第96話 ギルエンダーの使いかた
「恐らく、反転の術を使うことを見越されてしまっておった。こちらが術を発動した瞬間、別の術式が発動したのである」
一度使われ阻害されたのであれば、同じ手を通じないようにするのではなく、逆に利用してきたということですか。
敵のほうが上手でした。
「で、あの光の柱の方はなに?」
幻惑の魔女が、天を貫くような光の柱を指しながら聞いてきました。
こちらも早く対処しなければなりません。
「『玉響の残響』の精霊魔法を使われました」
「なんじゃと!」
「ここに精霊門が開くの?扉が開く前に消さないと」
命を対価につかった最後の声無き声。
助けを求められた精霊がそれに応じて、この場に降臨し無慈悲に全てを破壊していくのです。
敵味方構わずにです。
私の知識にそれを使われた町の成れの果ての姿がありますが、何も残りはしませんでした。
呼びかけに応じたのが炎の精霊だったのもあります。ですが、人が造り上げたものが何も残らなかったのです。
そして森も川も全てが消滅してしまいました。
ここで放置すると同じことが起こってしまいます。
私は空を見上げました。
まだ、門の形は形成されていません。
上位精霊に伝搬する下位精霊がこの場に少ないことが功を奏しています。
そう、魔力の固まりである精霊が嫌う魔力食いの木がここにあるからです。
「術の阻害は、私に任せてください。ただあとでクレームは聞きません」
「精霊門が開くよりいいわよ。それで繭の方を対処すればいいということね」
「はい」
「それなら任せるわ。ラファ案内しなさい」
「お前さんよりサイザエディーロを連れてこんかい!」
「そんなもの私の魔法でなんとかするに決まっているでしょう。ボケ老人」
「まだボケておらぬわ!若作りしか取り柄のない魔女が!」
何故かよくわからないことを言い合いながら、崖の下に魔導師長さんと幻惑の魔女が消えていきました。
たぶん、とても仲がいいと思います。
「クロードさん。私のことはいいので、あちらの手助けに行ってください」
「それではシルヴィアが一人になってしまう。俺はシルヴィアの側にいる。まだ何が起こるかわからないのだろう」
「私は大丈夫ですから」
おそらく、『目』はもうないでしょう。
あとは、どこからか結果だけを仕入れればいいだけのこと。
その過程はあのものにとって大した意味はなさそうな気がします。
宴を楽しむのは見ている敵ではなく、私たちに向けられた言葉でした。
だから、あの者が楽しむのは、過程ではなく、結果なのでしょう。
「駄目だ。……いや、これは俺の失態だ。シルヴィアの忠告を無視して手心を加えてしまったのだ。何もできないかもしれないが、主を守る聖騎士の役目は果たさせてくれ」
聖騎士の役目ですか。
まぁ、いいでしょう。私が今からすることに邪魔さえしなければそれでいいです。
「わかりました。ただ、手出し無用と言っておきます」
私はそう言って、近くにある白い木の幹に触れました。
「目覚めの時はきた。大地から力を奪い、大気から魔素を吸い取り、その姿を取り戻せ『暖翠の息吹』」
白い幹に亀裂が走り、剥がれていきます。そして下からは黒い幹が顔をだしました。
枝からは緑の葉が茂りだし、サワサワと揺らめいています。
地面が盛り上がり、根が飛び出してきました。
「え? 白い木ではなかったのか?」
まぁ当然の反応ですわね。
でも私はいいましたわよ。
過去の禁厭の魔女が改良したと。
「あの力がみなぎる大地に根を下ろすがいい」
私は光の柱が上っている場所をさし示します。
すると青々と茂った魔力食いの木は根をバネのようにして空に飛び上がり去っていきました。
これをあと四回繰り返すのです。
さて次です。
「なぁ、なんか一気に魔力が奪われた感じがするのだが?」
「活性化しましたから、必要な栄養をとろうとするでしょうね」
私は同じ術を二本目の白い木に向かってかけます。
「クレームは聞かないと言っていたが、何が問題になるんだ?」
そして二本目の木も光の柱に向かって飛んでいきました。
「え?以前話をしたように、人も何も関係なく魔力を摂取しはじめ、何も住めない森になるだけです」
「ヤバいじゃないか!」
だから私はクレームは聞かないといいましたわよ。
精霊門が開くと、こんなことは可愛らしいと思える事態になってしまいますからね。
それに、再び眠らせればいいだけです。
が、動く枝や根が金属並に固いので、近づくにも一苦労なのですけどね。
しかしここに魔力食いの木があってよかったですわ。
読んでいただきありがとうございます。
遅くなりましたm(_ _)m
来週も日曜日投稿でお願いします。




