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第76話 聞いていませんわよ!

「精神操作?」


 復活したクロードさんと共に、私は冒険者ギルドに向かっています。


 グランディーア兄妹の不可解な言動に疑問を覚えたので、私はクロードさんに聖魔法の解呪をお願いしているところなのです。


「お二人は精霊の血が入っていますので、滅多なことでは精神操作など受けないと思っています。しかし、念には念を入れておきたいのです」

「ふーん。シルヴィアがそう思ったのなら、何かあるのかもしれないな」


 そんなことを話をしながら冒険者ギルドがある西門の方に向かっていると、いつもより人の往来が多い気がします。どちらかと言えば、領兵の数が多い気がします。


「あ! 魔女さんも参加されるのですか?」


 すると背後からよく知った人の声が聞こえてきました。振り返るとエルン亭のエリンさんが店主と共にこちらに向かっています。


「エリンさん?」


 それもいつものウエイトレスの姿ではなく、動きやすい冒険者風の姿をしています。店主に至っては厳つい鎧まで着ているではないですか。


 なんだか、妙にしっくりと着こなしていました。


「はい! 私もとーちゃんと一緒に参加するので、お店はお休みです」


 何に参加するのかわからず、首を傾げてしまいました。もしかして魂食い(ソウルイーター)の討伐ですか?


「あの? ちょっとわからないのですが、討伐戦に一般の方も参加されるのですか?」

「あ……そうかぁ。魔女さんがここに住みだして一年ぐらいでしたね。この辺境都市『エルヴァーター』で店を出す条件が、有事の際には戦闘に参加することなんですよ」


 ……私、店を出していますが、そのような説明を受けた記憶はありませんわ。

 そう言えば、中央地区のパン屋の店主が言っていましたか。引退した領兵だと。


 でも店を出す条件に、そのようなことが示されていたとは初耳ですわよ。


「エリン。魔女殿は別のことで貢献してるのでしょうから、我々とは違いますよ」


 今の店主は、まさに歴戦の戦士という雰囲気ですが、物腰はいつも通り柔らかいです。

 見た目とギャップがありすぎます。


「そうだね。私ととーちゃんは、討伐戦に参加するのですよ〜」


 そう言って、エリンさんは力こぶを作るように右腕を掲げていました。


 しかし、思っていた以上に大ごとになっているようです。

 いいえ、それほど人工的に作られた魂食い(ソウルイーター)が、危険だということです。




 そして、エリンさんたちと共に冒険者ギルドの近くまでくると、何事かというぐらいの人が集まっていました。


 ということは、冒険者ギルドの入り口にもたどり着くことができません。


「困りましたわ」


 恐らく名のある冒険者の方々は、ギルドの建物の中にいると思います。

 そこで、かき集めてきたものを分配することになると思うのです。


 それとも、もう深淵の森『ヴァングルフ』に入ってしまったでしょうか?


「ちょっと道を開けなさーい! 魔女さんが通れないでしょうー!」


 エリンさんが大声で叫びます。

 あの店を切り盛りしているだけあって、声がよく通っていました。


 すると雑談していた人々の声がなくなり、ザッとギルドの入り口まで道が開けたではないですか!


 エリンさん。何が親指を立ててグッジョブなのですか?


 これ、ある意味怖いのですが?


「シルヴィア。行こうか」


 そう言ってクロードさんが、私の手を掴んで引っ張っていきます。


 え? こんな花道みたいになったところを通るのですか?

 エリンさん。なぜ、いってらっしゃ~いと手を振ってるのです。


 恥ずかしいじゃないですか!


「この町の魔女は、王と同じぐらいに権力があるんじゃないのか?」


 クロードさん。それは幻惑の魔女だけだと思いますわ。



 冒険者ギルドの建物の中に入っても、人でごった返していました。

 これではグランディーア兄妹がどこにいるかもわかりませんわ。


「あら? 禁厭(きんえん)の魔女が、戦闘に参加するのかしら?」


 私が周りに視線を向けていると、二階の方から幻惑の魔女の声が聞こえてきました。

 視線をあげると、吹き抜けの境にある二階の手すりにもたれて見下ろしてる幻惑の魔女がいます。


 その姿に一階にいた冒険者たちが雑談を止めて、直立不動となりました。

 どこの軍隊ですか!


「少し、お話ができませんか?」

「いいわよ。上がってきなさい」


 すると、ザッと二階に上る階段までの道ができました。デジャブ。



「どうしたのかしら? ああ、あのアバズレ娘にやる気を出させてくれたことには礼を言うわ。逃げ出したから、あとで捕まえようと思っていたのよ」


 二階に上がったところで、幻惑の魔女からエリアーナさんのことについて言われました。

 やはり、幻惑の魔女に襲撃される予定だったようです。


「やる気がありすぎるから、先に露払いさせているわ」

「え? もう始まっているのですか?」


 もしかしたら、グランディーア兄妹もその中に混じっているのでは?


「いや、先攻として『ラグロワール』に情報収集と梅雨払いを行ってもらっている」


 この人は誰?


 幻惑の魔女の背後から、見たことがない男性が姿を現しました。


 戦術を考えるのはギルドマスターだと思うのです。ですが、ギルドマスターよりも若く、二十代半ばほどです。

 そして灰色の髪に長身の男性。全体的に黒い衣服でまとめてあり、町では見たことがない人物です。


 幻惑の魔女の知り合いのようなので、中央地区の方なのでしょうか?


「『ラグロワール』のリーダーさんは回復されたのでしょうか?」


 それとも、高ランク冒険者の『ラグロワール』が動いたという情報をくれたということは、ギルドの関係者でしょうか?


禁厭(きんえん)の魔女の相手は私がするわ。あなた♡」

「え?」

「は?」


 幻惑の魔女の態度が一変して、ラブラブモードになりました。

 もしかして、サイさんですかー!




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