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第77話 魔女を頼るのか、聖獣に頼るのかの違いか

「サイさんですか? これは、どういうことですか!」

「あら? 私は幻惑の魔女よ。それぐらい当然じゃない」


 あ、そういうことですか。それなら納得です。


「全然、説明になっていないが?」


 クロードさんがわからないと言ってきました。そうですか?

 幻惑の魔女がそうだと言ったら、そういうことなのでしょう。


「魔法にド素人の聖騎士にわかりやすく見せれば……」


 そう言って、幻惑の魔女は右手を前に掲げました。

 あの? クロードさんは、ド素人というほど魔法が使えないわけではありませんわ。


 幻惑の魔女の右手から、青い蝶が現れました。これは魔法で作った実態のない蝶ですね。


「魔法で作れば普通なら触ることができないけど、私が作れば本物になるのよ!」

「召喚じゃないのか?」

「これのどこが召喚なのよ。見てわかるじゃない!」


 召喚は色々面倒な手順があるので、使い勝手は悪いですし、対価を求められるので割に合わないですものね。


「それじゃ、魔導生物なのか?」

「どこに魔導生物になる元の素材があるのよ」


 はい、魔導生物を作るには、それなりの素材が必要です。


「このド素人! こんなこともわからないの?」


 ……わからないのですね。

 どうやら基本知識が足りないのでしょう。


「マリー。魔女の魔法は、普通と違うのだから仕方がない。簡単に言えば、魔女の力で最盛期の肉体にしてもらったということだ」


 そう言えばサイさんは、幻惑の魔女が他の魔女の力を羨ましがっていたとき、幻惑の魔女だからいいと言っていました。

 このように、有事の際に戦える身体にしてもらえるからだったのですね。


「私からみれば、聖獣の力を使う聖騎士の方が理解できない。肉体を変えてまで王を守る必要があるのか」

「ん? 言われてみれば、魔女を頼るのか聖獣に頼るのかの違いか」


 見た目では合っているように思えますが、本質は違いますよ。

 魔女の魔法も完璧ではありません。

 肉体の変化の負荷は必ずどこかで現れているはずです。


 聖騎士が聖獣の力を使っている負荷は、聖獣が受け持っているはずです。それが空腹として現れていると思われました。


 はっきり言って、クロードさんの食事量は異常ですから。


「あの、ここに来た目的を言ってもよろしいでしょうか?」


 クロードさんが、曲がりなりにも納得されたようなので、ここに来た本題を切り出します。


「いいわよ」

「今朝。グランディーア兄妹に会ったときに、精神操作の疑惑が頭をよぎったのです。幻惑の魔女としては、如何と思いますか?」

「私は最近会っていないから、わからないわよ」


 あら? 幻惑の魔女であれば、精神操作が得意だと思って意見を聞きたかったのですが、そもそも会っていなかったのですか?


「話が長引きそうだから部屋で話しましょう。あなたは、ゆっくりしていてね」


 私の話を否定することなく、受け入れた幻惑の魔女は、背後にある部屋を指しました。

 そして、視線だけは若返ったサイさんに向けられています。


「私も付き合おう。精霊の血が入った二人がそもそも精神操作されるのかが、疑問だ」


 普通はそう思いますわよね。

 お二人が高ランク冒険者として名を連ねている理由はお二人が強いのもあります。

 それに加え、普通の魔法ぐらいなら無効化してしまうので、状態異常にかかりにくいのです。

 精霊の血のお陰ですね。


 護衛依頼などぴったりなのですが、カイトさんの性格上問題が発生するので、辺境に居を構えることになったのでしょう。



 そして、通された部屋にはギルドマスターさんや、『ディナート』のリーダーのバルトさん。

 ……グランディーア兄妹のお二人がいるではないですか!


 本人がここにいるのに、会っていないとはどういうことですの?


 すると、幻惑の魔女の姿を視界に捉えたギルドマスターさんが、大きな身体を震わせて椅子を倒しながら立ち上がりました。


 そして巨漢の身体を折りたたむように頭を下げています。


「これはマリアンヌ様! わざわざお越しいただきまして、恐悦至極に存じます!」


 恐悦至極というか、恐怖に身を震わせているようにしか見えません。


 そしてバルトさんもギルドマスターさんと同じようになっています。

 いったい何があったのでしょうか?


「これはこれは麗しの魔女王殿ではありませんか。魔女王殿に来ていただけるとは千人力ですね?」


 カイトさんが褒めています! それも魔女王ってなんですか?

 魔女に王という存在はいませんわよ。


「なんか。吐きそうなぐらいに顔色が悪いが、今から戦えるのか?」


 私の横で心配そうな声をあげるクロードさん。これは、幻惑の魔女の影響力が大き過ぎるので、サイさんが入るのを止めていたのではないのでしょうか?


 そして無言でカツカツと足音をさせながらグランディーア兄妹に近づいていく幻惑の魔女。


 レイラさんなんてカイトさんの背後から絶対に出ないようにしがみついています。それも背後から回している手が、白くなるほどです。


「マリー。無言では失礼だから、挨拶はしなさい」


 そこにサイさんから声がかけられました。


 サイさん。そういう問題ではないと思います。


「久しぶりね。クソガキども。ちょっとそこに並びなさい!」


 それ、挨拶じゃないです。



読んでいただきましてありがとうございます。

次回は水曜日です。

75話のイラストは登場人物・資料のほうに移動させました。


魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【登場人物・資料】

https://ncode.syosetu.com/n0740lf/

77話と同時投稿です。時々追加する予定です。

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