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魔女との契約婚で離縁すると、どうなるかご存知?【電子書籍化・コミカライズ進行中】  作者: 白雲八鈴


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第63話 万能薬クッキング

 仕込んでいた壺を開けると、ネプラカリスのカリスである葉の代わりに液体が壺の中に満たされていました。


 上手くいきました。


「可愛いのじゃ。ほら、飲むのじゃ」

「この革って買い取ってくれるのか?」


 シャロンさんはケットシーの幼生にミルクを皿にいてれ飲ませており、クロードさんは二頭目のテュランブルの解体に入っています。


 シャロンさんが来ているため、冒険者ギルドへの報告は、明日でもいいでしょう。

 森に異変があれば、他の冒険者も気づいているでしょうから。

 それに私は冒険者ではないので、報告義務はありませんもの。


「売れると思いますが、一度にその量は買い取ってもらえないと思いますよ」

「そうなのか」


 姿を消すことができるテュランブルの革は、かなり高額で買い取ってもらえます。しかし、高額すぎて支払いができないと言われる量が目の前にありますので、一応忠告はしておきます。


 さて、明日にはラファウール魔導師長さんに薬を持っていけるように作っておきましょう。


 地面に魔法陣を描き、その上にミスリル製の平鍋を置きます。

 ケルアシード4粒とキエアシード3粒を香りが出るまで炒めます。

 香りが出たらレアアステルの根のみじん切りと、コトエラのみじん切りを入れて炒めます。

 色が透けてきて火が通ったところで、メルエルの鱗粉とカカオの粉末とパエトの荒削りを入れて更に炒めます。


「それって猛毒のメルエルの鱗粉じゃないのか?」

「どう見ても鉱石にしか見えるのじゃが?何故にナイフで削れるのじゃ?」


 外野がうるさいですわ。

 少し黙っていてくれません?


 ここでカリスから作った水を浸るぐらいにいれてひと煮立ち。


 煮立ったらナルエイダーの青い実を絞った果汁をひと回し入れて蓋をし、音が変わるまで煮立たせます。


 中から、カタカタと音がしだしたら蓋を開けます。


「さっきまで液体が入っていたよな」

「相変わらず禁厭(きんえん)の魔女が作るものは、理解不能じゃ。何故に鉱石になるのじゃ」


 大きな青みがかった結晶体になれば、成功です。

 最後の仕上げとして、精霊水を一滴上から落とせば、万能薬の完成です。


「毒々しいほど真っ青な液体になったが? それは何なんだ?」

「聖騎士。わからぬのか?これが本当の万能薬じゃよ。巷に出回っているまがい物ではなくて、正真正銘の万能薬じゃ」


 何故かシャロンさんが説明してくれました。


「が、エルフの薬師が作っても結晶化はしないのじゃがのぅ」


 高濃度の成分だけを抽出すれば、結晶体になりますよ。

 これを瓶に入れて一晩寝かせれば、不純物が沈殿し、透明な上澄みが出来上がるのです。


「それでお二人共なぜ、私の背後に立っているのですか?」


 私は瓶に入れた万能薬を亜空間にしまいながら振り返りました。

 そこには、クロードさんとシャロンさんが仲良く並んで、私の方をみています。


「凄く美味しそうな匂いがしてきたからだ」

「そうなのじゃ! お腹が空いたのじゃ!」


 ……美味しそうって、私は薬を作っていただけですわよ。


「シルヴィアの手料理が食べたい。絶対に美味しいと思う」

「万能薬からあんなに美味しそうな匂いがするなんて、知らなかったのじゃ!」

「料理は作りませんよ」


 シチューなんてものを作って、今住んでいるお店兼住居を破壊されたら困るではないですか。


「妻の美味しい手料理を食べたい」

「友達のところで、美味しいご飯を食べたいのじゃ!」


 あの? だからいつ友達になったのでしょうか?

 もしかして、友達の家に毎日遊びに行かなければならないという思い込みでもあるのでしょうか?

 流石に妖精国の大陸と魔女の島は、遊びに行くという感覚で来れる距離ではないと思います。


「シャロンさん。お暇なのですか?」


 思わず口から出てしまいました。


「うっ……友達が戻ってきたのじゃ。久しぶりに訪ねたら、いなくなっていたとか嫌なのじゃ」


 ああ。私の前の禁厭(きんえん)の魔女のことですか。何でその命を落としたのかは知りませんが、そのようなことは、魔女にとって当たり前のこと。


「魔女ですからね。魔女の役目を果たせば、突然別れることもありますよ」

「魔女の役目ってなんだ?」


 クロードさんが、突然私の肩を掴んで聞いてきました。ちょっと力が入りすぎていませんか?


「さぁ? なんでしょうね?」

「シルヴィア。俺はシルヴィアの剣だ。はぐらかすのは無しだ」


 そう言われましても困りますわ。別に何とは決まっていませんもの。


「例えば異界の勇者の件で、三人の魔女が動いているようなものですわ。最終的に世界を守れればいいので、命を対価にすることもあるでしょう」


 今までの禁厭(きんえん)の魔女の死は、恐らく全てがそのようなものでしょう。


 血の継承は魔女の死以前に行われています。ですので、私の知識には禁厭(きんえん)の魔女の死に関するものはありません。


 しかし、戦う魔女ではない私が世界の厄災を止めるのであれば、きっと同じ結末をたどることでしょう。


 魔女はアランカヴァルの意志を受け継ぐ者なのですから。



長寿のエルフ族の久しぶりは、きっと単位が違うのでしょうね。


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