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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第71話 限度があるのよ!限度が!

「美味しい! これ全く別の肉だろう!」


 私が焼いた魔牛(テュランブル)の肉を食べたクロードさんの感想です。

 このお肉を出したのはクロードさんなので、出したお肉を間違えていないのであれば、魔牛(テュランブル)のお肉です。


 そして、小さなキッチンでちまちまとお肉を焼くことに限界を感じた私は、店の中央でお肉を焼いています。


 床に魔法陣を描き、その上に魔鉄の大きめの平鍋を置き、肉を焼いているのです。

 この鍋は大量に種を煎るために用いるものですが、きちんと洗っていますわよ。


「この感覚、なんだか覚えがあるわ」


 夜明け前に叩き起こされてから何も食べていないというエリアーナさんから呆れた声が聞こえてきました。

 そのエリアーナさんには、パスタに焼き菓子をつけて出します。


 気持ちが落ち込んでいるときは、甘いものが一番ですわ。


 そして食べ終わって落ち着いたエリアーナさんからの言葉です。


「さっきからずっと肉を焼いているけど、いつまで焼き続ける気なの」

「ここにある塊が無くなるまでかしら?」


 私の横にはまだ肉の塊が残っています。

 はい、エリアーナさんの分の朝食を作って、食べきる間も私はクロードさんのお肉を焼き続けていました。


 確かに今日はいつもよりお肉の量が多いですわね。


「この感覚。聖騎士とかいう底なしの胃袋を持った人たちを思い出すのよ」

「聖騎士ですわよ」

「俺は聖騎士だ」


 遠い目をしているエリアーナさんに向かって私とクロードさんの言葉が重なります。

 エリアーナさんの表情から、勇者討伐戦で凄く印象に残っている光景だったことは窺い知れました。


「聖騎士ですって!」


 大声を上げて、クロードさんを見るエリアーナさん。そこまで驚くことなのですか?


「貴女。魔女であっても、よく家に上げようと思ったわね」


 え? 強引に物体Xが入り込んできたので、聖騎士とはわかりませんでしたわよ。


「あんな身勝手な行動をとる聖騎士よ」


 えーっと、『あんな』の部分がよくわかりませんが?


「率先して守るのは聖女(メルアーネ)部隊だけで、他の部隊がやられていてもお構い無し。道中で魔物を討伐したら、その場で解体して食べだして先に進まない。さっき食べたばかりじゃないって言っても無駄。それでどれだけ旅の行程に支障がでたか、貴女わかる?」

「私はその場にいたわけではないので存じませんわ」


 どうやら、聖騎士は聖獣の胃袋を満たさないといけないということを、知らないのですね。

 それに戦いの後で、食事をとるのは回復の意味もあるのでしょう。

 私としては理にかなっていると思います。


 そういえば、エリアーナさんは霊獣を召喚していましたけど、それに対価は必要ないのでしょうか?


 普通は何かを差し出すのですけど。


「食べることは回復するうえで大切なことですよ」


 そう言いながら私は焼き上がったお肉を、クロードさんがいるカウンターの上に置きます。

 これも一瞬で無くなるのでしょうけど。


「限度があるのよ! 限度が!」

「そうですわね。エリアーナさんは昨日白い翼の霊獣を喚び出しましたよね?」

「神の御使様よ」


 ……違いますよ。霊獣白羽(フェアメージュ)です。


「その……御使様? ……を喚び出すのに対価を払っているのでしょう? それと同じことが聖騎士には求められているのよ」

「は? なにそれ? 神の御使様が対価など求めてくるはずないじゃない」


 これはどういうことでしょうか?

 霊獣が対価を求めないなどありえません。


 己の力を無償で振るうなど、世界の理から反します。


 現にクロードさんの聖獣青虎(ベルドーラ)は、強靭な力をその肉体に与えています。その対価として、力の根源となる魔力が多く含まれた食べ物を好んで得ています。


 それが魔物の肉です。


「そうね。道しるべ……その御使様を喚び出す呪文を唱えてくれないかしら?」


 私はそう言いながら再び肉を焼き始めます。

 美味しい。美味しいと言うクロードさんの胃袋にすごい勢いでお肉が消えていました。お肉が全く足りなさそうですわね。


 それに何故か、背後にしましまの白い尻尾の幻覚が見えるのです。喜んでもらえるのはいいのですが、お店を開ける時間には満足して欲しいものですわ。



「我らが主よ。我が進むべき道を示し給え。北にはコトウ。南にはセレハーレン。東にはマエリベラ。西にはアラエリス。我はヘレバレラとなりて、地に降りたし、行く先を示し給え」


 私はシレッと結界を張りながら、横目でエリアーナさんを見ていました。床に膝をついて祈りを捧げるエリアーナさんの頭上をです。


 白い翼の集合体。霊獣白羽(フェアメージュ)


「霊獣白羽(フェアメージュ)。この禁厭(きんえん)の魔女が問う。そなたは何の対価を得て道を示すのかと」


 私は魔女として霊獣白羽(フェアメージュ)に問いかけました。


 すると、ただの翼の集合体だったモノの中央に白い目が開かれます。


『我は対価として命を喰らう』


 そう答えた白い翼の集合体の目が閉じ、空間に溶けるように消えていきました。

 あれ、ヤバい方の霊獣だったのですね。


 今回は道を示さなかったので、無効でしょうけど。



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― 新着の感想 ―
命を喰らうが生命力なのか寿命なのかってか説明無しに対価を奪うのは良いのか?
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