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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第六部

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113/142

113.バグダッド攻防戦(16)

ノルニールのパイロット、アーシャ・ロウラン三尉について。

 ノルニールに乗っているアーシャ・ロウラン三尉は、自分が無双を行っている、という自覚はなかった。

 イラク軍と統合戦線の攻撃が前日より厳しい、ということは把握していた。

 ジェマナイは、敵戦力の壊滅よりは敵市街地の壊滅にいったん舵を切り替えた。

 人間である自分にジェマナイの意向は図りようもなかったが、命令には従う。

 敵が「抵抗しよう」という意欲を削ぐ目的であろうと思われた。

 そこに「理想」があると見てとってのことである。

 戦士は、希望がなければ戦えないのだ。


 ノルニールは第3世代のビッグマンだが、バランスの取れた機体である。

 第4世代のビッグマンほど攻撃能力には優れていないが、試作機だけにさまざまなアイディアが取り入れられている。

 とくに、ロケットパンチの代わりに装備されたスパイラル・カッターは、有用な武器だった。

 敵の戦車やビルを切り裂いていく。

 アーシャ・ロウラン三尉は、慎重に目標を定める。

 なるべく、人的損害が少なく、経済・政治的損失が大きいような建物を選んで攻撃した。

 例えば、地下鉄の駅、貨物倉庫……。

 人間である自分が人間を滅ぼそうとしている、という思いには耐えられなかった。

 彼女はジェマナイの戦士だったが、その前に人間の一戦士だった。


 現在は、コバルトレオ一曹のリントヴルムと、ニクス=EA一曹のサロメが支援してくれている。

 統合戦線のイングレスαやイラク陸軍のエニグマムスタング2は、小うるさいだけの雑魚、というわけにはいかなかった。

 3人の連携がなければ、自分もいまごろやられているだろう……と、顧みるだけの余裕はロウラン三尉にはあった。

 それでこそのチームだったとも言える。


 ──


 チディ・マベナもアーシャ・ロウラン三尉のノルニールをとらえていた。

 すでに、市街地の奥深くまで侵入している。

 現在、レーダーよりも目視のほうが敵を視認しやすい。

 ノルニールと呼ばれる機体のほか、2体のビッグマンが連携行動を取っている。

 ノルニールはバグダッド中央駅を攻撃中だ……

 インフラを破壊されるのは、イラクにとって厳しい損失をもたらすことになる。

 なるべく被害の少ないうちに敵のビッグマンを撤退させたかったが……

 ビッグマンに比べると、街の建物はいかにも小さく見える。

 それだけ、ビッグマンは驚異的な武器なのである。


 現在、バグダッド市内のど真ん中で暴れているビッグマンは3体いるが、アレーテ中尉はそのうちの人間が操っていると思われる機体を狙えと進言してきた。

 たぶん、それがリーダー機であろうから、ということだった。

 チディ・マベナもその判断は正しいと思う。

 通常、ジェマナイでは人間が上の立場に立つことは珍しい。

 だが、今回のケースではそうではない。

 とすると、敵はよほど優秀な人間なのである。

 これは、有能なネオスを相手にするのよりも手ごわい……とマベナは思う。

 さまざまな意味で、アレーテ中尉の判断は的確なのである。


(アレーテ中尉の進言を入れたが……さて、功を奏するかな?)

 と、チディ・マベナは思った。

 敵のビッグマンもそんな甘い防備は施していないだろう。

 AAMの20連弾、という攻撃に対抗策はすでに講じているであろう。

 とすれば、どうするか?

 自分が突出してクラッキング・キーウィを作動させる、という手もある。

 しかし、これには自分が撃墜されるという危険性がある。

 リーダーが自ら死を求めていてはいけないのである。なんとしても、生き残らなければならない。

 それが、部下にたいして示す姿勢というものだ。

 チディ・マベナは弁えていた。


 ──


「アレーテ中尉、貴官が射線の誘導をしてくれ。つまり、敵の目の前に飛び出てくれ、ということだが、できるか?」

 チディ・マベナは無線に向かって語り掛ける。

「もちろんです、わたしがやります。やらせてください」

 と、シエスタ。

「このAAMの20連弾ですが、二方向から攻撃する、というのはどうでしょう?」

「というと?」

「わたしとアマラ少尉で、別方向からの攻撃をしかけます。敵の注意力を分散させる効果があるかと……」

「それはそうだが、貴官の狙っている機体は他の2体にサポートされている。こちらの攻撃を分散させるのは良くない」

「ですが、やってみなければ攻撃の効果は分かりません」

「たしかに、そうだな。それも一理ある。貴官の意見を採用しよう」

 その間30秒ほどの通信である。チーム・アマリの命令伝達系統は素早い。統合戦線のなかでも随一の実力を誇っている。

 しかし、シエスタにはその前に確認しておきたいことがあった。

 イラク軍の地上部隊を指揮しているのは、いったい誰なのか、ということだ。

 イラク陸軍との連携が取れれば、より攻撃の精度は増すのである。

「イラクの地上部隊、誰が指揮しているのですか?」

「シャダム・アルリク大佐だ」

「シャダム・アルリク……」

 シエスタは低くつぶやいた。


──


 リントヴルムとサロメは、すでにノルニールの支援体制へと動き出していた。

 足元にまたぞろイラク軍のアリたちが集まってくる。

 3名とも、人間をスモールマンと侮ってはいなかったが、厄介な敵であることに変わりはない。

 統合戦線の空軍部隊もこちらに狙い定めているようだ……

(また、メインカメラを狙ってくるか?)と、アーシャ・ロウランは思った。

 自分はネオス兵ほど視力に優れているわけではない。

 だから、メインカメラを破壊されたことによる攻撃能力の損耗ということについて、それほど意識する必要はなかった。

 しかし、ビッグマンとて一つの兵器である。

 主装備が破壊されて、無事継戦行動がとれるわけではない。それも分かっていた。


 たしかな予感があったのだろう……

 アーシャ・ロウランが、ビッグマンのジェットを噴射して飛びすさる。

 それが、統合戦線とイラク軍に一瞬の隙を生んだ。

 そのままスパイラル・カッターを射出して、戦車隊に切り込むと、退避行動に移った。

 リントヴルムとサロメもそれに続く。

 立つ鳥は後を濁さないのである。

 各機が放射状にミサイルを発射して、いくつかの航空機を撃墜した。

 シエスタとチディ・マベナも一瞬ひるむ。

 やられた──編隊再編の機会を狙われた。とシエスタは思う。

 マベナ大尉も同意見である。

「残念だったな、アレーテ中尉。しかも、そもそも人間相手でメインカメラへの攻撃は意味がないかもしれん」

 二重の正論で、シエスタは落ち込む。

 慰めるようにマベナ大尉が言った。

「帰ったら報告書をわたしが書こう。どうやら、ジェマナイにも強敵がいる」


 ──


 一方のアーシャ・ロウランも敵を侮っているわけではなかった。

「あの機体……あれがアレーテ中尉だろうか。セヴァストポリ戦でも活躍したようだったが……できるなら味方につけておきたかったな」

 そんなふうに、撤退するコックピットのなかでつぶやく。

 コバルトレオ一曹とニクス=EA一曹が同意する。

「彼女のクラッキング攻撃は強力です。あのヴォルガ二将もいっぱい食わされたのですから……」

「そうだな。敵を称えるに越したことはない。今は称えておこう」

「あなたの一瞬の判断がなければ、我々はやはりやられていたと思います。イラク陸軍も強敵です」

「そうかもしれない。この戦功を無駄にしないように心がけよう」

「同感です」


 ──


 ところで、イラク陸軍のシャダム・アルリク大佐は快哉を叫んでいた。

「っしゃーーっっっ! 敵を撃退したぞ、チャラビー少尉!」

 チャラビー少尉は冷静だった。

「今のはどちらかというと、こちらに大損害が出ないうちに引いてくれたっていう感じですけれど」

「俺、アレーテ中尉に求婚しようかな?」

「やめてください、現場が浮つきます」

 チャラビー少尉は冷静だった。


陽気なシャダム・アルリク大佐です。

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