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第7話 貴族の価値観

「こんなに美味いのに、たった銅貨5枚なのか?」


 価値観の差に驚きつつクロードは肉を食べている。それも貴族らしく、所作が綺麗です。


 あと、そのお肉は半銀貨二枚なので高いですよ。たぶん店主が気を使って良いお肉を出してくれたのだと思います。

 ええ、格好は歴戦の冒険者という感じですが、ひと目で聖騎士ハイヴァザールとわかる紋様が左の頬にあるのですから。


「その料理は半銀貨二枚です。普通に出されるお肉は固くて食べれません」


 はい。サイさんのお勧めで、初めてこの食堂に来たときに、スープとサラダと焼いた肉が出されたのです。


 ついてきたカトラリーはフォークとスプーンのみ。どうやってお肉を食べるのか周りを観察してみると、大きな肉をフォークで突き刺してかぶりついているではないですか!


 そんなことをして食べようものなら……いいえ、私はもう貴族ではないのだからと、フォークで差したお肉にかぶりついたのです。


 ……分厚い皮でも噛んでいるのかと錯覚してしまうほど、硬いお肉でした。こんな硬いお肉を平気で食べる人がいることに驚きました。

 私が食べるのに困っていると、お肉が載った皿にフォークとナイフが添えて目の前に現れたのです。


『父さんが、お姉さんにって。サイ爺のお客さんは大事にしないとね。こっちのお肉と交換ね。その代わり値段は高いけど』


 とウエイトレスの女性に言われてお肉を交換されたのです。

 それ以来私がくると、硬いお肉ではなく、私でも食べられるお肉が出てくるようになったのです。


「半銀貨二枚でも安すぎる」

「だから、金貨を一枚換金するだけで、数カ月は暮らせます」

「へー……金貨なんて直ぐになくなっていくけどな」


 それは貴族の体裁を整えようとすれば、なくなっていくでしょう。

 私も貴族の時の感覚がなかなか抜けなくて困ったことがありますわ。侍女に言いつけようとして、今は一人で暮らしていたと思うことがありました。


 駄目ですわね。



 そして食べ終わろうとしていたとき、店の外から騒がしい音が聞こえてきました。何かあったのかと思っていますと、食堂の出入り口の扉が勢い良く開け放たれます。


「あ! 魔女のねーちゃん! ここに居たのか! 薬を売ってくれ! ありったけの傷薬だ!」


 昨日、店に来ていた狩人のバルトさんではないですか。

 昨日傷薬を買い忘れていたと朝早くに来ていたということは数日かけて、森の中を過ごす予定だったのでしょう。

 そこで何かあったのでしょうか?


「何かあったのですか? 私の薬よりも治療師に頼んだ方がよくありませんか?」

「バジリスクがでたんだ! 石化で動けねぇ奴らがいる!」


 ……それは石化解除を術師に頼んだ方がよくありませんか?


「魔女のねーちゃんの傷薬ならあいつらの石化も解ける! 時間がねぇんだ!」


 私の傷薬で石化が解けると言い切ってしまっていますが、傷を元の状態に修復する薬なので、石化の解除なんて……あら? 傷を元の状態に戻るという効力が石化解除に繋がっていると?


 あせる気持ちもわかりますが、バジリスクは毒も持っていますからね。傷薬には解毒効果はありませんよ。


「取り敢えず、その場に参りましょう。案内してください。あと私は治療師ではありませんからね」

「いや、魔女のねーちゃんの薬の方が、その辺りにいる治療師より効果がある」


 そんなことは無いと思うのですがね。私はテーブルの上に食事の代金を置いて、立ち上がります。


 すると向かい側に座っていたクロードも立ち上がったではないですか。……ついてくるつもりですか?


 店の入口にいるバルトさんの方に行きました。すると、何故か一歩二歩と下がっていくではありませんか。

 なぜですか?


「魔女のねーちゃんが男と一緒にいるなんて……」

「え? サイさんとよく一緒にいますよ?」


 食事を一緒にとろうとか、じじいの散歩に付き合ってくれとか、じじいの話相手になってくれとか、よく来られます。


「サイとは誰だ?」

「ひっ!」


 背後からの質問に、バルトさんが悲鳴をあげました。どうされたのですか?


「サイさんは下町の顔役のおじいさんです。私が一人で住んでいるので、色々気を使って声をかけてくれるのですよ」

「なんだ。そうか」


 そうですね。ここで暮らすというのであれば、サイさんに紹介をしておかないといけませんね。元聖騎士がここに住むとなると、色々こき使いそうですもの。


 ええ、時々このように森の中で問題が起こった場合の対処する要員としてです。


 それからバルトさん。なぜ腕で額を拭いながら、死ぬかと思ったとか言っているのです?


「それで、あんたは魔女のねーちゃんとなんで一緒にいるんだ?……ってお揃い!」

「違います!」


 私は顔の左側を手で隠しながら言いました。


「いや、赤だったじゃないか。それも逆側にアザが……青に変わっている」


 もう、突っ込まないでください。

 恥ずかしいじゃないですか! 同じなのは色だけです!


「俺はシルヴィアの夫のクロード・ハイヴァザールだ」


 そして背後から引き寄せながら堂々と自己紹介を言わないでください。




読んでいただきましてありがとうございます。

読まれるかどうかわかりませんが、連載をします。

が、不定期更新でお願いします。

週1回から2回投稿です。(ストックがないので)


あと、短編の方にサイ爺との出会いの小話を短編オンリーで追加しています。


宜しくお願い致します。

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― 新着の感想 ―
続きがとっても気になったので連載にして頂けてとっても嬉しいです。続きが楽しみです!
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