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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第一部

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11/96

11.見当違い

今回はジェマナイ側から始まります。

 トムスクにあるジェマナイの指令室E‐35の室内で、リュシアスはセラフィアと顔を合わせていた。

 モデリング・ヴィジョンMV(立体投影装置)のスイッチを入れて、静かに話し始める。

 MVには、ムルマンスクの地形が映し出された……


「お前も知っている通り、ネズミがムルマンスクに潜入した」

「ということは、NNN‐3の存在を、統合戦線も知っていたということになります」

 リュシアスの固い口調にたいして、セラフィアはやわらかに返す。


「その通りだ。秘匿開発実験がひと段落していたのは、幸いだった」

「はい」

「この1日半、動きがないかと探っていたが、静かなものだ」

「ええ……」

「それで、NNN‐3の配備先を移すことにする」

 決然と、リュシアスが言う。

 ただ、その裏にはネズミをあぶりだせなかったという苦さがある。

「では、エカテリンブルグに移動させますか? それともこのトムスクに?」

「うむ。ヴォルガがやってくれれば、こんなに急ぐ必要もなかったのだが……」

 銀白の仮面の奥で、リュシアスが険しい口調でつぶやく。


(ヴォルガめ……油断したな。全治1カ月だということだが……)


「で? どちらに?」

「エカテリンブルグだな」

「それは、良いご決断で」

 と、セラフィアが相槌を打つ。


「そうだ。もう、NNN‐3の臨界試験は済んでいる。いよいよ実戦ということだな」

「いささか早くありませんか?」

「しかし、現にネズミは侵入した。イングレスの大部隊が来たらどうする?」

「そのときはビッグマンで……」

「ビッグマン1機が、イングレス100機を相手にできるか?」

 リュシアスは現実的な見通しを言うのだった。

 セラフィアも、統合戦線が今すぐにそのような大部隊を動かすとは思えないものの、リュシアスの考えを否定できなくもあった。


「ムルマンスクに通信しろ」

「もう、やっています」

「早いな?」

 リュシアスは、仮面の奥で口元をほころばせた。


「マリアという子ルーチンに通信しました。ビッグマンを至急移動させろと……」

「司令には話していないな?」

「話していません」

「奴は人間だからな……」

「いい加減、人間を信用することはやめたほうが良いのでは?」

 セラフィアは、リュシアスが現実家だということを知っている。

 それだけに、ムルマンスクの指令に人間を立てていたことに、すこし不審の念を抱いている。


「そうもいかぬ」

 リュシアスの口調は、やはり苦い。

「NNN‐3のAIには、わたしが直接アクセスしておきます」

 と、セラフィア。

「頼む……」


 ──


 マンホールから顔を出した斎賀は、顔をしかめた。

 そこは、ビッグマンの製造施設とは違う、倉庫のような建物の前だった。

 ミューナイトを引きあげて、あたりを見回す。


 150メートルほどの距離のところに、威容がそびえていた。

 NNN‐3である。


「あれか……」

 斎賀は、軍用双眼鏡でNNN‐3の姿を確認した。

 装甲板の構造から、従来型のビッグマンと同様、首の部分にコックピットがあるらしいと分かる。


「マリアというネオスが手引きしてくれることになっていたんだが……ここからでは、連絡はとれそうもないな?」

 斎賀がつぶやく。

ミューナイトは、

「マリアの局所隠密通信の通信半径はどれくらい?」

「25メートルと聞いている」

「なら、大丈夫かもしれない」

「どうするんだ?」

「わたしの拡張AI通信が使える。やってみる」

「頼む」

「まずは居場所から探すわ……」


 斎賀は歩き出した。その倉庫のような建物のなかになにかないかと考えたのである。

 斎賀の勘はあたった。

 1人乗り、いや、2人乗りくらいか? のドローンがある。

 ここはどうやら、廃棄された旧ロシア軍の施設らしい。

 ドローンは旧式だが、逆にジャミングの影響を受けなくていい。

ロートル万歳、である。

(俺もそろそろロートルか……)

 と、斎賀は心のなかで愚痴を吐いた。


「マリアと連絡がついた、サイガ」

 ミューナイトが斎賀の後ろから歩いてきて、彼に声をかけた。


「早かったな?」

「潜入工作員の周波数なら、いくつかクロールすれば割り出せるから……今話してる」

「なるほど、便利なこって」

「大変だ、サイガ! ビッグマンが移動する!」

「なんだって!?」

 それは一大事だというように、斎賀が振り返った。

「今さっき命令されたものらしい……わたしたちの到着のことを考えたら、遅すぎたともいえるけれど」

 ミューナイトが、矢継ぎ早に話す。

「敵に同情するな……どうした?!」


 ミューナイトが呆然と立ち尽くしている。

 その青白い顔が、いっそう血の気を失って青くなっている。

 斎賀は、ただちにただごとではないと気付いて、こう言う。

「ミュー、考えるな!」

 なにが起こったのか、斎賀にも見当はついた。

 マリアが捕縛されたか、殺されたのだろう……


 がくん、と地面が揺れた。

 150メートル先のビッグマンNNN‐3が動きだしている。

 ムルマンスク旧市街地の建物がゆれて、いくつかの窓ガラスは割れている。

 NNN‐3の全高はだいたい30メートル。とすると、歩幅は13メートルくらいか。


 ミューナイトの表情はゆれていた。

 それが、表情の奥にあるAI脳そのものの震えだということが分かる。

 短い断片通信の切れ端──「もう遅い」──だけが残り、次に入った映像フラグメントは黒くにじんでいた。

 ミューナイトの声が崩れた。

「マリアが……殺された」

 そこに救いはなかった。

 彼女の言葉は、雪に吸われるように薄れた……その間、数秒。


「くそっ。歓迎したくないけれど……ジャストなタイミングだね?」

「サイガ、冗談を言っている場合じゃない。ビッグマンに逃げられる」

 ミューナイトはすでに冷静を取り戻していて、即座に斎賀に答えた。

「わかっている」

 斎賀は駆け出して行って、軍用ドローンのエンジンをかけた。

 ラッキー。エンジンがかかる。

 低空をホバリングして、ミューナイトに接近する。

 ミューナイトが地面を蹴り上げて、それを斎賀がキャッチした。


「サイガ。マリアが死んだ……」

「そういうことは、後だ!」

 斎賀が前方だけを凝視しながら、叫ぶ。

 中空には、あいかわらずビッグマンが地面を踏みしめる、轟音が響いている。

 たぶん、ムルマンスクの港湾方面から、中心市街地のほうへと向かって歩いていくのだろう。

(出口は……山か??)

 斎賀が、人間としては驚異的なスピードで思考を巡らす。


 倉庫のテントを抜けて、ドローンが空に飛び立った。

 あっという間に、40メートルほどの高度に達する。

 警戒警報が鳴った。

(くそっ──!)

 敵の子ルーチンが表れてくるまで、1分もないだろう。

ライジングアースは次回出てきます。

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