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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第80話 他にも行くなと言われた場所がありましたわね

 

「ファエラ大陸に人は住んでいますわよ。その……ドラゴンの話は横に置いて、十年前から常に術が発動しているというのは、流石に無理があるのではないのですか?」


 確かに防御的な魔法で、常時発動型はあります。しかし人に干渉するとなると、人格崩壊が起こってしまう可能性がでてきました。

 それが一箇所に集中して現れますと、怪しんでくれというもの。

 こうなると国の調査が入ることでしょう。


「いや、一度でよい」

「一度ですか?」


 それでは意味がないように思えます。

 特にこの辺境都市『エルヴァーター』では人の出入りが激しく、一度だけの術の施行では新たに来た者が侵入する可能性があります。


「あそこは危険だという刷り込みを行えば、あとは人伝えに広まっていくからである」


 ああ、あそこは危険だから行くなということを色んな人から言われれば、よっぽど好奇心が勝たないかぎり足を踏み込むことはないでしょう。


 そうなってくるとやはり、グエンデラ平原の更に奥の森ということに……


「あ……奥の森よりもそうですが、他にも行くなと言われた場所がありましたわね」

「ガンディス渓谷か?」

「そうです」


 クロードさんの言葉に頷きます。


 あのグランディーア兄妹でも人から聞いたように忌避していたルートのガンディス渓谷です。

 あの様子だとお二人共通ったことがなかったのでしょう。


『行くのも引き返すのも地獄のガンディス渓谷』とおっしゃっていましたもの。


「ん?別にあそこは足場は悪いが平原に行くには直線ルートなので、なにも問題なかろうに……そういうことであるか」


 私たちの言葉にそうではないという魔導師長さん。

 言葉を口にした瞬間に理解したようです。

 いいえ、御自分が予想したことが正しかったと立証されたのです。


 ほぼ王都にいて、三十年前には来たことがある魔導師長さんはガンディス渓谷は近道で使い勝手がいいという認識です。

 ですが、この辺境都市で話を聞く限り、ガンディス渓谷は命を落としてもおかしくないという話でした。


「あの場に霊樹(ナルエイダー)がいたのは防衛という意味だったのではないのか?普通は霊樹(ナルエイダー)に死などないからな」

「ふむ。霊樹(ナルエイダー)となると、倒すのは困難なゆえ、通ったものが戻ってこないとなると信憑性が出てくる」


 クロードさんと魔導師長さんは納得されているようです。しかし、私はそのことに首を傾げてしまいました。

 魔導師長さんがおっしゃっていたとおり、ガンディス渓谷はグエンデラ平原への最短ルートなので、私はよく利用していました。

 ですが、そんな変わったものがあるように思えませんでした。


「私はそのルートをよく利用していましたが、特に変わった物があった記憶はありませんわ」

「因みに移動手段は、なにであるか?」

「飛行です」

「そうなると、あそこの場合は崖になにかしらの痕跡があるのでは?」


 私が気づかずに通り過ぎる可能性があるのは、滝が流れ落ちる崖です。

 先日通ったときは夜だったので、気付かなかったということですか?


 私の背後に立っているクロードさんを窺い見るも、特に気になるようなものはなかったようです。


「だったら滝壺の中か?若しくは川の中か」


 クロードさんがひと目につきにくい場所をあげるも、術として構築するには難しい場所です。


「できれは平面の良いな。術の安定性に関わってくるのでな」


 魔導師長さんも同じ意見のようです。川の中などは水で壁面が削られる場合があります。それを考慮すると、やはり考え過ぎということでしょうか。


「崖、滝、川と絶壁に挟まれた道、深い渓谷。どこをとっても長期間術を維持していくには地理的にいいとはおもえません」

「なぁ、根本的なことを聞いていいか?」


 私が場所として不適切だと言っていると、クロードさんが質問をしてきました。


「その術は発動に時間がかかるのか?」

「まずはソウルイーターの種が熟すのに十年はかかる。その種と言っても呪物という意味である」


 十年と言われています。ですが、それは元になった素材に由来するので、一概に十年とは言えません。


「期が熟せば、呪物は自ずと割れ魂を食ったところで自発的に元の形に戻ろうとするのである」


 それが完成すると魂を食らうもの(アルマトルー)となり、多くの者を食らいだすのです。


「ん?あの魔女のマリーアンヌは複数存在しているかもと言っていたが、それだと組み合わせがあわなければ意味がないな」

「若作りババァが、そのようなことを言っておるのか。そうであるな。十芒星の陣を構築できればよいから、素材が同じであれば引き合う可能性はある」


 こうして話している間に、魔導師長さんの身体には魔力が満ちていました。

 長年国を支えていた魔導師長さんだけあって、魔力量は多いですわね。

 まだまだ増えていっています。


「そういうものなのか?」

「これは術の施行者次第である。術者がそのように作れば、可能だというもの。そう、普通は数分でこのように治るものではない」


 そう言って魔導師長さんは手のひらの上に魔力を集めだしました。魔力操作も問題ないようですわ。


「完治されたようですわね。これで承ったご依頼は完了でよろしいでしょうか?」

「ふん!本当に魔女というのは気に食わぬ。数分で治るなどありえぬことである。普通は一年の治療が必要というもの」

「私は禁厭(きんえん)の魔女ですから」


 呪によって薬を効果を上昇させるのか、禁厭(きんえん)の魔女の理の一部なのです。それ以外に言いようがありませんわ。


「まぁ、俺の妻は凄いということだ」


 あの、クロードさん。

 堂々と人前で、そのようなことを言うのは、恥ずかしすぎるので止めて欲しいですわ。



80話でした。読んでいただきましてありがとうございます。

次回は日曜日です。

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