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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第六部

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104/139

104.バグダッド攻防戦(7)

イラク陸軍と統合軍の連携作戦、および再びライジングアースです。

 そのころ、イラク陸軍のほうでもチーム・アマリとの連携体勢に入っていた。

 イラク陸軍を指揮しているのは、少佐のナギーブ・ネシンである。

「了解しました。我々は陽動のミサイルを放てば良いのですね? はい。了解です」

 そんなふうに通信を終える。

 それから、部下に向かってこう宣言した。

「野郎ども! 全速力で後退しながら、敵の腹に陽動のミサイルを撃ち込め!」

 それは、イラク陸軍としても誇りの一言だったし、統合戦線への信頼の一言でもあった。


 ジェマナイのビッグマンにむかって、エニグマムスタング2から発射されたミサイルが飛んでいく。

 四方八方からミサイルを発射されれば、ビッグマンとて逃げ場はない。

 あるとしたら、上空へだ。

 3人のパイロットたちは、一斉に上空へとビッグマンをジャンプさせた。

 アマレスが「くそっ」とののしっている。

 マーシャ・ツヴァルは「きゃっきゃ」とはしゃいでいた。

 シズマ=ロークだけは冷静に「ふ~ん、そんな攻撃」とつぶやいている。

 ジェマナイのビッグマン軍団が油断した瞬間だった。


「今だ」

 と、チディ・マベナが叫ぶ。

 20機のイングレスαから射出される、リードル・ワイヤ。

 この「リードル」というのは「ニードル」と「リドル」をかけ合わせた造語である。

 敵のAIコンソールをクラックして、偽情報を送り込む。そういう統合戦線の最新鋭の武器である。

 それが、このときにも確実に作用した。

 敵ビッグマンが、お互いの機体に向けてミサイルを撃ち始める。

 アマレスは、「おおっ」とうなった。

 シズマ=ロークのタルタロスからミサイルが発射されてきたのである。

 ぎりぎりで躱したものの、自機からマーシャ・ツヴァルの機体へとミサイルの照準がついている。

「ダメだ!」

 叫んだものの、遅かった。

 アマレスのタルタロスから発射されるミサイル。それが、マーシャ・ツヴァルのタルタロスへと向かう。

 マーシャ・ツヴァルはぎりぎりで対空ミサイルを発射して防御。

 ぎりぎりのところで直撃は逃れたが、爆風で地面へと叩きつけられるマーシャ・ツヴァルのタルタロス。

 統合戦線側のパイロットたちは「やった!」と喝采をあげた。


 シエスタはコックピットのなかで手を叩いた。

「それ見ろ、ジェマナイめ!」と言った感じである。

 が、チディ・マベナは言った。

「撤退する」

「なぜですか?!」

 シエスタは無線にむかって即座に叫ぶ。

 しかし、そこから帰ってきた声は冷静だった。

「敵は弾を撃ち尽くしている。そして、ダメージも与えた。今はタージ基地の防御が先だ」

「了解……わかりました」

 シエスタも即座に状況を飲み込む。

 自分たちが帰投すべき基地がなくなってしまっては、元も子もないのだ。

 旋回しつつ、ビッグマンを見下ろすシエスタ。

 たしかに、敵にはかなりのダメージを与えたようだった。

 あとは、イラク陸軍に任せるしかない。

 シエスタは夕日を前に、機体をタージ基地へと向かわせた。


 ナギーブ・ネシンは一言つぶやいた。

「ふむん、統合戦線。俺たちのおもりがなくっちゃ勝てないってわけじゃないんだね?」

「少佐、無線がオンになっています」

 と、タンクに同乗している部下が慌ててつぶやいた。

「うなあ? わざとオンにしているに決まっているだろう!?」

「そうでしたか、失礼しました」

 かしこまる部下。

「だが、助け合えるならそれはそれで悪くない」

 ナギーブはさらに一言つぶやいたのだった……


 ──


 そのころ、斎賀たちライジングアースとQR‐Xは、アレキサンドリア上空でスホーイの部隊に囲まれていた。


「くそっ、囲まれた! まずはサテライト群をクラックする!」

 コックピットのなかで、斎賀が無線に向かって叫ぶ。

 それは、ユーランディアに通じた。

「情報ネットをかく乱するのですか?」

「そうだ。貴官のQR‐Xは目視でこちらから確認できる。これからは有視界飛行で対応してくれ」

「了解しました」

 ライジングアースは飛行形態のまま、1マイルほど飛行する。

 QR‐Xもそれに並行してだ。

 敵のスホーイはこちらの1マイル圏内にすでにつけているようだ。

 斎賀は焦りはしなかったが、それでもコマンド入力を急いだ。


 ライジングアースの横を敵のスホーイがすり抜ける。

 0.5マイルの圏内を飛行している。

 威嚇のためだが……攻撃はしてこない?

 どうやら、QR‐Xのクラッキングが効いているらしい。

 ユーランディア少尉は14歳のネオスにしては有能なようだった。

 斎賀は、一瞬(自分がすることはないのでは?)と思う……


「ユーランディア少尉。貴官は、敵戦闘機のAIをクラッキングしているな? 詳細を報告してほしい」

「はい。スホーイの目標コードに虚偽のデータを送りました。奴らは雲を狙っています」

「雲……か。それなら、晴れると逆にヤバイわけだ。俺にもっと良い考えがある。畑を狙わせるんだ」

「地面の……畑ですか?」

 ユーランディアが怪訝そうに尋ねる。

「そうだ。それがもっとも被害が少ない戦法に思える。ほかに良いアイディアはあるか?」

「いいえ、中尉の指示に従います。敵のAIネットを再度かく乱してみます」

 それから数十秒が過ぎた。

「できました。敵のAI照準システムに地表の畑を狙うように指示。それ以降の指示はキャンセルするように設定しました。敵の方でもデバグしない限り、わたしたちにミサイルは撃てないでしょう」

「上等だ。よくやった、ユーランディア少尉」

 斎賀は、心から感嘆して言う。

 たしかに、このQR‐Xという機体とユーランディア少尉は統合戦線にとって大いに役に立ちそうである。

 そして、自分たちにとっても、背中をあずけあう仲になれる。

 シエスタたちがAIの手を借りずにAIと戦っているときに、斎賀たちはAIの手を借りてAIまたは人間と戦っているのだった。


 ライジングアースは飛行形態のままさらに進んでいく。

 眼下にはアレキサンドリアの市街が見えた。

 ユーランディアのQR‐Xは、ライジングアースのすぐわきを飛行している。

 そろそろ畑地にミサイルを撃ち込ませる、という作戦はできなくなる。

「ユーランディア少尉。俺たちが囮になる。貴官はそのクラッキング能力で、敵同士が撃ちあうように設定してくれ」

 斎賀が言う。

「了解しました。かならずあなたとミューナイト少尉を救います……」

 という言葉が、ユーランディアから返ってきた。

(ひゅーっ、さて、どうするか)

(サイガ、「ひゅーっ」じゃないよ。何も考えていなかったの?)

(あ、こういうのは即興で考えるのがいいんだよ。用意しておいた回答は、必ず敵から見破られる)

(それはそうだが……)

(ミューナイト、まずは人型形態に変形しろ。そうだな、それからスーパー・アンブレラの準備!)

(了解。すべてあなたに任せる)

 高速の思念通信は終わった。

 今、ライジングアースは包囲しつつあるスホーイの群れのただなかで、空中に屹立していた。

次章以降に続きます(長いです)。

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