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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第85話 変える……蛙?

「レイスか?」

嘆きの幽鬼(バンシィエラ)ですわ」


 霧の奥から現れたのは形が安定しない、それこそ霧のような存在。

 この大陸では目撃情報がない死を呼ぶ幽霊。


 そのモノが髪の長い女性の姿をとって、目の前に現れたのです。


「叫び声を聞くと、魂が抜き取られると言われていますわね」

「初めて見るモノだが?」

「こちらの大陸に生息しているとは聞いていません」


 さて、これはどういうことかしら? 魂を得た人工の魂食い(ソウルイーター)は術の中心に戻るというのが定説ですが、違うということでしょうか?

 それとも別の何かが他にいたということでしょうか?


 あら? でも私の目に普通に見えているということは人工の魂食い(ソウルイーター)ではないということです。


「これは森に不可解なことが起きています。何かしら? この矛盾した感じは?」

「考え事をしているところ悪いが、普通に倒していいのか?」

「あ、私は結界を張りますので、クロードさんにお任せいたします」


 特に薬に使えない魔物には興味ありません。それに幽鬼であれば、聖騎士のクロードさんにお任せしたほうがいいですわ。


「了解した」


 そう言って剣を抜くクロードさん。その剣は抜いた瞬間に形を変え、大剣へと姿を変えます。


 この剣の仕様も変わっていますわよね。


 姿を変える? 蛙。(フメッグ)族。


「待ってください! もしかしたら違うかもしれません!」


 私は聖気を溜めて剣を振るおうとしているクロードさんを止めます。

 が、クロードさんの剣のほうが速く、霧のように揺らめく嘆きの幽鬼(バンシィエラ)を切りつけました。


 私は慌てて鈍器兼魔法の杖を出して、結界を広げます。


 私を覆うように展開していた結界がクロードさんを取り込んだ瞬間、後方に向けて衝撃波が走りました。


青鈴花(ピエレリス)が!」


 一面に咲いている青い花が空中に舞っていきます。

 これ以上荒らされては採取ができません。更に結界の範囲を広げます。


「俺の攻撃を跳ね返したぞ」

「それ魔術攻撃を跳ね返す魔物が変化(へんげ)したものだと思います。普通に物理攻撃してみてください」


 おそらく私が苦手とするタイプの魔物だと思われます。ただ姿が嘆きの幽鬼(バンシィエラ)に見えるだけです。


「わかったが、後で説明してくれ」


 そう言ってクロードさんは普通では嘆きの幽鬼(バンシィエラ)に無効である剣で切りつけました。

 嘆きの幽鬼(バンシィエラ)の悲鳴があたりに響き渡ります。


 ですが、その嘆きに魔力が乗っていませんので、魂を抜き取るという効果は発揮されることはありません。


 やはり、偽物ですか。


 物理的肉体がない嘆きの幽鬼(バンシィエラ)がドサリという音を立てて地面に倒れます。

 そして霧のような靄が徐々に黒く染まっていき、それが消える頃には灰色の大きなトカゲが姿を現しました。


魔鉱蜥蜴(ペレアルカ)だと?」


 体長五メル()はありそうな巨大なトカゲです。

 魔鉱蜥蜴(ペレアルカ)は身体の表皮が鉱質化した魔物のトカゲの総称ですね。


「混じりものですね。反魔鉱石と氷鉱石。ベルガロルの洞窟には氷鉱石化した魔鉱蜥蜴(ペレアルカ)がいるとは聞いたことがありますが」


 魔鉱蜥蜴(ペレアルカ)は鉱石の属性によって魔法耐性に違いがあります。ですが、今回は魔力全般に耐性がある反魔鉱石の魔鉱蜥蜴(ペレアルカ)だったので、聖属性の攻撃を反射したのでしょう。


 観察している内に魔鉱蜥蜴(ペレアルカ)の肉体は、徐々に黒い灰になっていき形が崩れていきました。


 これはあまりよろしくない傾向ですわね。





「それでいったい何が起こったんだ?」


 青い花を根っこから引っこ抜いていると、クロードさんが、先程の現象がなにかと聞いてきました。


「あれは(フメッグ)族の術ですわ」

「魔法ってことか」

「魔法ではなくて種族的に使える術です。人にドラゴンのブレスが吐けないように、種族の固有術ですね」


 だから、魔法に長けた魔女には使えません。似たことはできますけどね。


変化(へんげ)の術です。幻覚で惑わせるのではなく、姿そのものを変化(へんか)させる術ですね」

「わかるような。わからないような。それって何の意味があるんだ? だって、変化したモノの力が使えるわけじゃないのだろう?」


 そうですわね。そのモノがもつ本質までは変化できません。持てる力は本人のものでしかありません。


「例えばの話ですが、私がクロードさんに姿を変えて聖王国に行けば、かなり中枢まで潜入できますよね」

「あ! 諜報に使うのか」

「本来はそのような使い方ですね」


 (フメッグ)族は傭兵や闇組織に所属している者が多かったですから、本来は依頼を受けて情報を持ち帰るという使い方です。


「ただ、これは術者本人が使う場合で、他人に使う術ではありません」

「ん? でもそのフメッグ族は死んでいたので、術は使えなかったということにならないのか?」

「命の対価の術です。己の命と引き換えに使う術は普通の効果の何倍にもなりますからね。他者に与えることも可能になるかと」


 おそらく先代の禁厭(きんえん)の魔女も魂を食らうもの(アルマトルー)をそうして倒したのでしょう。


 これで(フメッグ)族が無傷で死んでいた理由にはなりますが、このような偽装工作がそもそも必要だったのでしょうか?



85話でした。読んでいただきありがとうございます。

次回は木曜日に投稿します。


それから宣伝をさせてください。

【結婚するとは言っていません】

短編ですが、チェックが間に合わず連載形式に。

今日中に完結します。


(あらすじ)

ある日父が突然とんでもないことをいい出したのです。

弟のアルバートの代わりに騎士団に入団して欲しいと

私には前世があり、騎士だった私。

王都は前世で関わった人が多いので、なるべくことを穏便に済ませたいです。

そう穏便にです。



興味がありましたらよろしくお願いします。

https://ncode.syosetu.com/n5828li/


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