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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第86話 術師は近くにいない

「なんだか実験でもしているような感じだな」


 クロードさんがポツリと呟きました。実験……実験……まさか!


「最初のバジリスクは人を石化していたが、別に魂を奪っていなかったよな」


 独り言のようにクロードさんが呟いている横で、私は先程回収した(フメッグ)族の死体を取り出しました。


「うぉ!シルヴィアどうしたんだ!」


 先程は外傷があるのかしか確認していませんでしたが、気になる入れ墨があったのです。

 入れ墨ですから、種族的に地位を示したりとか、神事に関わることなのかとスルーしていました。


 首の後ろの衣服で隠れるかどうかの部分です。


「ありました」


 人の目を模したような図柄に太陽が重なって描かれています。

 やはりこれ自体に魔力の痕跡はありませんが……。


「『解呪(デロニエル)』」


 これも擬態でしたら、なんらかの反応を見せるはずです。

 すると入れ墨の形が崩れていき、太陽の中に欠けた月がはいり、それに両翼が生えた図柄に代わりました。


 そして全身に精霊文字が浮き上がります。

 これは……まさか!


「シルヴィア。なんだか気持ち悪い感じになっているが」


 クロードさんの言う通り、(フメッグ)族の全身に文字が浮かび上がり、

 呪われていそうな物体になっています。


「傀儡の術です。おそらく術をかけた本人はこの大陸にいないでしょうね」


 このアルフェレア大陸にいない種族を使って、実験を行っていると予想されます。


「よくわからないのだが、何故こんな面倒なことをしているんだ?違う場所にいたら何が起こったかわからないだろう?」

「え?本当に厄災魂を食らうもの(アルマトルー)が出現した場合、術者本人も食べられますよね?」

「あ……」


 おそらくこの実験の意図は、魔女の目を欺けるかどうかというところなのでしょう。


 だから隠蔽。もしくは隠密。もしくは妖精の悪戯といういくつかの方法を使って、魔女の目をかいくぐれるかの実験と思われます。


 成功すれば万々歳。失敗しても別のところで行って、忘れた頃にまた仕掛ける。

 まぁ、あの者たちがやりそうなことですね。


「クロードさんの先程の疑問の答えですが、世界の理から外れたモノを作り出すというのは案外難しいもので、成功率も低いのですよ」


 それは当たり前のことなのです。

 たとえば、水辺を好む生き物が火山地帯で住めるように進化する過程を一気に飛ばして造るということなのです。

 それは失敗もしますよね。


「これ。今まで私が回収していることは知っていますよね」


 魔鉱蜥蜴(ペレアルカ)がいたところに残された黒い灰と陶器の欠片を私は鈍器でさし示します。


「ああ」

「この欠片を肉体に入れただけで、生き物を襲って魂を取り込むモノに変質するのです。それもこれを作った本人はこの場にはいない。不具合が発生する確率が上がるのも当然です」

「言われれば、確かに……」


 まぁ、おおよそのことは見当がつきましたので、私は火傷の薬を作ることに専念しましょう。




青鈴花(ピエレリス)じゃのぅ。これは水の気をまとっているから使いやすいと父上が言っておったのじゃ!」


 私はその他の必要な薬草を帰りに寄り道をして採取してきました。

 店に戻ってくれば、その足で中庭まで行きました。そうですねまずは、大きなすり鉢を用意します。


「暗いってことはまだ、夜だよな。何故いるんだ?」


 ラベンナの黒くて光沢のある実を、すり鉢の中に入れて潰します。

 これは神経毒があるので間違っても実を食べてはいけませんよ。


「早朝じゃな」

「それは夜中ってことだよな」


 次はキンボウカブトの根を細かく切っていきます。これも取り扱い要注意ですわ。触るだけでも意識障害を起こします。


「ケットシーの幼生にはミルクが必要じゃろう?」

「確かに昼間はほとんど寝ていて、何も食べていないな」

「ケットシーじゃからのぅ。ほとんど寝ているであろう」


 アケ。ヒヨスを細かく刻み、鍋の中に入れます。

 そして大量の青鈴花(ピエレリス)を投入し、水気が出てくるまで煮込みます。


「起きている時にミルクを飲ませるのじゃ」

「お前、暇だな」

「失敬なのじゃ!」


 私も思いますわ。毎日きていらっしゃいますよね。シャロンさん。

 それにケットシーはよく寝る生き物なのですね。寝すぎなのでどうなのかと心配していましたが、余計な心配だったようです。


 水気が出てきましたわ。ここにで渡り鳥の脂と魔鹿の脂肪を入して混ぜていきます。


 溶けたら火を止めて、その粗熱を取るように混ぜながら冷やします。


 粗熱が取れたら小分けにします。そうすると魔女の火傷薬が完成するのです。


「できましたわ! 早速持って行きましょう」

「え? また置いてきぼりにされるのかのぅ?」


 私は一度もシャロンさんを置いてきぼりにしたことはありませんよ。この中庭を訪れる時間がまちまちなだけです。


「友達というものは仲良くおしゃべりをするものだと本にあったのじゃ!だからもう少しここにいてもいいと思うのじゃ」


 何故かシュンとされるシャロンさんなのでした。


読んでいただきありがとうございます。

ちょっと急いで書き上げたので、あとで訂正をいれるかも。


次回は日曜日です。

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