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第75話 頭の上に黒い毛玉が!

「『鎮静(グァンベル)』」


 興奮した人を抑える魔法です。

 元夫の相手が面倒なときに、よくしれっと使っていましたわ。


「エリアーナさん。そのあり余った力を魂食い(ソウルイーター)の討伐に使ったらいかがでしょうか?」


 このままだと、店の中をめちゃくちゃに破壊されそうです。ですから逃げ出してきた魂食い(ソウルイーター)の討伐をお勧めしてみました。


「そうね。今なら何でもできそうな気がするわぁ」


 そう言って、機嫌よく店を出ていくエリアーナさん。

 これで幻惑の魔女が店に押し入って来る未来が避けられました。


 恐らくエリアーナさんの聖魔法は討伐で重宝するので、絶対に幻惑の魔女が迎えに来ていたことでしょう。


修復(アトア)』の魔法を使い破壊された店内を直しました。


「それで……えっと……」


 エリアーナさんの所為で、何かをしようと思ったことを忘れてしまいました。

 まさかの鉄球の出現に、一瞬頭が真っ白になってしまいましたもの。


 力がお強いと思っていましたよ。そのエリアーナさんが、あのようなモノを武器としていたとは、ある意味納得です。


「商品を全品欲しいという話でしたか?」

「ああ、魔女のねーちゃん。棚にある分を持っていってもいいか?」

「どうぞ」



 三人を見送って、店の扉に掛けたプレートを閉店にして鍵をかけます。

 がらんどうになった店内が、視界に映り込みました。これは、素材採取にいかないといけません。

 数日は閉店ですわね。


 そこに『みゅー』という鳴き声を耳にして、はっと思い出しました。


 グランディーア兄妹の言動がおかしくありませんでしたか?

 いいえ、毒舌のカイトさんも、カイトさんの背後に隠れているレイラさんもいつも通りです。


 私がグエンデラ平原の更に奥地の話をすると、取ってつけたような話をされました。


 あの地形で霧が発生するなら、森もグエンデラ平原も霧で満たされるはずです。


 そして、今日討伐に向うことが決定されたということは、昨日の昼にはグエンデラ平原に異常は無かったと、ギルドに連絡をしているはず。


 身を隠すものが無い平原で一晩過ごすことはないでしょうから、滞在してもあの日の夕刻まで。

 どう考えても霧が発生する条件ではありませんでした。


「あー。やっと頭がはっきりとしてきた」


 そうです。二人に精神操作の疑いをかけたので、聖魔法の解呪をお願いしようとおもったのです。


 私が解呪をしてもいいのですが、精霊術だと解呪できません。私が得意なのは魔属性なのです。


 血が混じっているとは言っても、精霊族のお二人が簡単に精神操作を受けるとは考えられません。ですが、それが精霊術であれば、可能性がでてきます。


 できれば、周りへの影響力が大きい精霊術を町の中では使いたくありません。


 三人の感じだと、冒険者を総動員して町中の薬屋からかき集めていそうですわね。

 中央区や北地区もとなると、動き出すのは昼ぐらいでしょうか?


 その前に、二人に接触できればいいのですが。


「クロードさん。動けま……」


 クロードさんに、聖魔法の解呪を使えるのか確認しようと視界に収めれば、カウンターの上で白い毛の中に黒い毛玉が混じっているではないですか!

 あ、違いました。カウンターの上で項垂れているクロードさんの頭の上に、ケットシーが乗っているのです。


 何だか可愛いですわ。


 思わず近づいて、黒い毛玉を撫でます。

 ゴロゴロと喉を鳴らす音が聞こえてきました。


 このケットシーを観察してわかったことは、微量ながら成長を促す力が出ているのです。

 ケットシー自身、早く成長しようとしているのかもしれません。そして、その力が他の者にも影響して、治癒促進として効果を発揮しているようです。


 だから、回復魔法を使っているわけではなく、今のクロードさんはカリス液の適応促進として効力を発揮しているのです。


「名前をつけたほうがいいのかしら? でも、名で縛ると本当に妖精国に戻れなくなるかもしれませんし……」


 いつまでもケットシー呼びもなんですわよね。


 それから、頭がはっきりとしてきたと言ったまま、一向に動かないクロードさんを見下ろします。


「それで、動けそうですか?」

「もう少しこのままで」

「そうですか。ではケットシーはこのままにしておきます。私は中庭にいますので、動けそうになったら声をかけてください」


 私はケットシーから手を離します。そして、カウンターの奥に回り込むために移動をしようとすれば、手を掴まれてしまいました。


「このままで」

「私はケットシーを撫でていただけですが?」

「名前を考えていればいい」

「名とは力を持ちますから、簡単に与えるものではないのですよ」


 まぁ、今日の予定は魔導師長さんのところに行くこと以外ありませんから、別にいいですか。


 昼まで急ぐ用事はないと、私はカウンターの側に置いてある椅子に座ります。


 そして黒い毛玉を再び撫でました。


「はぁ。止めたにも関わらず、カリス水を飲むからです」


 先程の騒がしさが嘘のように、ただゴロゴロと喉を鳴らす音のみが、店の中に響いているのでした。



イラストは資料の方に転載しました。

https://33361.mitemin.net/i1029783/

魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【登場人物・資料】

https://ncode.syosetu.com/n0740lf/

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます♪ イラストは可愛いので残しておいてもらえたら助かります。
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