルガは思う。

 現在のリュシアスとヴォルガは、一将と二将という主従の間柄だが、この軍事行為で自分が昇進すれば、その懸隔はなくなる。

 しかし……とも思う。

 この氷のような女を恋人にしたところで、自分に何か益するところはあるのだろうか。と。

 リュシアスは、まさに「国体」なのであって、「政治家」でも「軍人」でもない。

 自分のような、戦術に特化した武人が相手にできる存在ではなかったし、手玉に取ることもできないだろう。

 今後の昇進があっても、自分とリュシアスとの間の差は埋まらないままなのである。


「一将がもしお出になられるのであれば、それはあのブラックスワーンダーで、ということになりますね?」

 ヴォルガもまた好奇心を露わにして言う。

「そうだが、それがどうかしたか?」

「そうであれば、機体のメンテナンスは万全にしておくのが良いかと思われます。あのユーマナイズは、ビッグマンのAIにも作用するようですから」

「ああ、わかっている。ジェマナイの研究班でも、ブラックスワーンダーの戦闘データを基にして、そのような結論が出ていたところだ」

「であれば、良いのですが……」

 ヴォルガは、若干頭を低くした。

 重要なことを言い出そうとしているのである。

「やはり、バグダッドごとライジングアースを葬る、という気にはなれませんか?」

「そうだな。それも考えた」

 ──と、リュシアスは一呼吸を置いた。

「しかし、それではわが軍も無傷では済まないだろう。セヴァストポリの時とは、すでに事情が違っている」

「それは、どういう意味においてでしょうか?」

 ヴォルガは尋ねる。

「統合戦線は、今後もはやユーマナイズの使用も核の使用もためらわないだろう、ということだ。ジェマナイが国家を逸してしまっては、元も子もない」

「おっしゃる通りです。だからこそ、今しばらくの間は我々にお任せになってはくださらないかと、愚行する次第です」

 唇のはしににやりとした微笑をひそませながら、それでも慇懃にヴォルガは言う。

「粒子気化爆弾は使用しない。その代わり、劣化ウラン弾の使用を許可しよう……」

 リュシアスは、それだけのことを口にした。


「了解しました」

 そう言うと、ヴォルガはMVを切ってヴォルグラスが待機している滑走路へと歩いていく。


 ──


「整備班、DU弾の配備状況はどうなっている?」

 と、パスタヤーンストヴァの滑走路上でヴォルグラスに騎乗しながら、ヴォルガは尋ねた。

「はい。リュシアス様からの厳命で、許可を受けた機体以外では使用しないように、とのことです」

「そんなことはわーってるんだよ。俺の機体では使用できるの?」

「はい。ヴォルグラスでの使用は可能です」

 と、慌てたようにジェマナイの整備班員が答える。

(ちっ、これだから……)

 と、ヴォルガは内心で吐き捨てる。

 現場はユニバーサル・デザインということを考えていない。トップは指令系統のことだけを考えている。

(俺のような武人がいなければ、武器一つまともに使いこなせないじゃないか……)

 そうこうしているうちに、ヴォルグラスの機体にハンドランチャー型の武器が装備された。

 ──よしよし、命令さえ通ればあとはお利口だ。と、ヴォルガは思う。

 DU弾の発射に際しては初速が重要だが、この武装で問題ないだろう。

 これなら、ライジングアースの両腕を砕くこともできる。

 ヴォルガはにやりとした。

「ヴォルグラス、発進する! 無人機の援護もつけてくれよな?!」

 ヴォルガは、無線機に向かって叫んだ。

「了解しました。戦場では、セラフィア三将の援護をお願いします!」

「あいよ~」

(やれやれ、俺が援護かよ。やっぱり後方勤務はいかんな)そう、ヴォルガは思うのだった。


 砂漠から離陸して、10分も経たないうちに、バグダッド市街が見えてくる。

 あちこちで煙が上がっているのを、飛行形態で上空を飛行しながら、ヴォルガは悠然と見下ろす。

「さてと、ライジングアースちゃん。きちんと僕に狙いを定めてよ?」

 そんなことをつぶやいた。

 バグダッド市内の官庁街に向けて、劣化ウラン弾を撃ち込む。


 イラク陸軍は騒然となった。

 ジェマナイは核を使用したわけではない。

 しかし、官庁街に向けて劣化ウラン弾を撃ち込んできた。

 市街地の汚染は、これから数十年続くと言って良い。

 ヴォルガの駆るヴォルグラスは、ハイファ通りにむけてさらに何発かの劣化ウラン弾を撃ち込んだ。

 完全に、市民生活を犠牲にすることを見越しての攻撃である。

「これがジェマナイのやり方なのか!?」と怒る士官たちもいた。

 シャダム・アルリクは、これはジェマナイにしてあり得ることだな、と考えた。

 つい先だっても、クリミア半島で粒子気化爆弾の使用をほのめかしたばかりだ。

 そもそも、ジェマナイを国と言って良いのかどうかさえ分からない。

 必要であれば、味方ごと敵を吹き飛ばす……そういう怖さがジェマナイにはあった。

 それだけに、現在のイラクをジェマナイの手に渡してはならない、とも思う。


「チャラビー少尉、敵の目的はライジングアースなんだろう? なんとかライジングアースだけを奴にぶつけられないかね?」

「無理を言わないでください、大佐。ライジングアースは統合戦線の機体です。我々とは指揮系統が違います」

「だって、向こうのパイロットは中尉と少尉なんだろう? なんとか無理が利かないかな?」

「無理ですってば。アレーテ中尉への求婚を考えた後は、指揮系統無視の作戦ですか? 勘弁してください。大佐の無謀には従います。しかし、無茶にはついていけません」

 チャラビー少尉は必死になって言い募る。

 もちろん、彼とてライジングアースが矢面に立ってほしいという気持ちはあるのである。

 しかし、アルリク大佐の軽口は、ときどき軽口の限度を超えている。

 やれやれだ、とチャラビー少尉は思った。

「だよなあ~。せめてシエスタちゃんがわが軍にいればなあ……」

「また、それですか……」

 チャラビー少尉はただひたすら呆れて相槌を打った。


ジェマナイが劣化ウラン弾を使用します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ