表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

「行かないで」


 僕は叫ぶ。


 そこは真っ暗闇。辺りを見渡しても闇、闇、闇―――闇。


 僕は踏み出す。迷っていても仕方がない。徐々に加速し、走り出す。


 すると、そこには一つの光。


「出口か」


 光にあふれている。暖かい。眩しい。


 急に体が浮いた。ふわり。宙を舞い、眩しくて開けられない瞼をさらに強く閉じた。




***



 今日の日付は9月10日、まだ残暑が厳しいあのころだ。しかしそれでも日が落ちる時間はとても早くなっている。午後7時には辺りはすっかり暗くなっていた。

 時間が過ぎるのは早いものだ。

 年が明け。春が来て、夏が来て、今、秋を迎え、過ぎようとし、冬は訪れる準備をしている。

 僕は今、家路についているところだ。忙しさのせいで時間を余り感じられていない。時計を見る。7時。もう、今日僕が起きてから13時間が過ぎようとしているのか。

 疲れと、疲れのせいで、今、僕の顔は死んでいるのであろう。

 チラと時計を横目で見据えた。7時15分…。たったこの少しの時間考えていると思っていただけで、時計の秒針は15分…1分は60秒、5分で300秒。すでに、1500秒も秒針を動かしている。早い。

 7時30分までに着かないと、怒られてしまう。また僕はチラと睨むように時計を見る。また5分進んでいた。

 僕は少し歩幅を大きくし、なおかつ速度も速めた。


「ただ今」


 時計の針は6を差している。…30分ぴったりだ。


「あら、ハルおかえりなさい。疲れたでしょう?外は寒いし、お腹も減ってるでしょう?お風呂とご飯どっちが良い?」


 子供のようにくしゃくしゃにした笑顔を僕に向けるのは、母さんだ。


「あぁ、母さん。先にお風呂に入るよ。」

「陽、顔が死んでるわよ?」


 母さんはそういうと、僕の鞄を持ってくれた。僕は疲れ切った小さな声で返事をした。


「うん。」


 僕は、制服を脱いで、綺麗に壁にかけた。消臭剤をさっと吹き。押し入れから、下着を出す。

 シャツとパンツのままで部屋を出る。


 僕は、洗面所の鏡を見た。じーっと見た。とても醜い顔だ。見た目がではない、中身だ。

 ガリ、ガリ、……ガリガリガリ…ガリ。

 僕は、顔を引っ掻く。醜い。

 風呂場にに入り、軽く身体を洗い。湯船につかった。そして静かに瞼を閉じる。


 人は愚かだ。人は身勝手だ。人は他人を犠牲にして、自分の居場所を維持しようとしている。

 「そんなことはない、僕たちは平和を望んでいる」

 なんて、何処かの誰かが言っていた気がする。でも平和と言う物は、所詮、都合よく捻じ曲げた綺麗言だ。


 僕は、醜い。


 ガリ、…ガリガリ。


 顔を引っ掻く。爪の間にたまってしまう、


 人間は、弱い。そんな小さなことだけで、痛みを感じる。


ガリガリガリガリ…ガリガリガリ……ガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリガリ――


 僕は顔を引っ掻く。


 風呂場の姿見を見つめる。―――僕は醜い。―――僕は醜い。


 風呂から出て、シャツをパンツをはいた。タオルで顔を拭くと、ところどころに赤い斑点が着く。タオルの繊維でさえ傷口に触れると痛い。―――人間は弱い。

 僕は軟膏を取り出し、傷口に塗る。クリーム状の物質でも痛みを感じる。―――僕は醜い。

 また、鏡を見つめる。―――僕は醜い、僕は醜い―――僕は弱い―――

「陽~!、ご飯出来たわよ!、お風呂あがってるんだったら早く食べて頂戴」

「あぁ、母さん」

 僕は、軟膏を塗りたくった顔で、キッチンへと足を運んだ。

「陽…また…したの…?」

「母さん…ごめん。」

 母さんは、酷く悲しい目をした、目元の笑顔で出来きるであろうしわが、より一層に悲しいという感情を引き立たせている。

「…まぁ、早く食べちゃいなさい。ハンバーグよハンバーグ!」

 母さんはすぐに表情を元に戻した。心配していないのか、またはもう成れってしまったのか…もしかしたら、もう、そんなことどうでもいいのか。

 僕は椅子に腰かけ、食べ始める。いつも通りのハンバーグ。美味しい。

 疲れは少し癒え、僕は「正常」に戻りつつあった。


 さっさと、食べて食器をかたす。


「陽…疲れてるとおもうから…もう寝なさい」

「…うん。分かったよ、今日は寝る」


 僕は母さんにこたえて、今日は寝ることにした。





―――ガリ―――ガリガリガリガリガリガリガリ――――――――


 自分の手を眺める。爪の隙間についた皮膚。指先に付着する血液。


―――僕は、醜い。―――僕は脆い。―――

―――醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い。醜い醜い醜い――――



 存在する理由が分からない。

…うーん。なんか微妙だな

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ