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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第一部

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1.棺の眠り姫

AIと中島みゆき「地上の星」をスーパーロボット風の替え歌にして、という話をしていたところ、設定が膨らんでしまったので、本気で小説に書くことにしました。初投稿です。

 ……暗い部屋のおくには、コードが雑然とつながれた医療ブースがあった。

 そのなかに、少女がひとり横たわっているらしい。

 いや、子ルーチンだ。それに、外見から言えばもう少女という年齢でもない。

 ネオスたちは、人間の1.3倍のスピードで成長する。


 その女の体に、やはりいくつかのコードが接続されている。

 このコード群は、女の左肩のところで体内へとつながっている。


 ぱちり、と女が目をひらいた。

 なにかの電気信号が女の体のなかを貫いたのだ。

 脳まで達したそれが、女の目を覚まさせる……


「モスクワ? ディストリクト‐A。女が一人と、男が一人。少女か? いや、ネオスか……」


 女は謎めいた言葉を口走る。そうして、ふたたび目を閉じた。

 女の脳内では、緑や黄色の光が、バーニングシップ・フラクタルやマンデルブロ集合のような形をとって、明滅している。

 それは、広がったり、収縮したり、つながったり、切れたりした。

 AIネットの回線を、スパークが走っているのである。

 そのなかには、かつてコアコードと呼ばれたものも含まれていた……だが、女のAI頭脳はコアコードを理解できない。

 仕方なく、女はため息をついた。そして。そのまましばらく眠っている……。


 そして、はたと目を覚ます。女の脳内でマルチルーティーンの3段階目の処理が終わっていた。

「こんなときに……敵襲とはな……」と、中性的な低音の声でささやく。


「セラフィア、起きているか? もうルーティーンは大方終わったようだが……」

 セラフィア、と呼ばれた女の脳内に声が響く。やはり、女の声だ。


「はい。起きています。リュシアス一将、緊急な要件でしょうか?」

「敵だ。モスクワが戒厳体制に入った。お前も……いや、お前はまだメンテナンスを続けていていい」

 リュシアスと呼ばれた女が続ける。


「メンテナンスはもう終わりました。指令室へ、行かれるのでしょう?」

 と、セラフィア。


「そうだ。前線へはヴォルガに出てもらう……。なら、わたしと一緒に指令室へ来い」

「ヴォルガ二将が……。それで、敵とは?」

「たいした者ではない。男と女がひとり、モスクワのディストリクト‐Aに地上車で潜入した。どうやら、統合戦線の調査チームらしい。武装もしていないようだ。しかし、我々の絶対防衛圏内にいる。サンクトペテルブルクより東に人やネオスを入れると、ジェマナイのマザールーティーンがうるさい」

 脳内の声は、ある種の音楽のようにスムースに、セラフィアのなかで流れている。


「たしかに、あれはうるさいです……わたしももうすこし眠っていたくなります。それに、わたしもその映像を見ました」

「そうなのか?」

「男が一人と、女が一人。女はネオスのようでした。12歳くらいです」

「若いな? では、やはり戦闘員ではない。調査チームなのだろう。危急ではないが、監視群を出しておくにこしたことはない。大部隊だが……やはり、シベリアに近すぎる。最近ではなかったことだからな?」

「それは心配ですね。わたしもじきに行きます」

「頼む」


 脳内での会話はとぎれた。

 セラフィアは少しこめかみが痛むのを感じる。

 ……それに、さっきリュシアスにコアコードの影を感覚したことも、伝え忘れた。AI脳としてはあってはならないことだが。

 それでも、そのことは秘匿しておくべきことのように、セラファイアには感じられた。

 そのことを、不思議だとも思った。


 そして、ゆっくりと医療ブースから起き上がる。

 その容姿は端正で……実年齢は15歳。外見は人間相当で20歳ほどだ。

 肩の下まで垂れた長い髪と、頭に装着しているカチューシャ型の受信機とが特徴だ。

 この受信機は、サテライト群のコア分析に直接ハックできる。

 だから……先ほどのような映像も、自然に脳裏に浮かんでくるのだった。


 セラフィアは、髪を「ぐるん」と回して、左耳の横で結った。これで髪は邪魔にならない。

 マルチルーティーンの体のメンテナンスとしては、服を脱いでシャワーを浴びるだけだが、まだルーティーンの3段階めまでしか終わっていない……ジェマナイがうるさいだろう、とは思ったが、今回のメンテナンスはそれまでとした。

 モスクワに危急の要件が迫っている。統合戦線の陽動だったとしたら、わたしもどこかへ出撃しないといけなくなるかもしれない。


 セラフィアのAI脳は時折異常を起こすことがある。

 たとえば、今回のようにコアコードの存在を隠す、といったこと。

 セラフィアはそれを不思議だと思っていたけれど、子ルーチンとしての自分の未分化がそうさせるのだろう、と軽く結論付けていた。


 今は何よりも、リュシアスと合流しなければいけない。

 階級としては、リュシアスのほうが2階級上だが、セラフィアは彼女を姉や友人のように慕っていた。

 ジェマナイの戦術特務将校のうち、セラフィアはその一人だったが、リュシアスは彼女よりも5歳も年上だった。

 それなのに、リュシアスは人間で言えば20歳そこそこにしか見えない。と言っても、普段のリュシアスは銀白の仮面の下に素顔を隠していて、めったなことではその美しい面立ちを周囲には明かさないのだが。


「サイ、ガ……?」と、

 急に、セラフィアのなかにまた意識が流れ込んできた。AIの声だ……


「ワ、タシ……」と、続くが、よく聞き取れない。

 ただ、「ミュー」という言葉の断片が、彼女のAI脳のなかで、なんども繰り返された。

セラフィアとリュシアスは敵勢力です。

この後、主人公のミューナイトとサイガが登場します。

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